老衰死の場合、生命保険の死亡保険金を受取可能か
高齢者の増加が深刻化する日本では、病気などで亡くなる人だけでなく、老衰で死亡する人も増えています。
しかし、人によっては十分な資産が用意できておらず、葬式費用などを遺された家族などが負担することもあるようです。
そこで、長生きのリスクの備えの1つに「生命保険」があります。
生命保険は、さまざまな原因で死亡や高度障害になったときに、保険金が支払われます。
しかし、「老衰死は生命保険で保障されるのだろうか?」「老衰死しても家族に負担をかけないような備えをしたい」と思う人もいるのではないでしょうか。
今回は、無料保険相談を行なっている「保険のぷろ」が、老衰死でも生命保険の死亡保険金は受け取ることができるのか、また、一緒に確認しておきたい税金や死亡保険金の設定金額について解説します。
生命保険での老衰死の定義を確認しよう
老衰死の定義とは
ここでは、生命保険で老衰死はどのように解釈されるのかを紹介します。
厚生労働省によると、死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いるようです。
老衰で亡くなった場合、死亡診断書には「老衰による自然死」、または「多臓器不全」と書かれることが多いです。
加齢による老化に伴い、細胞機能の停止や臓器などの活動停止によって老衰による自然死が起きます。
そのため、生命保険会社は老衰で自然死することを「病死」として扱います。
日本では老衰死する人は多い
日本における主な死亡原因の割合は下記のとおりです。
悪性新生物(腫瘍) | 24.6% |
---|---|
心疾患 | 14.8% |
老衰 | 11.4% |
2022年 厚生労働省 人口動態統計より
厚生労働省によると、2022年の日本の3大死因は「1位:悪性新生物」「2位:心疾患」「3位:老衰」で、老衰死の割合は全体の11.4%でした。
また、男女共に、年代別では80代から老衰死する方が増加し、男性は95歳以上、女性は90歳以上で亡くなる方の死因第1位が老衰でした。
死因にはさまざまな種類がありますが、全体の約1割が老衰死であることを考えると、老衰死のリスクを考えた将来設計を考えることは大切だと言えます。
老衰死の場合、生命保険の死亡保険金は受け取り可能
前述したように、生命保険会社は老衰で自然死することを「病死」として扱います。
そのため、老衰死でも死亡保険金の受取は可能です。
亡くなった方が加入していた生命保険の死亡保険金を受け取る前提として、「保証期間中の定期保険あるいは終身保険であること」、「亡くなった方がその被保険者であること」の2つの条件を満たす必要があります。
これら2つの条件が満たされれば、指定された受取人が受け取ることができます。
死亡保険金受取の大まかな流れは以下のようになります。
- どの生命保険会社に加入しているか確認する
- 被保険者が死亡したら「保険契約者」または「保険受取人」が生命保険会社に連絡する
- 生命保険会社より必要書類の案内と請求書が届く
- 保険証券に記載されている受取人が必要書類を揃え、手続きをする
- 生命保険会社が書類を受け付け、保険金支払いの可否判断をする
- 生命保険会社から保険金・給付金を受け取る
なお、必要書類には被保険者の住民票や受取人の戸籍抄本、印鑑証明といった役所で取り寄せなければならない書類など、手配に時間や手間がかかるものもあります。
契約した保険の内容が記載された重要な書類の一つである保険証券の場合、亡くなった人でなければ保管場所が分からないということがないように、事前に家族と情報共有をするなどの準備も大切です。
死亡保険金が受け取れない場合を確認しよう
生命保険会社から死亡保険金が受け取れない場合を、「死亡保険金が免責となる」といいます。死亡保険金の免責とは生命保険会社が死亡保険金を支払う責任を免れることを意味します。
どのような場合に免責となるのかについては、下記のとおりです。
- 戦争やその他変乱、大災害による死亡
- 告知義務違反をした場合
- 保険金の受取人が被保険者を殺害した
- 生命保険の責任開始日から1年以内の自殺
戦争やその他変乱、大災害の場合は、多数の死者が出て、生命保険会社の死亡保険金の支払い能力を大きく超えてしまう恐れがあるからです。
告知義務違反は、現在の健康状態、過去の傷病歴、職業などについて事実を告げなかったり、偽りの告知をすることが挙げられます。
殺害や自殺によって免責となるのは、死亡保険金の不正請求を防ぐためです。
安楽死に関しては日本では認められていないため、保険の契約において規定はありません。
ただし、消極的安楽死と同義とされる尊厳死に関しては異なります。
例えば、末期がんの患者が延命治療せずに尊厳死(自然死)した場合は病死として、死亡保険金支払い対象となります。
死亡保険金について確認しよう
ここでは実際に死亡保険金をどれくらいの金額で設定するのか、また、死亡保険金を受け取ることで発生する税金の種類を確認します。
死亡保険金設定額の相場
死亡保険金の金額(生命保険会社に共済などを含めた額)の平均値は、生命保険文化センターが3年に一度行っている「生命保険に関する全国実態調査」で確認することができます。
2021年度(令和3年度)の調査の結果によると1世帯あたりの死亡保険金金額の平均は、2,027万円となっています。
では、死亡保険金の金額の平均をライフステージ別にみてみましょう。
ライフステージ別の死亡保険金(死亡保障額)金額
ライフステージ | 死亡保険金金額(万円) |
---|---|
夫婦のみ(40歳未満) | 1737.6 |
夫婦のみ(40歳~59歳) | 1807.3 |
末子乳児 | 2489.9 |
末子保育園児・幼稚園児 | 2630.4 |
末子小・中学生 | 3075.9 |
末子高校・短大・大学生 | 2482.7 |
末子就学終了 | 2070.3 |
高齢夫婦有職(60歳以上) | 1394.9 |
高齢夫婦無職(60歳以上) | 879.8 |
ライフステージごとに分けると、子供が生まれる前の夫婦のみのときから、子供が生まれ、成長し、子供が独立して高齢夫婦になるまで、家族構成の変化によって変わっていく備えの大きさを確認することができます。
このように死亡保険金の金額は人によって様々ですが、ライフステージや遺された家族の年齢、葬儀費用などをふまえて設定する方が多いようです。
死亡保険金にかかる税金の種類について
死亡保険金を受け取ることでかかる税金は、所得税・相続税・贈与税が挙げられます。
国税庁によると、死亡保険金の課税関係については、次のとおりです。
死亡保険金の課税関係の表 (ここでは登場人物をA・B・Cで見立てました。)
被保険者 | 保険料の負担者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
A | B | B | 所得税 |
A | A | B | 相続税 |
A | B | C | 贈与税 |
交通事故や病気、老衰などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者および保険金受取人が誰であるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になります。
では、具体的な課税基準について確認しましょう。
所得税がかかる場合
所得税が課税されるのは、上記「死亡保険金の課税関係の表」のように、保険料の負担者と保険金受取人とが同一人物の場合です。
この場合の死亡保険金は、受取の方法により、一時所得または雑所得として課税されます。
相続税がかかる場合
相続税が課税されるのは、上記「死亡保険金の課税関係の表」のように、被保険者と保険料の負担者が同一人物の場合です。
受取人が被保険者の相続人であるときは、相続により取得したものとみなされますが、相続人以外の者が受取人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。
相続人が受け取る死亡保険金にかけられる相続税の場合、法定相続人1人につき500万までが非課税となります。
また、死亡保険金を年金で受領する場合には、その年金を受け取る権利に対して相続税が課税されます。
贈与税がかかる場合
贈与税が課税されるのは、上記「死亡保険金の課税関係の表」のように、被保険者、保険料の負担者および保険金の受取人がすべて異なる場合です。
贈与税は110万まで非課税となりますが、それ以上は課税されます。
このように、契約者や被保険者、受取人などの関係によっては、課税される税金の種類が変わるため、税引き後に受け取れる金額を考えて契約することも大切です。
いずれにしても、死亡保険金には何らかの税金がかかるということを覚えておくことをおすすめします。
まとめ:老衰による自然死でも死亡保険金は受取可能
ここまで、本記事では、老衰による自然死の場合に、生命保険の死亡保険金が受け取れるかどうかについて解説してきましたがいかがだったでしょうか。
結論、老衰による自然死でも生命保険の保険金を受け取ることができます。
ただし、本記事で紹介したように、生命保険が適用されない、死亡保険金が受け取れないケースがあることに注意してください。
不安な点や疑問などがあれば、一度R&Cの保険無料相談を受けてみてください。
障害年金などのお金に関連すること、また老後の備えやライフプランニングについて不安や疑問がある方はFP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談してみることをおすすめします。
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