カードローンで本人が死亡したらどうなる?相続と返済義務について
カードローン返済中に本人が死亡した場合、返済の義務や相続権はどうなるのでしょうか。
いきなり多額の借金を背負うことになれば、返済の負担が重くのしかかるかもしれません。
この記事では、カードローン契約者が死亡した場合の返済義務や相続の行方、手続き方法について解説します。
相続人のケース別に返済を免れる方法もお伝えするので、支払いの不安を払拭したい人は参考にしてみてください。
カードローンの契約者本人が死亡した場合、返済義務は相続対象となる
カードローンの契約者本人が死亡した場合は、遺族である配偶者や子供たちが財産と一緒に負債も相続することになります。
契約者本人が死亡しても、カードローンの借金が帳消しになるわけではないので注意が必要です。
不動産や預貯金といった「プラスの財産」が、カードローンの借金などの「マイナスの財産」を上回る場合は、それほど問題にはならないでしょう。
仮にプラスの財産でカードローンを返済できれば、残った分の財産はそのまま相続できます。
しかし、マイナスの財産がプラスの財産を超えてしまうケースだと、何かしらの対処法を検討しなければいけません。
法定相続人の決まり方と範囲について
ここでは、民法で定められた法定相続人の優先順位を確認しましょう。
まず、死亡者本人の配偶者は必ず相続人になります。それ以外の親族は、以下の順位で相続権を持ちます。
優先順位 | 血族の種類 |
---|---|
第1順位 | 死亡した本人の子供 |
第2順位 | 父母や祖父母(死亡者本人の直系尊属) |
第3順位 | 死亡した本人の兄弟姉妹 |
なお、死亡者本人に孫がいて、法定相続人の子供が死亡している場合は、孫が代わりに財産を相続(代襲相続)することになります。
借金を遺産分割しても債権者には通用しないので注意
カードローンの借金などマイナスの相続財産は、遺産分割しても債権者には通用しません。
遺産分割でどのように財産・負債を分割したとしても、債権者は相続人全員に対し、法定相続分(法律で定められた相続人の取り分)に従って返済を請求できます。
例えば、兄弟2人が相続人で、遺産分割協議で「兄が債務をすべて引き受ける」と決めたとします。しかし、債権者はその取り決めにかかわらず、兄と弟それぞれに1/2ずつの返済請求が可能です。
これは、過去の判例で「相続人は被相続人の債務の分割されたものを承継する」とされたためです。つまり、借金は遺産分割より前、相続が発生した時点ですでに分割されているとみなされます。
参照:昭和34年6月19日 最高裁判所第二小法廷判決|裁判所
遺産分割で法定相続分とは異なる割合を取り決めても、それはあくまで「承継した債務を相続人間で肩代わりする約束」であり、債権者の取り立てに対する影響力はないということです。
ただし、上記はあくまで法律上の解釈です。債権者によっては、事情を話せば遺産分割に沿った請求をしてもらえる可能性もあります。
一括返済を求められる可能性がある
カードローン契約者が死亡した際、金融機関は相続人に対して一括返済を求める場合があります。これは、カードローンの利用規約に「本人死亡時に一括返済が必要」と規定されている場合があるためです。
また、相続の開始を期限の利益喪失事由とする条項が盛り込まれていることも、一括返済が求められる理由の一つです。期限の利益とは「一定の期日が来るまでの間は債務を返済しなくてもよい利益」を意味します。
返済額にもよりますが、債務者にとって一括返済は大きな負担となるでしょう。一括返済が難しい場合は、分割支払いなどにも応じてもらえる可能性があるので、金融機関に相談してみてください。
なお、近年は消費者団体が金融機関に対して相続の開始を「利益喪失事由から削除する」申し立てが増えています。規定を削除する動きが徐々に進んでいることからも、今後は一括返済をしなくて済む可能性が高まりそうです。
参照:金融庁、カードローン契約の「期限の利益喪失事由」から相続開始の削除を要請|Tabisland
参照:カードローン契約における相続開始時の取扱改定について|西京銀行
本人死亡時の法的手続き
負債者本人が死亡した場合は、どのような手続きが必要になるのかを解説します。
すべての財産が相続される「単純承認」
単純承認とは、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)が相続人にすべて相続されることです。
自分が相続人と知ってから3ヶ月以上が経過すると、自動的に単純承認として扱われるため、必ず手続きが必要なわけではありません。
ただし、カードローンなどのマイナスの財産も相続するため、相続を拒否したい人は早めに行動を起こす必要があります。
カードローンの負債が残っている場合は、債権者に連絡をとって今後の支払いの流れについて相談してみてください。
【番外編】銀行カードローンの名義人が死亡した場合の手続き
銀行カードローンの名義人本人が死亡した場合は、口座の入出金停止や払い戻しなどの手続きを行います。
- 銀行へ名義人が亡くなったことを連絡する(電話またはWeb)
- 遺言書や戸籍謄本、遺産分割協議書などの書類を提出する
- 解約通帳や払い戻しといった手続きを行う
名義人の取引内容によっては、銀行へ来店する必要があります。
前述したとおり、カードローンの借金が残っていた場合は相続人が返済しなければなりません。
カードローンの支払いを放置したままにすると、相続人の信用情報に記録されます。
延滞履歴が記録されると、クレジットカードの作成や借入ができなくなる恐れがあるので注意してください。
カードローン返済の相続を免れる方法
カードローン契約者が死亡した際に、返済の相続が免除される方法について解説します。
相続放棄
相続放棄とはすべての遺産相続を放棄できる制度です。
一般的に相続する財産がマイナスの場合、ほとんどの人が「相続放棄」を選択します。
相続放棄は自分が相続人と知ってから、3ヵ月以内に管轄の家庭裁判所へ申述しなければなりません。
具体的な相続放棄の流れは以下のとおりです。
- 申述に必要な書類を揃える
- 家庭裁判所へ書類を提出する
- 相続放棄の照会書が届く
- 回答書を返送する
- 相続放棄が受理されると申述受理通知書が届く
申述に必要な書類とは相続放棄申述書や被相続人の戸籍謄本(または住民票除票)、相続放棄をする人の戸籍謄本などになります。
相続放棄は自分の判断で行えるため、他の相続人と相談したり書類を用意したりする必要がありませんが、相続放棄しても負債自体はなくなりません。
相続を放棄すると、相続の優先順位が高い順番に通知や債務の引き継ぎが行われます。
なお、自分から連絡しないと、他の相続人は急に返済を求められることになるので、あらかじめ連絡しておくことが大切です。
「財産を少しでも使うと相続放棄できない」「一度相続放棄すると撤回できない」という点も留意しておいてください。
相続放棄は申請が受理されるまで1〜2ヵ月ほどかかるので、早めの行動を意識しましょう。
限定承認
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続できる制度のことです。
そのため、カードローン契約者(被相続人)が残した財産の全容がわからないときに有効な手段といえます。
プラスの財産がマイナスの財産を上回っていれば、マイナスの財産を清算して残ったプラス財産の受け取りが可能です。
マイナスの財産がプラスの財産を上回っていても、債務の割合に応じて返済に充てられるため負債が残らないというメリットもあります。
ただし、限定承認を申請するには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 財産がプラスになるかマイナスになるかわからない状態
- 自分が相続人と知ってから3ヵ月以内に家庭裁判所へ届け出る
- すべての相続人が共同で申請する
- 準確定申告や譲渡所得税を申告する
相続放棄はすべての財産を放棄することから、状況によっては損をする可能性が否めません。
「負債を絶対に負いたくない」という方は、限定承認の検討をおすすめします。
限定承認は受理されるまでに1ヵ月程度かかるので、早めに行動に移しましょう。
団体信用生命保険(団信)つきのカードローン
契約者のカードローンが団体信用生命保険つきの場合、相続人は債務を免れることができます。
団体信用生命保険とはカードローンの返済中に本人が死亡・高度障害となった場合に、返済を免れる保険のことです。
団体信用生命保険つきのカードローン商品は多くありませんが、返済の負担を抑えられる可能性があることからも、契約情報を再度確認してみるといいでしょう。
記事まとめ
カードローンの契約者本人が死亡した場合、返済義務は相続人が引き継ぐことになります。
カードローンの返済を相続したくない場合は「相続放棄」か「限定承認」を選択してみてください。
いずれの方法も申請が受理されるまで1〜2ヵ月程度かかるので、早めに動き出すことが重要です。
相続人全員で相談して、カードローンの返済負担を最小限に抑えましょう。