帝王切開は医療保険が適用されるのは本当?給付金や制度について解説
妊娠・出産を控えた方の中には、まだ見ぬ我が子との対面を控えた幸せな気持ちとともに、出産費用がいくらかかるのか不安に思う人も少なくありません。
基本的に出産は保険が適用されず全額自己負担になりますが、帝王切開で出産する場合は健康保険や医療保険が適用できるというのは本当でしょうか。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、帝王切開にかかる費用や利用できる公的制度、民間の医療保険で受け取れる給付金など妊娠したら知っておきたいことを分かりやすく解説します。
帝王切開とは?
帝王切開とは外科手術による出産(分娩)のことで、メスで母親のお腹と子宮を切開して赤ちゃんを取り出す方法です。
帝王切開は母親や赤ちゃん、または両方に何らかのトラブルが生じて自然分娩が難しい場合に行われます。
帝王切開には健診で自然分娩が難しいと判断され妊娠38週前後に手術を行う「予定帝王切開」と、母体や赤ちゃんの生命にかかわるトラブルにより急いで赤ちゃんを取り出す必要がある時に行われる「緊急帝王切開」があります。
帝王切開で出産する割合
厚生労働省の調査によれば、帝王切開で出産する人の割合は令和2年で平均21.6%となっています。これは5人に1人の割合です。
平成2年の同調査では帝王切開の割合は9.8%で10人に1人でしたが、その後帝王切開による出産は年々増加しています。
この数字から帝王切開による出産が決して特別な出産方法ではなく、誰にも起こる可能性があることがお分かり頂けるでしょう。
参考:厚生労働省「周産期医療の体制構築に係る指針 」
かかる費用
帝王切開による出産はメスでお腹を切り開くため、自然分娩による出産と比べて入院日数が長くなり、それに伴って費用も高くなります。
自然分娩で出産する場合の出産費用は令和4年で平均48.2万円とされていますが、帝王切開の場合はこの自然分娩の費用に手術費用がプラスされると考えるのが分かりやすいでしょう。
令和4年度の診療報酬点数表によれば、帝王切開の手術費用は予定帝王切開の場合は201,400 円、緊急帝王切開の場合が222,000 円となっています。
ただ帝王切開の手術費用は保険が適用されるため、実際の負担額は自己負担3割とすると予定帝王切開では60,420円、緊急帝王切開では66,600円です。
帝王切開の手術費用はどの施設で出産した場合も同じ金額になります。
参考:厚生労働省「出産費用の見える化等について」
民間の医療保険で受け取れる給付金の種類と条件
民間の医療保険では、保障内容に応じて入院給付金や手術給付金が受け取れます。
また女性特有の疾病などを手厚く保障する女性向け医療保険や、女性疾病特約を付けた医療保険に加入している場合には給付金が上乗せして支払われます。
ここでは民間の医療保険で受け取れる給付金の種類と条件についてくわしく解説します。
入院給付金
入院給付金とは医療保険を契約する際に入院1日あたりの給付金を設定し、入院すると入院日数を乗じた金額の給付金が支払われるものです。
一般的な医療保険の入院給付金は1日5,000円から1万円程度で、帝王切開で出産した場合の入院日数は平均7~10日前後とされていることから、1日1万円の給付金なら7~10万円の入院給付金を受け取れる計算になります。
参考:公益社団法人国民健康保険中央会 平成28年度「出産費用の全国平均値、中央値」
手術給付金
手術給付金とは加入している医療保険の保障の対象の手術を受けた場合に、契約時に設定した金額の給付金が支払わるものです。
給付金は手術を受けた場合に10万円、20万円といった固定の金額が支払われる場合と、入院給付金の10倍、20倍という形で支払われる場合があります。
例えば入院給付金を10,000円で設定した医療保険で、所定の手術を受けると10倍の入院給付金を受け取れる場合、1回の手術を受けると10万円の給付金が受け取れる計算です。
帝王切開による出産で手術給付金が受け取れるかどうかはご加入の医療保険により異なりますので、詳しくは契約保険会社や営業担当者に確認してください。
女性疾病特約での給付金
医療保険に女性疾病特約を付帯していた場合、帝王切開で出産すると医療保険で支払われる手術給付金や入院給付金が上乗せした金額で支払われます。
具体的にはメインの医療保険の入院給付金が1日10,000円、特約で入院1日5,000円が上乗せされる場合、合わせて1日15,000円を受け取れる計算です。
医療保険で女性疾病特約の対象となる疾病は帝王切開の他に乳がんや子宮筋腫、子宮内膜症などがあり、女性に多い甲状腺疾患も含まれます。
出産に備えて保険加入する際の注意点
帝王切開での出産は自然分娩と比べて自己負担額が大きくなるため、民間の医療保険に加入して備えることをおすすめします。
ここでは民間の医療保険に加入する場合の注意点をくわしく解説します。
妊娠してからだと加入できない医療保険もある
民間の医療保険は出産に備え妊娠前に加入するのがベストなタイミングです。
一般的に妊娠27週目まではほとんどの保険会社で医療保険に加入できます。
27週目を超えていても加入できる医療保険は増えつつありますが、妊娠が分かってから時間が経ちすぎてしまうと希望する医療保険に加入できない場合があるため、妊娠前の加入がおすすめです。
今回の出産に医療保険が使えない可能性がある
民間の医療保険に加入する場合、免責期間を確認することが大切です。
免責期間とは医療保険に加入した後で保障が始まるまでの期間のことで、その間は保険事故が起こっても給付金が支払われません。
妊娠後に医療保険に加入する場合、免責期間が1年となっている医療保険では今回の出産に間に合わないことになりますので医療保険の契約時に免責期間の確認を忘れないようにしましょう。
医療保険の保障対象外となる可能性がある
前回帝王切開で出産した場合、切開した部分の子宮壁が薄くなり子宮が大きくなった時に破れる危険があるため、次回も帝王切開になるのが一般的です。
このタイミングで医療保険に加入する場合は特定の部位(この場合は子宮)が一定期間保障されない「部位不担保」の条件付きでしか医療保険の加入が認められない可能性があります。
また妊娠が分かってからの定期健診で経過観察や再検査などの異常が見つかっていた場合には医療保険の加入を断られたり、妊娠に関連する保障が対象外となる恐れがあるため医療保険に加入するなら妊娠前がおすすめです。
妊娠・出産時に利用できる公的制度
出産はリスクを伴うことがあるにも拘らず病気ではないという理由で基本的に全額自己負担となっていますが、帝王切開は公的制度の利用が可能なためかなり負担が軽減されます。
ここでは妊娠・出産時に利用できる公的制度についてくわしく解説します。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、出産費用の負担を軽減するために健康保険などの公的医療保険から出産時に一時金が受け取れる制度のことです。
これは自然分娩の場合でも帝王切開の場合でも同じ金額です。
ただし帝王切開であっても産科医療保障制度に未加入の医療機関で出産した場合の出産育児一時金は48万8,000円になります。
自然分娩の場合でも帝王切開の場合でも同じ金額が支給されます。
出産手当金
出産手当金とは会社員や公務員が出産する時に利用できる制度で、産前産後休暇で給与の支払いを受けなかった場合に自然分娩、帝王切開など出産方法に拘わらず手当金を受け取れるものです。
出産手当金の支給額は休業開始時の賃金日額3分の2相当額と決められており、例えば給与の標準月額が30万円だった場合日額は10,000円となり、その2/3にあたる6,667円が1日当たりの出産手当金になります。
また、給与が支払われている場合でもその金額が出産手当金に満たない場合は差額が支給されます。
この出産手当金は自動的に支払われるものではなく、「出産手当金支給申請書」という書類を健康保険組合などに提出し請求しなければなりません。
この出産手当金は出産で会社を退職した場合でも1年以上健康保険の加入期間があるなどの条件を満たせば受け取れるものです。
傷病手当金
傷病手当金とは、会社員などの健康保険の加入者が病気やケガで働けなくなった場合に支給される手当金です。
自然分娩ではこの傷病手当金は支給されませんが、帝王切開や切迫流産、切迫早産などで医師から就業不能と診断され、3日以上連続して仕事を休んだ場合に4日目から傷病手当金が受け取れます。
出産手当金が支払われている場合は原則傷病手当金の支給はありませんが、傷病手当金の日額の方が多い場合は差額分の請求が可能です。
医療費控除
医療費控除とは、1年間(毎年1月1日~12月31日)に使った医療費が世帯合計10万円を超えた場合に一定の所得控除を受けられる制度のことです。
通常医療費で10万円を超えることは少ないとお考えの方も多いと思いますが出産などで医療機関を定期的に訪れる年は10万円を超える可能性がありますので使った費用が分かるようまとめておくと良いでしょう。
医療費控除の手続きは、確定申告の際に所定の書類の提出が必要です。
なお帝王切開での出産で医療費控除の対象になるのは次のような費用です。
- 妊娠診断後の定期健診や検査にかかる費用
- 治療目的の薬代など
- 通院のための医療機関までの交通費(原則公共交通機関)
- 助産師による分娩の介助費用
- 入院時の部屋や食事にかかる費用
医療機関への交通費は、公共交通機関が少ない地方の場合タクシー代なども控除の対象になります。
記事まとめ
出産を控えた女性の8割は自然分娩を希望しているものの、帝王切開で出産する人の割合は5人に1人と決して少なくないのが実際のところです。
帝王切開での出産は公的医療制度の利用ができるとはいえ、3割は自己負担になるため民間の医療保険で備えておくのが安心でしょう。
また、妊娠後に医療保険の加入を希望する場合には保障が制限されたり加入を断られたりする恐れがあるので、早めに保険加入を検討するのをおすすめします。