出産にかかる費用の内訳と負担軽減に役立つ公的制度・サポートまとめ
妊娠が判明してから出産を迎えるまでの間には、様々な費用がかかります。必要な対策を検討するためにも、どのような場面でいくらぐらいの費用がかかるのかを事前に調べておくことが大切です。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、妊娠・出産にかかる主な費用の種類と相場、また費用負担の軽減に役立つ公的制度・サポートについて解説していきます。
妊娠・出産にかかる費用に対して不安があるという方はぜひ当記事の内容を参考にしてみてください。
妊娠・出産にかかる費用の内訳
まずは妊娠・出産を迎えるにあたって、どのような費用がいくらぐらいかかるのかを詳しく見ていきましょう。
定期健診にかかる費用
妊娠が判明したあとは、妊婦さんと赤ちゃんの健康をチェックするために、医療機関での定期健診が始まります。この定期検診にかかる費用は保険適用外のため、全額自己負担が必要です。
定期健診にかかる費用は1回あたり5,000~1万円程度となっており、出産までに平均14回の検診が必要となることから、合計で10万円前後の費用がかかる計算になります。
入院・分娩にかかる費用
入院・分娩にかかる費用は利用する施設(病院・診療所・助産所等)によって異なります。
以下は、厚生労働省保険局が公表する2021年度の出産費用の平均額をまとめたものです。(正常分娩のみ)
出産にかかる費用の平均 | |
---|---|
全施設 | 473,315円 |
公的病院 | 454,994円 |
私的病院 | 499,780円 |
診療所(助産所含む) | 468,443円 |
出産にかかる費用は私的病院がやや高い傾向にあることが分かります。また診療所(助産所)は施設によって高額な費用がかかるところもあるようです。
この金額の差は、常駐スタッフや医師の数、また設備やサービスの違い等が理由として挙げられます。
詳細なデータについては以下のページをご参照ください。
参考:厚生労働省 第155回社会保障審議会医療保険部会 「出産一時金について」
出産方法別の費用相場
分娩にかかる費用は、出産方法(自然分娩・帝王切開・和痛分娩)によっても異なります。
それぞれの出産方法の概要と費用負担の割合は以下の通りです。
概要 | 費用負担 | |
---|---|---|
自然分娩 | 麻酔等の医療処置を行わず、自然に発生する陣痛を待って出産する方法 | 原則全額 |
帝王切開 | 医師の判断のもと、手術によって出産する方法 | 3割 |
和痛分娩・無痛分娩 | 麻酔等の医療処置を行い、痛みを和らげたうえで出産する方法 | 全額 |
自然分娩と和痛分娩・無痛分娩は健康保険の適用外となるため、原則としてかかる費用の全額が自己負担となります。
特に和痛分娩・無痛分娩は医療処置にかかる費用も追加されることから、他の出産方法と比較して費用が高額になりやすいという特徴があります。
その他の費用
上記の他、マタニティ用品やベビー用品にかかる費用も考えておく必要があるでしょう。
マタニティ用品・ベビー用品にかかる費用は人によって異なりますが、10万円~15万円程度が相場とされています。
また里帰り出産を行う際は、帰省時の交通費やお礼代等もかかるため、実家が遠方にあるといった場合は早めに計画を立てるようにしましょう。
出産にかかる費用の軽減に役立つ制度
続いて、出産にかかる費用負担の軽減に役立つ公的制度・サポートについて詳しく見ていきましょう。
出産育児一時金
出産する本人が加入している健康保険(健康保険組合または国民健康保険)に申請を行うことで、出産育児一時金として50万円の支給を受けられます。
これは一児につき支給されるものであるため、例えば双生児を出産した場合は100万円(50万円×二児)を受け取れる計算です。
なお産科医療保障制度に加入していない医療機関を利用した場合や、妊娠週数22週未満で出産した場合は、一児あたりの支給額が48万8,000円となります。
出産育児一時金の受取方法には「直接支払制度」と「受取代理制度」の2種類があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
直接支払制度 | 受取代理制度 | |
---|---|---|
概要 | 医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金の請求・受け取りを行う制度 | 出産育児一時金の内、出産にかかった費用分を医療機関が被保険者に代わって受け取る制度 |
請求方法 | 分娩機関が代行 | 被保険者が手続きを行う |
申請時期 | 出産後 | 出産前(予定日の2ヶ月以内) |
差額の受け取り | 請求手続きが必要 | 手続き不要 |
これらの制度を活用すれば、一時金を上回った場合に差額を支払うのみで済むため、多額の出産費用を窓口で支払う必要がなくなるというメリットがあります。
出産手当金
出産手当金は、産休・育休等で給与の支払いがストップする期間の生活を保障するための制度です。
対象となる期間や支給額の計算方法は以下の通りです。
対象 | 産休中も保険料の支払いを継続している健康保険の被保険者 |
---|---|
期間 | 出産日以前の42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日までの範囲内で、給与の受け取りがなかった期間 |
支給額 | 支給開始日以前の12か月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3(給与の支払いがある場合はその差額) |
申請方法 | 勤務先で「健康保険出産手当金支給申請書」を受け取り、必要事項を記入して提出(支給時期は申請の約1~2か月後) |
注意点 | 夫の扶養に入っている(被扶養者である)場合や、自営業等で国民健康保健に加入している場合は出産手当金の対象外 |
なお、在職期間が1年以上ある場合は、要件を満たすことで退職時でも出産手当金を受け取ることができます。
参考:全国健康保険協会 「出産手当金について」
高額療養費制度
高額療養費制度とは、健康保険で定められた医療費の自己負担額を超過した場合に、その超過分の払い戻しを受けられる制度のことです。
自己負担額の上限は年齢や所得によって異なり、例えば70歳未満で標準報酬月額が26万円以下の方の場合、自己負担額の上限は57,600円となります。
申請期間は診療を受けた翌月1日から2年以内となっており、申請の際には医療機関の領収書が必要です。
なお室料差額等、元から保険適用外となっている費用は高額療養費制度においても対象外となるので注意しましょう。
自治体独自の公費助成を受けられる場合も
妊娠が判明して自治体に妊娠届を提出する際、自治体によっては独自の公費助成を受けられる場合があります。助成の種類は自治体ごとに様々で、健診補助券を交付してもらえるケースや、クーポン・現金を支給してもらえるケース等があるようです。
詳しい内容・金額については、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
確定申告の医療費控除で税負担を軽減!
医療費控除とは、年間で支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告で所得の控除を申請できる仕組みのことです。
出産にかかる費用の一部も医療費として控除に含めることができます。
医療費控除を受けるには、以下のいずれかに該当している必要があります。
- その年の1月1日〜12月31日までに支払った医療費が10万円を超えた場合
- 年間総所得が200万円以下で、かつ支払った医療費が総所得の5%を越えた場合
なお出産する本人だけでなく、生計を共にする家族全員の医療費が合計10万円を超えていれば申告が可能です。
医療費控除が適用される費用は?
出産にかかる費用の中でも、医療費控除の対象になるものとならないものがあります。主なものを見てみましょう。
医療費控除の対象となる費用
- 妊婦定期健診や検査の費用
- 治療を目的とした医薬品の購入費
- 通院・入退院時の交通費
- やむを得ずタクシーを利用した場合の料金
- 入院費
- 分娩費
- 入院中に病院が用意した食事代
- 赤ちゃんの入院費
- 産後1か月健診
- 治療目的の母乳外来
- 不妊治療
- 人工授精費 等
医療費控除の対象とならない費用
- 妊娠検査薬、サプリメント等の治療目的ではない医薬品等の購入費
- 自家用車で通院時のガソリン代、駐車料金
- 里帰り出産で帰省するための交通費
- 予防接種費(医師判断での実施は対象)
- 自己都合による入院中の差額ベッド代
- 入院用のパジャマや洗面道具等の費用
- 入院中に出前した食事代、外食費
- 赤ちゃんのおむつ代、ミルク代 等
基本的に、治療を目的としないものや自己都合による出費は医療費控除の対象から外れます。
また交通費については、通院・入院時に利用した公共交通機関の料金や夜間・緊急時にやむを得ずタクシーを利用した場合の料金等が対象になります。
一方で、マイカーで通院した場合のガソリン代や里帰り出産で帰省する際に支払った交通費等は対象になりません。
医療費控除の計算方法
確定申告で医療費控除を行う場合の計算方法を見ていきましょう。
医療費控除・還付金の計算
始めに、以下の計算式で医療費控除額を計算します。
“補てんする金額”というのは、出産育児一時金・高額療養費・その他保険金等の医療費を補てんする金額のことです。
次に、返ってくる税金(還付金)を以下の計算式で求めます。
(2)医療費控除額×所得税率
所得税率は所得に応じて変わるため、国税庁のホームページでご確認ください。
参考:国税庁「所得税の税率」
医療費控除のシミュレーション
下記の条件で医療費控除のシミュレーションを確認してみましょう。
- 課税される所得金額:500万円
- 医療費:出産費用60万円、歯科治療2万円
- 補填する金額:出産育児一時金42万円
(2)税金(還付金):10万円×20%=2万円
国税庁のホームページによると、課税所得が500万円の場合の所得税率は20%です。
シミュレーションの結果、還付金は2万円となりました。こちらはあくまでも目安の金額ですが、課税される所得金額が多いほど所得税率も上がります。そのため、同じ医療費控除額でも、所得によって還付金が変動するという点を理解しておきましょう。
記事のまとめ
自然分娩の場合、マタニティ・ベビー用品等の代金を含めて約70万円前後の出産費用がかかります。
出産育児一時金を活用する場合でも、20万円程度は自費での準備が必要となるため、早い段階から計画的に金銭管理を行うことが大切です。
また出産手当金や高額療養費制度等の公的制度・サポートをチェックし、対象となるものは積極的に利用していくようにしましょう。お金の心配をクリアにし、マタニティライフを楽しく健康的にお過ごしください。