火災保険を解約する場合の方法と返戻金の仕組みをプロが解説
引っ越しやハザードマップの更新等、自宅周辺の環境が変化した際には火災保険の見直しが欠かせません。
見直しの結果、現在の契約内容では不十分だと感じた場合、プランの変更や特約の付帯、ケースによっては現在の火災保険を解約して別の保険商品に乗り換えるといった対応が必要になることもあるでしょう。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、火災保険を途中解約する場合の手続きと解約返戻金の受け取り方について解説していきます。
火災保険を途中解約する際の注意点もまとめているので、乗り換えを検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
火災保険は途中でも解約できる?
まずは、火災保険の途中解約の可否と解約する場合の手続き方法について詳しく見ていきましょう。
火災保険は途中解約が可能
火災保険は最長5年の長期契約が可能となっており、契約期間が長いほど保険料が割引されることから、5年契約を結んで保険料を一括で支払うという方も少なくありません。
しかし、引越しやハザードマップの更新等で火災保険の保障内容が現在の住宅環境に適さなくなった場合は、たとえ保険期間の途中であっても火災保険の見直しを行う必要があるでしょう。
こうしたとき「火災保険は途中解約できるの?」「途中解約したら違約金がかかる?」といった疑問を持つ方も少なくありませんが、結論として火災保険は違約金の支払いなしで途中解約することができます。
また保険期間の未経過分に応じた解約返戻金を受け取ることができるため、一括で保険料を支払っている場合でもお金が無駄になるということはありません。
解約返戻金の仕組みや計算方法については次章で詳しく解説しているので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
火災保険の解約方法・流れ
火災保険を解約する場合の基本的な流れは以下の通りです。
- 火災保険会社または代理店に解約の連絡を入れる
- 解約に必要な書類を用意して来店または郵送
- 手続き完了通知を受け取る
以前は契約している保険会社の店舗へ足を運んで手続きする必要がありましたが、近年は電話のやり取りのみで手続きできるケースや、インターネット上で手続きを完結できるケース等が増えています。
なおいずれの場合も、解約時には保険証券が必要となるケースがほとんどであるため、紛失してしまったという方はこちらも合わせて申告するようにしましょう。
解約返戻金の仕組みと計算方法
火災保険料を一括で支払っている場合は、途中解約の際に解約返戻金として未経過分の金額が払い戻されます。
続いて、解約返戻金の仕組みと具体的な計算方法について詳しく見ていきましょう。
解約返戻金の計算方法
例えば5年契約で加入した火災保険を3年目に解約した場合、残り2年分に該当する保険料が解約返戻金(返還保険料・払戻金等の表記も同義)として手元に戻ります。
解約返戻金の計算方法は以下の通りです。
解約返戻金=長期一括払保険料×未経過料率
未経過料率とは契約年数や経過期間に応じて設定された係数のことで、保険会社ごとに若干の違いがあります。
以下は5年契約の火災保険における未経過料率の一例です。
0年 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | |
---|---|---|---|---|---|
1か月まで | 94% | 75% | 56% | 37% | 18% |
2か月まで | 92% | 74% | 55% | 36% | 17% |
3か月まで | 90% | 72% | 53% | 34% | 15% |
4か月まで | 87% | 71% | 52% | 33% | 13% |
5か月まで | 85% | 69% | 50% | 31% | 12% |
6か月まで | 84% | 68% | 49% | 30% | 10% |
7か月まで | 83% | 66% | 47% | 28% | 8% |
8か月まで | 82% | 64% | 45% | 26% | 7% |
9か月まで | 80% | 63% | 44% | 25% | 5% |
10か月まで | 79% | 61% | 42% | 23% | 3% |
11か月まで | 78% | 60% | 41% | 22% | 2% |
12か月まで | 77% | 58% | 39% | 20% | 0% |
例えば、5年契約・長期一括払(20万円)で火災保険に加入し、3年と1日で解約した場合の解約返戻金は以下のように計算できます。
長期一括払保険料20万円×未経過料率37%=74,000円
解約返戻金の未経過料率や条件は契約している保険会社によって異なりますが、1か月未満の端数日については1か月として計算されるケースがほとんどです。
そのため、仮に契約後1か月未満で解約した場合でも100%の金額が戻ってくることはなく、また残期間が1か月未満の場合は満樹扱いとなり解約返戻金を受け取ることはできません。
振り込みのタイミングは?
解約返戻金は解約手続きの完了後、保険料振替口座や契約者が指定した口座に振り込まれる仕組みです。
営業店等で解約手続きをした場合でも、その場では解約返戻金を受け取れないことが多いので注意しましょう。
また、解約返戻金が支払われるまでの期間はおよそ1週間~10日前後となっています。
保険会社の状況によっては10日以上かかる可能性もあるため、正確な振込時期を知りたい場合は事前に営業店や代理店等に確認しておくと良いでしょう。
参考|解約返戻金に関する保険会社の対応
損保ジャパン | 契約中の保険期間のうち、解約希望日以降の期間に相当する保険料を解約返戻金として返金することがある。解約返戻金の支払日は解約日等により異なる。 |
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三井住友海上 | 契約中の保険期間のうち、まだ過ぎていない期間に相当する保険料を解約返戻金として返金することがある。支払日は解約日等により異なる。 |
SBI損保 | 解約返戻金は保険開始期日から解約日までに経過した期間に応じて計算し、解約返戻金が発生した場合に返金する。 |
ジェイアイ傷害火災保険 | 契約時の条件により、保険期間のうち未経過だった期間の保険料を解約返戻金として返還する。事故が発生した場合は返戻できないこともある。 |
あいおいニッセイ同和損保 | 解約時の条件により保険期間のうち未経過だった期間の保険料を解約返戻金として返金する。支払いは解約手続きをしてから10日間程度(契約中の保険種目による)。 |
東京海上日動 | 保険料を一時払いした場合、残りの保険期間によって解約返戻金がある。解約返戻金の金額は保険料の払込方法や保険期間等により異なる。 |
楽天損保 | 保険料一時払いや未経過期間に対する保険料をすでに支払っている場合、解約に伴う解約返戻金を返金する。返戻金額は解約日等により異なる。 |
火災保険の手続きに関する注意点
ここからは、火災保険を途中解約するときの注意点について詳しく見ていきましょう。
契約期間の短期化による値上げ
火災保険は2015年10月まで最長36年、2022年10月までは最長10年での契約が可能となっていました。
しかし近年は自然災害のリスクが増加したことで長期の予測が難しくなり、契約期間が最長5年に短縮される等の段階的な調整が行われています。
そのため、36年や10年契約の火災保険から5年契約の火災保険に乗り換えた場合、これまでと比較して保険料の割引率が低くなり、実質的な値上げとなってしまうのです。
とは言え、火災保険は万が一の場合に数千万円単位の被害をカバーできる重要な存在であるため、多少コストが増えたとしても必要な補償をしっかりと確保することが大切です。
値上げの負担をなるべく抑えたいという場合は、代理店を介さずにインターネット上で手続きを完結できるダイレクト型(通販型)の火災保険を検討してみるのも良いでしょう。
無補償の期間が生まれないようにする
一度火災保険を解約すると、たとえ解約した直後であっても被害の補償を受けることはできません。
そのため、自宅を売却する場合は物件の引渡日以降、賃貸を退去する場合は退去日以降を解約日として設定しましょう。
また新しい火災保険に加入する場合も同様で、新居を購入した場合は物件の引渡日、賃貸に入居する場合は入居日を補償開始日に設定し、火災保険に未加入の状態で生活する期間が生まれないようにすることが大切です。
解約手続きを忘れた場合は?
現在の火災保険を解約しないまま引っ越し、引っ越し先で新しい火災保険に加入したといったケースでは、保険料の支払いが二重で行われることになります。
すでに売却・退去済みの物件であっても、契約者側から解約の連絡をしない限りは保険料を支払い続けることになるため、火災保険に加入し直す際には、必ず現在加入中の保険会社へ解約の連絡を入れるようにしましょう。
なお二重の支払いが明らかになった場合でも、原則として過去に遡って解約返戻金を請求しても受け取ることはできません。
記事まとめ
- 火災保険は保険期間の途中であっても違約金なしで解約手続きを行うことができる
- 解約時には保険期間の残月数に応じた解約返戻金を受け取ることがきる
- 新たな火災保険に乗り換える場合は契約条件をしっかりと比較し、未補償期間が生まれないように手続きを行う
火災保険は違約金を支払わずにいつでも解約することができますが、解約のタイミングによっては解約返戻金を受け取れなかったり、万が一の場合に補償を受けられなかったりする可能性もあるため注意が必要です。
また場合によっては、解約をせずにプラン変更や特約の付帯等で解決できるケースもあるので、解約を検討している方は営業店・代理店等に連絡し、十分に検討したうえで判断するようにしましょう。
保険のぷろでも無料相談を承っております。保険やお金にまつわる、あらゆることに関して、親身にアドバイス、最適なプランをご提案いたしますので、お気軽にご相談ください!