入院給付金の仕組みと保険選びのポイントを解説
働き盛りの大黒柱が病気やケガで入院することになった場合、治療費用の支払いはもちろん、一時的に減少する収入の補填方法も考えていく必要があります。
こうした万が一に備える方法として“医療保険”への加入が挙げられますが、加入を検討している方の中には「入院給付金っていくらもらえるの?」「入院したら必ず保障されるの?」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、入院時に支払われる「入院給付金」の仕組みと医療保険選びのポイントを解説していきます。
家族の入院・通院に備えて医療保険に加入しようとお考えの方はぜひ参考にしてみてください。
入院給付金の仕組み
「入院給付金」とは医療保険における基本的な保障の1つで、病気やケガで入院した際に保険会社から支払われるお金のことです。
主に入院費用に充てたり、入院で減った収入をカバーしたりするために活用されます。
入院給付金の支給方法には「日額タイプ」と「一時金タイプ」の大きく2種類があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
日額タイプの入院給付金とは
日額タイプとは、入院日数に応じて入院給付金が支払われるプランのことです。
入院給付金の対象となる期間は無制限ではなく、30日・60日・180日等の上限が設けられています。
入院1回あたりの上限日数が長いほど支払う保険料も高いのが特徴です。
また日額タイプの中には日帰り入院でも支給対象になるケースや、5日以上入院した場合に5日目から支給されるケース等もあるため、保険料とのバランスを確認しながら保障期間を設定する必要があるでしょう。
長期入院等に備えて医療保険に加入したいという方は、入院日数に応じて入院給付金を受け取れる日額タイプがおすすめです。
一時金タイプの入院給付金とは
一時金タイプとは、保険契約時に設定した入院給付金が一括で支払われるプランのことです。
入院一時金が主契約になっている保険と、日額タイプの特約として一時金をつけられる保険があります。
後者の場合、例えば5日以上の入院が給付条件となっているケースでも、一時金の特約によって1日~4日目までの入院費用を保障できるといったメリットがあります。
ただし、入院日数が延びても入院給付金の額は増えないため、長期入院の場合は費用が不足する可能性があるというデメリットに注意が必要です。
保障内容を設定する際のポイント
続いて、「医療保険の契約内容を見直したい」「保障額をどう決めれば良いか分からない」といった方に向けて、入院給付金の保障内容を設定する際のポイントを解説していきます。
ポイント①医療費の自己負担金額
入院給付金の保障内容は、医療費の自己負担額を踏まえて設定するのが1つ目のポイントです。
日本では現在、医療費が一定額を超えた場合に差額の払い戻しを請求できる高額療養費制度が導入されています。
自己負担の限度額は年齢や所得によって異なり、例えば70歳未満で標準報酬月額が26万円以下の方の場合、自己負担の限度額は57,600円となります。
これを超えた部分については払い戻しの請求手続きを行えますが、病院に支払う費用であっても、その全てが高額療養費制度の対象となるわけではないという点に注意が必要です。
高額療養費制度の対象から外れる費用としては以下のようなものが挙げられます。
- 差額ベッド代(個室)
- 入院時食事療養費用の自己負担分
- 入院時生活療養費用の自己負担分
- 保険外併用療養費用(保険が適用されない診療を含む療養費用の差額部分)
ポイント②入院費用や月々の支払い
長期入院が必要な場合や、入院・通院によって収入が減ってしまう場合には、家賃や住宅ローンの支払い手続きが一時的に困難となる可能性があります。
以下は、令和元年における入院費用の平均額をまとめた表です。
入院費用の平均 | 208,000円 ※高額療養費制度を利用した場合 |
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1日当たりの入院費用の平均 | 23,300円 ※約半数は15,000円未満 |
1日当たりの入院費用と逸失収入の総額 | 28,400円(入院による逸失収入があったのは21.6%) |
参照:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html)令和元年
会社員の場合は手続きによって傷病手当金を受け取れるため、入院費用の支払いや収入減に伴う生活への負担をある程度抑えることができます。
一方自営業の方はこうした手当が発生しないため、入院給付金の保障内容を充実させた方が安心だと言えるでしょう。
また保険料の負担を抑えたいという場合は、給付日額を抑えてその分を貯蓄に回すというのも1つの方法です。
ポイント③入院給付金の支給日数
入院1回あたりの給付日数上限は、保険商品によって30日~1000日の範囲で設定することができます。
例えば入院給付金を日額5000円に設定した場合、1回の入院による期間別の支給金額は以下の通りとなります。
- 30日×5000円=15万円
- 60日×5000円=30万円
- 120日×5000円=60万円
- 180日×5000円=90万円
- 730日×5000円=365万円
- 1000日×5000円=500万円
このように、同じ日額でも入院日数によって入院給付金の合計額が大きく変わる可能性があるのです。
厚生労働省の調査によると、令和元年度の平均的な入院日数(推計)は31.0日であったことから、支給日数を30日程度に設定し、その上でいくらぐらいの保障が必要なのかを考えていくと良いでしょう。
なお多くの保険会社では、退院日から次の入院日までの期間が180日に満たない場合、この2回の入院を“ひと続きの1回の入院”とみなします。
例えば、30日間の入院を短期間で2回繰り返した場合、30日間×2回ではなく60日間×1回の入院として扱うということです。
入院日数分の給付金を確実に受け取りたいという場合は、入院給付金の支給日数を長めに設定することも検討してみましょう。
参照:厚生労働省「医療費の動向」(https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/19/dl/iryouhi_data.pdf)令和元年
注意:入院1日目から給付されるとは限らない
入院給付金が入院の何日目から支給されるのかという点は、医療保険の契約内容によって異なります。
- 日帰り入院も1日と数えて保障
- 2日以上の入院で1日目から保障
- 5日以上の入院で5日目から保障 等
日帰り入院とは、入院日と退院日が同日となるケースで、入院基本料等の支払いが必要な場合を指します。
医療保険に加入する際は、日帰り入院が入院給付金の対象となるかどうか、また特約として付加できるのかどうか等も踏まえて比較することが大切です。
医療保険に加入する際は特約にも注目!
医療保険は主契約と特約で構成されており、保険会社や保険商品によって様々な特約が用意されています。
医療保険に加入する際は、入院給付金の条件と合わせて特約の種類・保障内容もチェックしておきましょう。
通院特約
通院特約は、退院後も経過観察のための通院が必要となった場合に給付金を受け取ることができる特約です。
所定の期間で入院していたことが条件となるため、例えば風邪をひいて病院にかかった場合や、怪我をして何度か通院した場合等は通院特約における“通院”とはみなされません。
先進医療特約
先進医療特約は、厚生労働省が認めた医療機関で高度な医療技術を用いた治療を受けた場合に、その実費を補てんするという特約です。
先進医療の技術料は公的医療保険の対象外となるため、基本的に費用の全額が自己負担となります。
治療内容によっては費用が高額になる可能性もあるため、医療保険の特約でカバーしておくと安心です。
ガン特約
ガン特約は、ガンでの手術や入院に備えて医療保険に保障を上乗せするものです。
なお既にガン保険へ加入している場合は、保障内容が重複するうえ保険料の負担も高くなるため、二重に契約する必要はありません。
生活習慣病特約・女性疾病特約
所定の生活習慣病や女性特有の病気等で入院した際に、入院給付金と合わせて保障を受けられる特約です。
なお女性疾病特約には子宮ガンや乳ガン等も含まれるため、ガン保険に加入している場合は保障内容が重複していないことを確認したうえで付加するかどうかを検討しましょう。
入院給付金が支払われないケースとは
入院給付金は、保険会社が提示する給付条件を満たした場合に限り受け取ることができるお金です。
なお入院する場合でも、以下のようなケースは入院給付金の対象外となるため注意しましょう。
治療を伴わない入院 | 健康診断や美容整形等、治療以外の目的で入院する場合は入院給付金が支給されません。ただし、受診するにあたって「事前に検査入院が必要」と医師が判断した場合は支払いの対象となります。 |
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出産に伴う入院 | 正常妊娠や自然分娩の場合、出産に伴う入院は入院給付金の対象外です。ただし帝王切開や子宮外妊娠等で入院した場合は支払いが行われます。 |
加入前の病気やケガによる入院 | 保険契約後、保障が開始される日(責任開始日)以前に発生した病気やケガが原因で入院する場合は基本的に入院給付金の対象外となります。 |
設定範囲外の入院 | 入院給付金の支給開始日より短い日数での入院は対象外です。 また日数の上限を超えて入院した場合、上限以降の入院期間は対象外となります。 |
入院給付金は課税の対象になる?
保険会社から支払われる入院給付金は、金額がいくらであっても全て非課税です。
ただし医療費控除を受ける場合は確定申告の手続きを行う必要があります。
医療費控除は年末調整では手続きできないため、会社員の方も自分で確定申告を行いましょう。
確定申告の際は、支払った医療費から入院給付金等で補てんされた金額を差し引くことになります。
なお差し引きの対象となるのは入院給付金が支給された入院に伴う医療費のみであり、もし入院給付金が医療費を上回ったとしても、他の医療費から差し引く必要はありません。
参照 ・厚生労働省「令和元年度 医療費の動向」(https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/year/19/index.html)・生命保険文化センター「医療保障に関するQ&A」(https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/medical_security/)・生命保険協会「医療保険とは?」(https://www.jili.or.jp/knows_learns/kind/main/35.html)
記事まとめ
入院中の費用や収入を補ってくれる入院給付金は、入院した時の心強い味方です。
ただし給付を受けるには、入院の種類や期間等、保険会社が定める条件を満たす必要があるため注意しましょう。
保険料とのバランスを考えながら、入院給付金の日額や対象期間、支給方法等を選択することが大切です。