火災保険における税金・所得控除の仕組みを解説
年末調整や確定申告を行う際、
「火災保険で受け取った保険金には税金がかかるの?」「火災保険に支払った保険料は控除の対象になるの?」
といった疑問をお持ちになる方も多いのではないでしょうか。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、火災保険における税金の仕組みと控除の可否について解説していきます。
火災保険とセットで加入することの多い地震保険と税金の関係もまとめているので、火災保険・地震保険に加入中の方はぜひ参考にしてみてください。
火災保険で受け取った保険金に税金はかかる?
まずは、火災保険から保険金を受け取った場合に税金がかかるのかどうか、また保険金額が不十分だった場合に何らかの減税措置を受けられるのかどうかといった点を解説していきます。
火災保険の保険金は基本的に非課税
火災保険から保険金を受け取った場合、基本的にはその全額が非課税となります。
火災保険は火災・水災・風災・雪災等の災害による損害を埋め合わせるための保険であり、受け取った保険金が利益になるわけではないことから、課税対象外として扱われるのです。
仮に火災保険で2,000万円を受け取り、実際には1,800万円しか使わなかったというようなケースでも、残りの200万円に税金がかかることはありません。
また保険の契約者が所有する家財・建物だけでなく、契約者と同一生計の親族の家財・建物に対して保険金が支払われた場合も税金はかかりません。
税金がかかるケースとは
火災保険から支払われる保険金は原則として非課税ですが、以下のようなケースでは税金が発生します。
- 積立型の火災保険から満期返戻金を受け取った場合
- 災害によって被保険者が亡くなり、法定代理人が保険金を受け取った場合
- 災害によって事業所の休業を余儀なくされたり、商品が焼失したりした場合の利益補てんとして損害保険金を受け取った場合
このように、支払われた保険金が利益に繋がると想定されるケースでは税金が課せられるため注意しましょう。
損害額によっては確定申告で税金を軽減できる場合も
火災保険から支払われた保険金が実際の損害額を下回った場合は、年末調整や確定申告などの手続きによって雑損控除や災害減免といった税金の軽減措置を受けられます。
雑損控除
雑損控除は、災害や盗難等によって資産が損害を受けた場合に税金の負担を軽減できる仕組みです。
建物や家財といった生活に必要なものが控除の対象となっており、以下の2つのうち控除額の大きい方が適用されます。
- 差引損失額-総所得金額×10%
- 差引損失額のうち災害関連支出に該当する金額-5万円
また差引損失額を求める計算式は以下の通りです。
差引損失額=損害金額(時価)+災害関連支出の金額-保険金等の補てん額
災害関連支出に該当する費用としては、災害により焼失した建物や家財の取壊し・除去にかかった金額等が挙げられます。
なお損失額が大きく、その年の所得額から控除しきれない場合はその後3年間まで繰り越すことが可能です。
災害減免
災害減免は、以下の用件を満たす場合に税金の減免または免除を受けられる制度です。
- 災害によって被った建物や家財の損害額がその時価の2分の1以上
- 災害にあった年の所得合計が1,000万円以下
- 雑損控除の適用を受けない
所得金額の合計額 | 軽減または免除される税金 |
---|---|
500万円以下 | 所得税額の全額 |
500万円を超え750万円以下 | 所得税額の2分の1 |
750万円を超え1,000万円以下 | 所得税額の4分の1 |
なお雑損控除および災害減免の併用はできず、どちらか有利な方法を選択する形となります!
火災保険の保険料は控除対象になる?
続いて、火災保険に支払った保険料が年末調整や確定申告時に控除の対象になるのかどうかについて詳しく見ていきましょう。
火災保険の保険料は控除されない
生命保険や医療保険等と異なり、火災保険に支払った保険料は年末調整・確定申告における所得控除の対象外となっています。
以前は「損害保険料控除」という仕組みがあり、火災保険に支払った保険料も控除の対象に含まれていました。
しかし2006年(平成18年)の税制改正でこの「損害保険料控除」が廃止されたため、以降は年末調整・確定申告の際に火災保険による税金対策が行えない状態になってしまったのです。
現在は「旧長期損害保険料」に該当するケース(詳細は次項)を除き全ての火災保険が控除対象外であるため、賃貸マンション・分譲マンション・持ち家のいずれのタイプであっても控除を受けることはできません。
旧長期損害保険料に該当する場合は控除可能
2006年(平成18年)以降は火災保険料での控除ができなくなりました。
しかし、税制改正以前から火災保険に加入している一部の方については、契約の整合性を保つための経過措置として「旧長期損害保険料」の制度を利用できます。
旧長期損害保険料の対象者
- 2006年(平成18年)12月31日までに締結された契約であること
- 満期返戻金等があり、保険期間または共済期間が10年以上の契約であること
- 2007年(平成19年)1月1日以降に契約内容の変更を行っていないこと
旧長期損害保険料の控除額
<所得税>
年間支払保険料 | 税金の控除額 |
---|---|
10,000円以下のとき | 年間支払保険料の全額 |
10,000円を超え、20,000円以下のとき | 年間支払保険料×1/2+5,000円 |
20,000円を超えるとき | 15,000円 |
<住民税>
年間支払保険料 | 税金の控除額 |
---|---|
5,000円以下のとき | 年間支払保険料の全額 |
5,000円を超え、15,000円以下のとき | 年間支払保険料×1/2+5,000円 |
15,000円を超えるとき | 10,000円 |
地震保険の保険料は控除対象になる
2006年(平成18年)の税制改正で「損害保険料控除」が廃止となり、代わりに新設されたのが「地震保険料控除」の制度です。
これにより年末調整・確定申告時の火災保険料に対する控除は受けられなくなりましたが、一方で地震保険料に対する控除は引き続き利用することができます。
元々日本は地震大国であるにもかかわらず、重要な役割を持つ地震保険の加入率が約3割(付帯率は約7割)にとどまっているという点が課題の1つとなっていました。
そのため、火災保険とのセット加入で年末調整・確定申告時の控除を受けられる仕組みへと変更された背景には、地震保険への加入を促進したい政府の意図があったと言えるでしょう。
ここからは、地震保険の控除対象および控除額について詳しく解説していきます。
地震保険の控除対象
地震保険のうち控除対象となるのは、保険契約者もしくは契約者と同一生計の配偶者・親族等が所有する建物および家財を保険対象とした地震保険です。
なお地震保険料の控除を受けられるのは保険契約者のみとなるため、例えば夫婦共有名義の住宅であっても契約者以外は控除対象外となる点に注意しましょう。
地震保険の控除金額
地震保険料の控除額は以下の通りです。
所得税
区分 | 年間支払保険料 | 税金の控除額 |
---|---|---|
地震保険料 | 50,000円以下のとき | 年間支払保険料の全額 |
50,000円を超えるとき | 50,000円 | |
旧長期損害保険料 | 10,000円以下のとき | 年間支払保険料の全額 |
10,000円を超え、20,000円以下のとき | 年間支払保険料×1/2+5,000円 | |
20,000円を超えるとき | 15,000円 | |
両方の契約がある場合 | 地震保険料と旧長期損害保険料の合計が50,000円以下のとき | 地震保険料と旧長期損害保険料の合計額 |
地震保険料と旧長期損害保険料の合計が50,000円を超えるとき | 50,000円 |
住民税
区分 | 年間支払保険料 | 税金の控除額 |
---|---|---|
地震保険料 | 50,000円以下のとき | 年間支払保険料×1/2 |
50,000円を超えるとき | 25,000円 | |
旧長期損害保険料 | 5,000円以下のとき | 年間支払保険料の全額 |
5,000円を超え、15,000円以下のとき | 年間支払保険料×1/2+5,000円 | |
15,000円を超えるとき | 10,000円 | |
両方の契約がある場合 | 地震保険料と旧長期損害保険料の合計が25,000円以下のとき | 地震保険料と旧長期損害保険料の合計額 |
地震保険料と旧長期損害保険料の合計が25,000円を超えるとき | 25,000円 |
【注意】火災保険とのセット加入でも控除対象は地震保険料のみ
地震保険は原則として火災保険とのセット加入が必要な保険であり、地震保険単体では加入することができません。
そのため「火災保険料も控除されている」もしくは「地震保険料も控除できない」等と誤解してしまう方が少なくありませんが、実際には「地震保険料の部分のみ控除できる」というのが正しい認識です。
火災保険および地震保険に加入している方は毎年9月~10月頃に送付される控除証明書を確認し、地震保険に支払っている保険料を年末調整または確定申告で提示するようにしましょう。
火災・地震保険における税金の仕組みまとめ
- 火災保険で受け取った保険金は、それが利益になる場合を除き基本的に税金はかからない
- 旧長期損害保険料に該当するケースを除き、火災保険に支払った保険料は控除の対象外となる
- 火災保険とセットで地震保険に加入している場合、地震保険の保険料のみ控除を受けることができる
火災保険・地震保険は自然災害が発生した場合等、万が一のときに役立つ大切な保険です。
火災保険については保険料の控除が受けられないものの、税金の負担なしで保険金を受け取ることができるため、大切な住居・家財を守るためにも加入を検討すべき商品の1つと言えるでしょう。