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生活保護の受給にデメリットはある?制度の概要や申請の条件についても解説
生活保護の受給にデメリットはある?制度の概要や申請の条件についても解説
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生活保護は誰でも受けられるわけではなく、デメリットや注意点も理解しておくことが大切

「生活保護を受けたいが自分でも大丈夫だろうか」

「デメリットや注意点を知っておきたい」

生活保護を検討している方の中には、こういった不安や悩みがあるかもしれません。

生活保護は誰でも受けられるわけではなく、デメリットや注意点も理解しておくことが大切です。

この記事では生活保護の概要と生活保護費の算出方法、受給によって起こるデメリットを解説しています。

将来的に生活保護から自立したい方へアドバイスもお伝えするので、生活保護の悩みを解決したい方は参考にしてみてください。

生活保護制度の概要

生活保護制度の概要

生活保護とは生活が困窮している人に対して、国が経済的な支援をしてくれる制度です。

経済的な支援が必要な事例には、以下のようなものがあります。

  • 病気や事故で収入が途絶えて生活に困窮している
  • 家族の離別・死別により生活が苦しくなった
  • 親が自己破産して子供の金銭的負担が増えた
  • 年金だけで生活ができなくなった
  • シングルマザーで働いているが生活が苦しい

憲法25条では「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めるように、生活保護の申請は国民が持つ権利です。

生活するうえで必要な費用に対する扶助には、以下の8種類があるので覚えておきましょう。

生活扶助 衣食の日常生活費を扶助
住宅扶助 家賃を扶助
教育扶助 教育費用を扶助
医療扶助 医療サービスの費用を扶助
介護扶助 介護サービスの費用を扶助
出産扶助 出産費用を扶助
生業扶助 就労に必要な技能・資格を習得するための費用を扶助
葬祭扶助 冠婚葬祭費を扶助

生活保護の相談・申請は、最寄りの福祉事務所の生活保護担当者へお願いする流れとなっています。

どんな人が受けられるの? 受給条件を確認

どんな人が受けられるの? 受給条件を確認

生活保護はどんな人が受けられるのか、受給条件を確認していきましょう。

  • 世帯収入が地域の最低生活費を下回っていること
  • 家族や親戚から支援を受けられないこと
  • 物件や自動車などの資産を持っていないこと
  • 病気やケガで働けないこと

世帯収入が地域の最低生活費を下回っていること

生活保護を受給できる人の条件は、申請者の世帯収入が地域の最低生活費を下回っていることです。

収入とは、主に以下の項目を指します。

  • 給与による勤労収入
  • 退職金
  • 年金
  • 農業収入
  • 自営業収入
  • 生命保険などの各種保険金
  • 国や自治体から受けた手当
  • 自動車や不動産の売却金
  • 贈与や仕送り

最低生活費の算出例は後ほど詳しく解説しますが、最低生活費とは健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な費用です。

例えば1カ月の世帯収入が10万円で、1カ月の最低生活費が13万円だった場合は「3万円」の生活保護費を受給できます。

家族や親族から支援を受けられないこと

家族や親戚といった扶養義務者がいる場合は、生活保護を受けるよりも支援の方が優先されます。

扶養義務者が十分に援助できるならば生活保護は必要ない、と判断されるからです。

ただし、扶養義務者から援助してもらえる金額が最低生活費に届かないときは、差額分の生活保護費を受給できます。

また、3親等以内の家族や親戚に扶養の意思がないと判断されたときも受給可能です。

物件や自動車などの資産を持っていないこと

生活保護を受給できる条件の2つ目は、資産を持っていないことです。

資産には以下のようなものが該当します。

  • 預貯金
  • 使っていない土地や家屋
  • 自動車やバイク
  • 貴金属
  • 必要以上に所有しているスマホ・パソコン
  • 債券などの有価証券

自宅に資産価値のあるものが1つでもあると、生活保護の申請が難しくなることを覚えておきましょう。

もし資産を所有している場合は、売却して生活費に充てなければなりません。

これから生活保護の申請を予定している方は、資産の売却手続きを始めておくと安心です。

自動車は障害がある方や地方住みの方の通勤・通院に必要とみなされた場合に限り、処分を免除される可能性があります。

また、10万円程度までの預貯金やローンを払い終わった住宅も、所有が認められることが多いので覚えておきましょう。

病気やケガで働けないこと

病気やケガ、あるいは障害を負って働けなくなった場合も、生活保護受給の対象となります。

うつ病やパニック障害といった精神疾患で働けなくなった場合も、生活保護費の受給が可能です。

病気やケガで働けなくなった際には、傷病手当や障害年金、失業手当などが優先されます。

傷病手当などの制度を利用してそれでも最低生活費を下回るときは、生活保護の申請を検討してみてください。

受給条件にある「最低生活費」とは?

受給条件にある「最低生活費」とは?

最低生活費とは健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な費用であり、厚生労働省が毎年算定しています。

以下に、最低生活費の一例をまとめました。

  • 生活費
  • 住宅費
  • 教育費
  • 介護費
  • 医療費

最低生活費は年齢や家族構成、地域によって異なります。

生活保護で受給できる生活保護費(最低生活費)について、令和5年10月の「生活保護基準」を元にした事例を紹介するので、参考にしてみてください。

ケース①静岡県浜松市に住む40代男性

生活扶助 66,940円
住宅扶助 40,900円
合計 107,840円

ケース②神奈川県横浜市に住む70代高齢者夫婦

生活扶助 119,916円
住宅扶助 53,700円
合計 173,616円

ケース③東京都港区に住む20代女性と小学生の母子家庭

生活扶助 121,967円
母子世帯加算 18,800円
児童養育加算 10,190円
住宅扶助 53,700円
教育扶助 2,600円
合計 207,257円

自分が受給できる生活保護費について、少しはイメージできたでしょうか。

生活保護費の算出は家族構成や年齢などによって異なりますので、気になる方は厚生労働省のホームページから計算してみてください。

引用元:厚生労働省 生活保護制度, 厚生労働省 級地区分, 厚生労働省 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和5年10月)

生活保護を受けるデメリット7つ

生活保護を受けるデメリット7つ

生活保護を受けるためには、デメリットも存在します。

  1. 資産や所有物に制限がかかること
  2. クレジットカードを作れないこと
  3. ローンを組めなくなること
  4. 旅行などの贅沢ができないこと
  5. 家族や親戚に連絡されること
  6. 定期的にケースワーカーと面談があること
  7. 社会復帰が難しくなること

生活保護を受けるデメリットを7つお伝えしますので、よく確認したうえで申請を行いましょう。

①資産や所有物に制限がかかること

生活保護を受けるデメリットの一つ目は、資産や所有物を保有できないことです。

金銭的な価値のある資産や所有物は、生活保護を申請する際に売却して生活費に充てる必要があります。

そのため、車好きでお気に入りのスポーツカーに乗っていたとしても、手放さないといけないので注意しましょう。

また、資産に変動があったときは必ず申告を行い、生活保護費の調整を受けなければなりません。

届出は生活保護受給者の義務であり、生活保護法61条で定められています。

②クレジットカードを作れないこと

法律上はクレジットカードを作れない訳ではありませんが、支払い能力が低いとみなされます。

したがって、クレジットカードの審査に通りにくいことを覚えておきましょう。

仮にクレジットカードを作成しても、リボ払いや分割払いは借金とみなされるので注意が必要です。

ケースワーカーからは基本的には現金払い、クレジットカード利用時は一括払いを指導されます。

ケースワーカーとは、生活保護者の相談や支援を行う人のことです。

③ローンを組めなくなること

デメリットの3つ目は、ローンを組めなくなることです。

借り入れはできるのですが借りたお金は収入とみなされるため、生活保護が取り消される可能性があります。

生活保護は受給者の最低限の生活を保障して、自立を支援するための制度です。

受給費をローンの返済に充てることは禁止されているため、お金の使い方は十分に注意しましょう。

④旅行などの贅沢ができないこと

旅行やブランド品、マイカーは贅沢とみなされる可能性が高いです。

遊び目的の旅行は生活保護費の余剰分から捻出しますが、届出が必要なうえケースワーカーから旅行目的を聞かれるので注意しましょう。

特に海外旅行は大きな出費となるため、旅行費用が収入がある状態と判断されて受給額の返還を求められることもあります。

なお、冠婚葬祭やお墓参り、公的機関が主催する文化・スポーツ大会への参加は問題ない場合が多いので、覚えておきましょう。

⑤家族や親戚に連絡されること

担当者から家族や親戚に連絡されることを、デメリットに感じる方は多いかもしれません。

担当者が親族に連絡をする理由は、申請者を扶助できないか確認するためです。

人によっては「親族に知られたくない」「恥ずかしい」という気持ちを抱くかもしれません。

⑥定期的にケースワーカーと面談があること

ケースワーカーの定期的、あるいは抜き打ちの訪問調査をデメリットに感じるケースもあります。

訪問調査では以下の内容を確認することが一般的です。

  • 無駄遣いをしていないか
  • 給与明細や預金通帳
  • 生活保護費の用途について

プライバシーな面を見られるのはデメリットですが、調査に応じないと生活保護費の受給が打ち切られる可能性があります。

訪問調査のタイミングは受給者の状況によって異なりますが、初めは月に1度くらいのペースが多いです。

なお、受給者が一人暮らしの高齢者の場合は、訪問頻度が高くなる傾向にあります。

⑦社会復帰が難しくなること

生活保護を受けるデメリットの7つ目は、社会復帰の難易度が上がることです。

生活保護だけで生活が成り立ってしまうと、環境に慣れ過ぎたり会社で働くのが怖くなったりすることが考えられます。

高齢者の場合は働かなくても良い場合がありますが、若年層の方は生活保護期間が長くなりすぎないように注意しましょう。

受給にあたっての確認ポイントは?デメリット以外も知っておこう

受給にあたっての確認ポイントは?デメリット以外も知っておこう

生活保護費の受給には、デメリット以外にも知っておきたいポイントがあります。

生活に直接関係しますので、目を通しておくと安心です。

マイナンバーカードは作れる?

生活保護費を受給していても、マイナンバーカードは作れます。

マイナンバーカードは一般的な使い方と同様に、マイナンバーの確認や身分証として利用可能です。

また、厚生労働省は2023年10月に、2024年3月から指定医療機関での受診にマイナンバーカードを使えるようにする、と公表しています。

医療が無償提供される?

生活保護受給者には、医療自己負担はありません。

なぜならば、医療扶助として医療費が支給されるからです。

一般的に、精神疾患を患うと、患者の入院期間が長期化しやすい傾向にあります。

そのため、世帯に長期入院する患者がいる場合は「世帯分離」が実施されることが多いです。

世帯分離とは入院患者だけが生活保護を受けるようにして、他の家族は保護を受けずに生活できるように家族間で世帯を分けることを意味します。

将来は生活保護を受けずに自立したいと考えている方へ

将来は生活保護を受けずに自立したいと考えている方へ

将来は生活保護を受けずに、自立した生活を送りたいと考える方も多いでしょう。

厚生労働省では生活保護受給者の自立を目的とした、自立支援プログラムを導入しています。

自立支援プログラムは「日常生活自立」「社会生活自立」「経済的自立」と、3つの側面から自立を促すことが目的です。

生活を安定させて、昔のように少しでも自由な生活を送りたい方は「生業扶助」を活用してみてください。

生業扶助とは、仕事に必要な技能・資格を習得するための費用を援助してもらえる制度です。

また「就労自立給付金」という、生活保護を脱却した人に支給する、お祝い金のような制度もあります。

「生業扶助」で仕事に必要な技能・資格を習得し、「就労自立給付金」で生活の安定感を加速させましょう。

すぐに就労するのが難しいという方は、ボランティア活動や就労体験から徐々に慣れていくのもおすすめです。

記事まとめ:デメリットを理解した上で、申請するか考えよう

記事まとめ:デメリットを理解した上で、申請するか考えよう

最後に、もう一度生活保護を受けるデメリットを確認しましょう。

  1. 資産や所有物に制限がかかること
  2. クレジットカードを作れないこと
  3. ローンを組めなくなること
  4. 旅行などの贅沢ができないこと
  5. 家族や親戚に連絡されること
  6. 定期的にケースワーカーと面談があること
  7. 社会復帰が難しくなること

デメリットに耐えられないという方は、親族から支援してもらえないかや給付金で解決できないかなど、再度検討してみることおすすめします。

実際に生活保護を利用される方は、自立するための支援も整っていることを忘れないようにしましょう。

監修者プロフィール
菱村真比古
菱村真比古
ファイナンシャルプランナー
10種の金融資格と中高の教員免許を持つ異色のファイナンシャルプランナー。NISA、住宅ローン、社会保障制度などが複雑に絡み合うライフプランを明快シンプルに紐解きます。中でも《菱村式老後資金計算法》は将来に不安を抱える子育て世代に好評。生命保険と金融サービス業界の最高水準として世界中で認知されている独立組織MDRTの正会員。『お金のエキスパート』として講演や営業マンの育成など幅広い領域で活動している。

【資格情報】
・住宅金融普及協会 住宅ローンアドバイザー
・日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー
・生命保険協会認定トータルライフコンサルタント
・CCAA クレジットカードアドバイザー
・相続診断協会認定 相続診断士 
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