「あなたも過払い金が戻ってくる可能性があります」カードローンの過払い金が発生する原因や返金請求の方法
「カードローンの過払い金が戻ってくる可能性があります」
最新、テレビCMでそんな言葉を聞いた覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
2010年6月17日(木)以前にカードローンの取引を行った方は、カードローンの過払い金が戻ってくる可能性があります。
この記事では、「なぜカードローンの過払い金って発生するの?」「カードローン過払い金の返金請求は自分でできるの?」といった疑問をお持ちの方に向けて、カードローンの過払い金が発生する原因や返金請求の方法について解説します。
カードローンの過払い金にお心当たりのある方や、返金請求をご検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
過払い金とは?カードローンで過払い金が発生する原因と仕組み
ここでは、カードローンでいう「過払い金」とは何か、その概要と発生する原因や仕組みについて解説します。
カードローンでいう「過払い金」とは、払いすぎていた利息のこと
過払い金とは、本来支払う必要がないにもかかわらず、貸金業者に支払いすぎたお金のことです。
日本では、お金を貸す際の金利の上限について定めた法律に、利息制限法と出資法の2つがあります。
昔はそれぞれの法律で上限金利が異なり、利息制限法よりも出資法のほうが高い金利設定になっていました。
その結果、利息制限法の利率を超えた金利が設定され、利用者は利息を払いすぎるという事態が起こりえました。
この払いすぎた分が、いわゆる「過払い金」です。
現在は法律が改正され、2つの法律の上限金利は同じになったので、過払い金は発生しません。
過払い金が発生するのは、2010年6月17日(木)以前の一部の取引のみ
現在、金融機関は上限金利を守っているため、今後過払金が発生することはありませんが、以下の条件に該当する人は、カードローンで過払金が発生している可能性があります。
2010年6月以前に銀行以外のカードローンを利用している
2010年6月以前は、出資法の上限金利は年29.2%、利息制限法の上限金利は20.0%となっていました。
つまり、両法の上限金利には、年9.2%の金利差があったということです。
この年9.2%の金利帯は法的にグレーゾーンだったことから、「グレーゾーン金利」と呼ばれていたのです。
では、なぜこのようなグレーゾーン金利が問題になったのかというと、2010年の貸金業法改正以前に多くの消費者金融が、このグレーゾーン金利で営業していたからです。
当時、グレーゾーン金利は「違法でもなく、合法でもない」とされていましたが、多く消費者金融は合法だと判断していました。
当然ですが、年20.0%で貸付するよりも年29.2%で貸付するほうが、消費者金融の利益率は高くなります。
その一方で利用者から見れば、返済不能に陥るリスクが大きくなってしまうということです。
このような背景から多重債務者や自己破産者が急増し、社会問題に発展。
結果としてグレーゾーン金利は無効と判断され、消費者金融へ過払い金を請求する利用者が殺到する事態になりました。
そのため、現在、29.2%の上限金利で返済を続けていた人に限って、改正賃金業法が施行される前と後の差である利息分を、過払金として返還請求することができるのです。
ちなみに、当時の銀行は消費者金融とは異なり、銀行法のもとで貸付を行っていたため、20%以上の金利で貸付を行っていません。
2010年6月以前にカードローンを利用した人の中で、銀行から融資を受けた人は過払金を請求することができないので注意が必要です。
また、リボ払いによる手数料も過払金の対象外となります。
カードローンで発生した過払金は請求するための2つの条件とは?
上記で、過払い金請求の対象は、「グレーゾーン金利部分で借入していたにもかかわらず、いまだ返還請求を行っていない人」というように説明しました。
ここでは、カードローンで発生した過払い金を請求することができる条件についてより詳しく確認します。
条件① カードローンの完済から10年が経過していない
過払い金の請求には「消滅時効」があり、原則完済してから10年を経過すると、過払い金は消滅時効を迎え、請求することができなくなってしまいます。
たとえば、2010年5月にカードローンを利用し、2011年5月に完済している場合、2022年1月の時点で10年経過しているため、すでに過払金の返還請求権は消滅していることになるのです。
過払金が発生する条件を満たし、カードローンを完済している人の中には、過払金の返還請求権の時効が近づいている人も増えているはずなので、過払金が発生している可能性がある方は、すぐに弁護士などの専門家に相談しましょう。
【注意】2020年4月以降完済の場合の時効は5年
時効が完済から10年で成立するのは2020年3月までに完済しているローンだけです。
これは、2020年4月以降に完済するローンでは、2020年4月に施行された民法改正によって時効の規定が変更されたためです。
改正民法第166条(債権等の消滅時効)では時効について次のような規定が盛り込まれました。
つまり、2020年4月以降に完済するローンでは「過払い金を請求できると知った日から5年」で時効が成立するので注意してください。
条件② 2010年6月以前のカードローンを返済していた
先述の通り、2010年6月以前のカードローンを返済していた、または現在も返済している人は、過払金の返還請求ができる可能性が高いです。
現在は上限の20%で返済している方の中も、2010年6月以降に一時的でも20%を超える金利で返済している可能性があるため、過払金が発生しているか専門家に調査してもらいましょう。
ただし、現在進行形でカードローンを返済している人が、過払金請求を行うと債務整理扱いを受ける可能性があるので注意が必要です。
返還された過払金によって借金が全て相殺されれば問題ありませんが、僅かでも借金が残ってしまうと、信用情報機関に事故情報が登録されてしまいます。
信用情報機関に事故情報が登録されると、新規でローンを組めなくなったりクレジットカードの契約ができなくなったりするため、弁護士と相談して過払金請求を行うのか決めましょう。
過払い金を返金請求する際のデメリットや注意点について解説
それでは、過払い金があると知った場合は絶対に返金請求をするべきなのでしょうか?
ここでは、返金請求によって生じるデメリットや注意点について解説します。
注意点① 過払い金の請求をしたクレジットカード会社のクレジットカードは使えなくなる
過払い金を請求する場合、会社によっては、その会社の発行するクレジットカードは使えなくなることがあります。
過払い金請求が終わった後でも、同じ会社で新規にクレジットカードを作成することは難しくなるでしょう。
なお、キャッシング分についての過払い金を請求することになりますが、クレジットカード自体が使えなくなるため、ショッピング機能も利用できなくなります。
請求先の会社のクレジットカードを複数枚持っていて、そのうち1枚について過払い金を請求する場合であっても、原則としてすべてのカードが使えなくなります。
そのため、過払い金の請求をする前には、次のような準備をしておく必要があります。
- 必要に応じて他の会社のクレジットカードを作っておく
- 光熱費やスマホの料金などをクレジットカード払いにしている場合には、支払方法を変更しておく
- ポイントなどがたまっている場合には使っておく
クレジットカード会社に過払い金の請求する場合には、クレジットカードが使えなくなっても困らないように事前に準備しておきましょう。
注意点② 信用情報機関に事故情報が載る可能性がある
いわゆる「ブラックリスト」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
俗にいう「ブラックリストに載る」とは、破産手続をしたなどの経済的信頼を損ねる事態があった場合、信用情報機関に登録されている個人信用情報に「事故情報」が登録されることを指します。
「事故情報」とは、個人の経済的信用力を低下させるような情報で、具体的には次のような情報のことです(※登録される情報は、各信用情報機関によって異なります)。
- 一定期間以上の延滞
- 保証債務の履行、代位弁済
- 任意整理(過払い金の請求を除く)
- 自己破産
- 個人再生
これらの事故情報は、「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」「JICC(日本信用情報機構)」「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」という3つの各信用情報機関の間で共有されています。
クレジットカード会社のキャッシングについて過払い金の請求をした場合、事故情報に載る場合と載らない場合があります。
事故情報に載る場合と載らない場合は、次のとおりです。
キャッシングの状況 | 事故情報の登録 |
---|---|
既に完済している | 登録されない |
過払い≧借金額 | 登録されない (※請求時点で登録されることがあるが、過払い金の方が多ければ抹消される) |
過払い金<借金額 | 登録される |
信用情報機関の事故情報に必ず登録されるのは、キャッシング等の返済が終わっておらず、過払い金の請求をしてもキャッシング等カード会社に対する債務が残る場合です。
過払い金を取り戻すためには、利息制限法の上限利率に基づいて計算をし直す必要があります(引き直し計算)。
そして、その引き直し計算の結果、既にキャッシング等の残額がなくなっている場合、本来であれば、事故情報に登録される話ではないのですが、過払い金の請求をした時点で登録されてしまう可能性があります。
ただ、この場合には後から登録を抹消するように請求ができますので、事実上の影響はあまりないでしょう。
また、ここでいう「借金額」には、キャッシング利用分だけでなくショッピング利用分も含まれます。
キャッシングは完済していても、ショッピング利用分が残っていると、発生している過払い金はショッピングの支払に充てられますので、過払い金<借金額にならないか注意が必要です。
注意点③ 過払い金を取り戻すには時間がかかる
過払い金を取り戻すまでの期間ですが、早くて約2ヵ月~4ヵ月、訴訟になった場合などは遅いと半年から1年くらいかかります。
なお、自分で請求するより司法書士や弁護士に依頼したほうが、貸金業者の対応が早い傾向があるようです。
過払い金の返金請求方法
ここでは、カードローン過払い金の返金請求に必要な書類と、返金請求の流れについて詳しく解説します。
過払い金請求に必要な書類
過払い金請求に必要な書類は以下の通りです。
- 取引履歴
- 引き直し計算書
- 過払い金返還請求書
- 訴状(裁判をする場合)
- 証拠説明書(裁判をする場合)
- 代表者事項証明書(裁判をする場合)
必要な書類を紛失してしまった際の解決策
契約書を紛失した場合や、どこの貸金業者をいつ利用したのか忘れてしまい、明細が入手できないといった場合には、個人信用情報機関に問い合わせましょう。
国内の金融機関はすべて、個人信用機関である「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」「JICC(日本信用情報機構)」「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」のうち、いずれか1つ以上に加入しています。
そのため、これらの機関に問い合わせることで、過去に利用した貸金業者を知ることができます。
返金請求の流れ
返金請求の流れは以下の通りです。
- 貸金業者から取引履歴を取り寄せる
- FAXや郵送で取引履歴を取り寄せる
- 過払い金の引き直し計算をする
- 貸金業者に過払い金返還請求書を送付する
- 貸金業者と話し合いによる交渉をする
- 過払い金請求の裁判をする
- 貸金業者から過払い金が返ってくる
以下でそれぞれについて詳しく解説します。
1.貸金業者から取引履歴を取り寄せる
過払い金請求をする貸金業者から、いつ、何パーセントの金利でいくら借りて、いつ、いくら返済したかわかる取引履歴を取り寄せます。
取引履歴は貸金業者に電話、FAX、郵送で取り寄せできますが、直接店舗へ行って申し込み・受け取りができる貸金業者もあります。
貸金業者によっては、取引履歴を取り寄せるのに約1,000円の手数料がかかることがありますので準備しておきましょう。
2.FAXや郵送で取引履歴を取り寄せる
FAXや郵送で取引履歴を取り寄せるには、「取引履歴開示請求書」を本人確認ができる運転免許証やパスポートなどのコピーと一緒に貸金業者に送ります。
- 貸金業者名
- 開示請求日
- 氏名
- 印鑑
- 生年月日
- 会員番号
- 電話番号
- 住所
- 開示を求める文章
- 開示を求める理由
3.過払い金の引き直し計算をする
取引履歴を貸金業者から取り寄せたら、お金を借り入れするときの上限金利が定められている利息制限法にしたがった引き直し計算をします。
利息制限法の上限金利は以下の通り。
借入額 | 上限金利 |
---|---|
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
上限金利を超える利息で返済をしていた分が過払い金になります。
過払い金の引き直し計算は、インターネットで過払い金計算ソフトをダウンロードして、Excelのつかえるパソコンで計算できます。
過払い金の引き直し計算を間違えて貸金業者に過払い金請求すると、本来取り戻せる過払い金より少なくなったり、過払い金請求を断られたりすることがあるので正確に計算しなければなりません。
4.貸金業者に過払い金返還請求書を送付する
過払い金額がわかったら、過払い金請求をする貸金業者に「過払い金返還請求書」と「引き直し計算書」を内容証明郵便で送ります。
- 日付
- 過払い金請求をする貸金業者名
- 過払い金請求をする貸金業者の代表名
- 自分の名前
- 住所
- 連絡先電話番号
- 振込口座名
- 口座番号
- 契約番号や会員番号
- 計算をした過払い金の金額
内容証明郵便とはいつ・だれが・どこに送ったかを証明できる郵送方法です。内容証明郵便で送ることで、貸金業者が「過払い金返還請求書は届いていない」などといった主張を防ぐことができます。
5.貸金業者と話し合いによる交渉をする
過払い金返還請求書を送ると貸金業者から連絡があるので、話し合いで取り戻せる過払い金額や支払い方法、支払う期限について話し合います。
貸金業者から言われるがままに話をすすめて、取り戻せる過払い金が少なくなったり、過払い金を分割で支払われたり、支払い期限を先延ばしにされたりすることがないよう、交渉する必要があります。
貸金業者から提案された取り戻せる過払い金額や支払い方法、支払う期限に納得できない場合は裁判をします。
6.過払い金請求の裁判をする(5で交渉が成立しなかった場合)
過払い金請求の裁判は、貸金業者と話し合いで和解した場合よりも手間と時間がかかりますが、取り戻せる過払い金が多くなる可能性があります。
過払い金請求の裁判をする場合、裁判をするために書類を準備して、裁判所に行く必要があります。
- 訴えの内容を述べた訴状
- 証拠説明書
- 取引履歴
- 引き直し計算書
- 過払い金請求をする貸金業者の代表者事項証明書
裁判に必要な書類を用意したあと、裁判所へ訴訟を起こして、過払い金や支払い方法、支払う期限を判決がでるまで主張します。
裁判をしている最中も、貸金業者と過払い金や支払い方法、支払う期限の和解交渉は続きます。
貸金業者からの和解内容は、話し合いで交渉したときよりも取り戻せる過払い金が多くなっている場合が多く、判决がでる前に和解することも可能です。
しかし、判决がでる前に和解した場合、貸金業者が過払い金の支払いに遅れたり、支払わなかったりした場合、督促はできますが強制執行で強制的に過払い金の支払いをさせることができないのでご注意ください。
7.貸金業者から過払い金が返ってくる
過払い金が振り込まれるのは、貸金業者との交渉で和解してから、裁判の判决が出てから、約2ヵ月~4ヵ月が目安で、和解時に作成される和解書や判決内容に応じた金額が、指定した口座に振り込まれます。
過払い金請求を自分でしようと進めてみたものの、途中で不明点があったり、不安になった場合は、司法書士・弁護士に相談するべきです。
相談した結果、司法書士・弁護士に依頼することになれば、途中になっていた過払い金請求の手続きをすべて任せることが可能です。
記事まとめ
この記事では、カードローンの過払い金が発生する原因や返金請求の方法について解説しました。
過払い金が請求できる期間には、10年という限りがあります。
少しでも過払い金に心当たりのある方は、早めに対応しましょう。
過払い金の返金手続きは個人で行うこともできますが、必要な書類を一から揃えたり、過払い金の正確な計算したりしなければなりません。
請求できたとしても、請求者が個人であることをいいことに、債権者側も高圧的な対応や、過払い金の返還額が想像に反して減額されるおそれもあります。
こうしたリスクを考慮すれば、過払い金の請求は、弁護士や司法書士といった専門家に相談するのがおすすめです。
迅速・正確な対策をして、貸金業者から過払い金を返還してもらいましょう。