医療保険は不妊治療の保障対象になる?条件や注意点を解説
不妊治療の保険適用範囲が拡大したことから、これまで100%自己負担だった治療法を3割の自己負担で受けられるようになりました。
これは不妊治療中の人にとっては大変うれしいことですが、3割の自己負担も長期になれば負担に感じるものです。もし民間の医療保険で不妊治療を保障するものがあればうれしいですよね。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、民間の医療保険で不妊治療は保障できるのか、医療保険の給付金の条件はどんなものなのかを分かりやすく解説します。
不妊治療の重要性
「妊娠を望む健康な男女が性交しているのに1年以上妊娠しないこと」を不妊といい、厚生労働省の調査によると39.2%の夫婦が不妊を心配した経験があるそうです。
その中で実際に不妊検査やことがある、もしくは現在も治療を続けている夫婦の割合は22.7%という結果が出ています。
実際に2021年には体外受精で生まれた子供が約7万人と過去最多となったことから不妊に悩む人が決して少なくないことと不妊治療の重要性がお分かり頂けるでしょう。
不妊治療の費用はいくら位かかる?
不妊治療は不妊の原因を調べる検査から始まり、その結果に合わせて「タイミング法」「人工授精」「体外受精」などの治療を受けることになります。
不妊治療には健康保険が適用されるものと適用されず自由診療扱いになるものがあり、自由診療の治療は医療機関によって金額が異なります。
状況に合わせて健康保険が適用されない高度な治療にステップアップすると費用が一気に高くなり、体外受精や顕微授精は1回あたり数十万円かかります。
ここではおもな不妊治の特徴と費用の目安を分かりやすく解説します。
①各種検査(費用の目安:数百円~2万円程度)
不妊の原因を探るために、血液検査や精液検査、子宮卵管造影検査などを行います。
②タイミング法(費用の目安:数千円~2万円程度)
タイミング法は基礎体温や超音波検査などを参考にして最も妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う方法です。
自然妊娠に最も近い方法であるため、体への負担も少なく済みます。
③排卵誘発法(費用の目安:数千円~2万円程度)
排卵誘発法は排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、質の良い卵子を育てて妊娠の可能性を上げる方法です。
通常女性の体では毎月1個の卵子が排卵されますが、排卵障害などで排卵しにくい場合には排卵誘発剤を使ってスムーズに排卵できるよう促します。
また体外受精などの際には妊娠の可能性を上げるために多数の卵子を確保する必要があるため卵巣への刺激を大きくして多数の卵子を確保します。
④人工授精(費用の目安:1~3万円程度)
人工授精とは2022年4月から人工授精は保険が適用になった治療法で、とくに不妊の原因が見当たらないのになかなか妊娠しない場合や精液検査の結果が悪い場合、また性交が上手にできず射精困難な場合などに行われます。
基礎体温や超音波検査の結果から排卵が近いタイミングを計り、排卵直前に濃縮した精子を子宮内に注入するのですが、実際に妊娠する確率は1割程度でそれほど高くありません。
④体外受精(費用の目安:20~60万円程度)
体外受精とは、採卵手術により排卵直前の卵子を体内から取り出し、体外で精子と受精させる不妊治療法です。
正常に受精が起こり細胞分裂をくり返すことで発育した良好胚を体内に移植すると妊娠率がより高くなるため、一般的に2~5日間の体外培養後胚を選んで腟から子宮内に胚移植します。
体外受精は年齢が若いほど成功率が高く、34歳までなら80%の人が胚移植3回目までに妊娠するといわれており、35歳を過ぎると卵子や精子の質が下がってしまうことから早めの対策が必要です。
⑤顕微授精
顕微授精は精子無力症や不動精子症など、精子の数が極端に少なかったり動きが悪かったりして通常の体外受精では妊娠の可能性が低いケースで行われる不妊治療法。
1個の精子を入れた細いガラス針を顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入します。
顕微授精では1個の精子を使用するため、精子の数が少ないケースでも問題なく施術ができる点がメリットです。
助成制度とは
特定不妊治療費助成制度とは、体外受精や顕微授精など特定の不妊治療を受けた場合にその費用の一部が助成される制度のことです。
2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大されたため国の助成制度はなくなりましたが、多くの自治体で独自の助成制度を実施しています。
助成制度の内容は自治体により違いがある可能性があるため、くわしくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
2022年4月から保険適用範囲が拡大
2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大しました。
これまでは不妊の原因を突き止めるための検査や一部の不妊治療のみを対象に保険が適用されていたため、保険適用外の治療は全額自己負担となっており、国の助成制度を利用して助成を受けるのが一般的でした。
そのため一旦治療費を立て替える余裕がない場合、不妊治療に踏み切れないケースもあったのです。
しかし保険適用範囲が拡大したことで窓口で支払う費用が3割に抑えられることになり、経済的な理由で不妊治療を諦めざるを得なかったケースでも安心して妊娠を目指せるようになりました。
対象となる不妊治療法
2022年4月から保険が適用される対象の不妊治療法は次のとおりです。
一般不妊治療 | タイミング法、人工授精 |
---|---|
生殖補助医療(ART) | 採卵、体外受精、顕微授精、男性不妊手術 |
これらは関係学会から安全性や有効性を確認された不妊治療法で、これらと同時に行われるオプションの治療についても保険が適用される場合があります。
また先進医療による治療は自由診療となるため基本的には全額自己負担になりますが、保険適用の対象となる治療と組み合わせることで2つの治療の共通部分については保険が適用されます。
ただし先進医療による治療はすべての医療機関で行われるわけではないので、先進医療による治療を希望する場合には予め医療機関に確認が必要です。
保険の適用条件
不妊治療の健康保険適用範囲が拡大されましたが、保険を適用するには年齢制限と回数制限の要件を満たしている必要があります。
年齢条件は不妊治療を開始した時の女性の年齢が43歳未満であること、また不妊治療を受ける回数についても同様に不妊治療を開始した時点の女性の年齢によって異なる上限が設けられています。
初めて治療を開始した時点の女性の年齢 | 保険適用できる回数の上限 |
---|---|
40歳未満 | 通算6回まで(1子ごと) |
40歳以上43歳未満 | 通算3回まで(1子ごと) |
不妊治療の保険適用範囲拡大のメリット・デメリット
2022年4月から不妊治療の保険適用の範囲が拡大しましたが、そのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下ではメリット・デメリットについて解説しています。
保険適用範囲拡大のメリット
不妊治療の保険適用範囲が拡大したことによるメリットは次のとおりです。
窓口での自己負担が減る
不妊治療の保険適用範囲が拡大したことによるメリットとして、窓口での自己負担が減ってより安心して不妊治療に臨めることが挙げられるでしょう。
不妊治療は1回の治療にかかる費用が安いものではありませんし、妊娠するまでの期間は個人差があるものの長期にわたるケースが多いです。
例えば体外受精一式の治療の平均費用は約50万円ですが、以前は保険が適用されず自由診療だったため、全額自己負担しなければなりませんでした。
今回の変更によって体外受精は保険が適用となったため、窓口で負担する金額は約15万円程度となり経済的負担がかなり減りました。
経済的な負担が減ることで不妊治療に対して前向きに取り組める点は大きなメリットといえるでしょう。
高額療養費制度の対象となる
不妊治療の保険適用範囲が拡大したことで、不妊治療の多くが高額療養費制度の対象になりました。
高額療養費制度とは、医療費の支払いが1ヶ月で上限額を超えた場合、超過した額を支給する制度のことです。
高額療養費制度は健康保険が適用される診療のみ対象と限定されているため、これまで人工授精や体外受精、男性不妊の手術などは同制度の対象外とされていました。
今回の保険適用範囲の拡大により、これらの治療も高額療養費制度の適用対象となったため、高額療養費制度の要件に該当すればさらに不妊治療にかかる費用負担を軽減できます。
保険適用範囲拡大のデメリット
保険適用範囲拡大のデメリットは以下の通りです。
特定不妊治療助成制度が廃止
不妊治療の保険適用範囲が拡大したことによるデメリットは、これまでにあった特定不妊治療助成制度が廃止になり自己負担が増える恐れがある点です。
特定不妊治療助成制度とは体外受精や顕微授精に適用される助成制度で、1回治療を受けると最大30万円の給付を得られるものでした。
今回保険適用範囲が拡大したことにより、不妊治療の費用の種類によっては保険適用前より自己負担が大きくなる可能性がある点はデメリットです。
不妊治療は民間の医療保険で保障される?
では、民間の医療保険でも不妊治療は保障されるのでしょうか。
ここでは、民間の医療保険が不妊治療の対象なのかどうかを解説しています。
民間でも保障される
結論から申し上げますと、不妊治療は民間の医療保険で保障されます。
といっても医療保険は不妊治療の保障に特化したものではなく、一般的なケガや病気に備える保障内容に不妊治療の保障がプラスされたものです。
不妊治療に備えられる医療保険には、人工授精、体外受精、顕微授精、胚移植などを行ったときに給付金が受け取れるといったものがあり、保障内容はさまざまです。
「体外受精をすると定額で数万円を治療の度に複数回受け取れる」という医療保険もあれば「入院給付金の10倍の金額を一度だけ受け取れる」ものもあります。
このように保険会社により医療保険の保障内容はさまざまですからいくつかの保険商品を比較した上で安心して妊活に臨める医療保険を選びましょう。
医療保険で給付金を請求できるもの
医療保険の保障内容は保険会社により異なりますが、妊娠を目的とした採卵や採精、体外受精、受精卵・胚培養、胚移植などの手術や入院は医療保険の給付金の支払対象となる場合が多いです。
また不妊の原因となっている疾患の治療のための入院や手術についても医療保険の給付金の請求対象です。
医療保険を契約する場合の注意点
民間の医療保険で不妊治療の保障ができることはうれしいことですが、医療保険を契約する際にはいくつか気をつけなければならないことがあります。
ここでは不妊治療に備えて、または不妊治療中で医療保険の加入を検討されている方のために、注意点を紹介します。
①不妊治療の保障は保険契約から2年後である
不妊治療の保障は医療保険の契約から2年間は不担保(保障されない)です。
民間の医療保険で不妊治療に備えたいとお考えの方は医療保険での保障を受けながらすぐにでも不妊治療を始めたいという方も多いのではないでしょうか。
でも実際は医療保険で不妊治療が保障の対象となるのは契約から2年後です。
そのため医療保険への加入は早く行った方が良いでしょう。また保障が開始されるタイミングは人によりさまざまですから加入する医療保険の保障内容と併せて保険会社にしっかり確認することをおすすめします。
②医療保険の加入を断られることもある
医療保険に加入する場合、不妊治療中だと加入を断られるケースがあります。
また妊娠中で帝王切開を予定している場合も医療保険の加入を断られる可能性が高いです。
だからといって医療保険の契約の際に嘘の内容を申告することは明らかな契約違反となり契約が無効になる恐れがあるため注意しましょう。
記事まとめ
不妊治療の保険適用範囲が拡大し、体外受精をはじめとした基本的な不妊治療が保険診療になったことは妊娠を望む多くの人にとってうれしいことです。
これによって高額な不妊治療が3割の自己負担で受けられる上、高額療養費制度も利用できるなどのメリットもあります。
またお住いの自治体が独自で助成制度を実施している場合もありますので、一度役所に確認してみるのも良いでしょう。
3割の自己負担も不妊治療が長期にわたれば徐々に負担が重くなりますので民間の医療保険に早めに加入して備えるのもひとつの方法です。
不妊治療に備えるおすすめの医療保険を以下の記事でご紹介しています。合わせて参考にしてください。