平均の入院費用相場や、入院費用を払えないと起こること、具体的な対処方法などを解説
ケガや病気が原因で入院した際、治療内容や入院日数によっては、入院費用が高額になる場合があります。
もしも退院するときに入院費用が払えない場合いったいどうなってしまうか、不安な方も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、平均の入院費用相場を解説するとともに、入院費用を払えないと起こること、入院費用を払えないときの対処方法などを紹介していきます。
平均入院費用は1日約2.1万円!払えないとどうなる?
公益財産法人生命保険文化センターによると、病気やケガなどで入院することになった場合、自己負担額の平均は1日あたり20,700円となっています。
参照:1日あたりの入院費用(自己負担額)はどれくらい?|公益財産法人生命保険文化センター
さらに、入金日数が平均で17.7日のため、一度入院すると20,700円×17.7=36,6390円の入院費用がかかります。
参照:2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行) 第Ⅱ章 医療保障 直近の入院時の入院日数|公益財産法人生命保険文化センター
思ったよりも高いと思った方もいらっしゃると思いますが、どのような内訳でこれだけの金額がかかるのでしょうか?
また、もしも入院費用を払えないとどうなってしまうのでしょうか?これらの疑問について解説していきます。
入院費用の内訳
入院費用の主な内訳は以下の通りです。
- 治療費、入院基本料(公的医療保険の対象、自己負担割合は3割)
- 差額ベッド代、食事代、日用品・消耗品費、先進医療費、自由診療費(保険適用外、全額自己負担)
このように、入院費用には様々な料金が含まれており、結果として1日当たりの負担金額は20,700円となります。
なお、この金額はあくまで平均なので、治療内容や入院日数によってはさらに高額になる場合もあります。
入院費用を払えないと起こること3選
病院から支払いの督促をされる
入院費用の支払いが滞ると、まず病院から支払いの督促を受けることになります。病院の事務担当者から電話や書面で連絡が入り、支払いを促されるでしょう。
ここで誠実に対応し、分割払いや支払い期限の延長など、解決策を相談すれば柔軟に対応してくれる可能性があります。
しかし、対応が誠実でなかったりいつになっても払えない場合は、次のステップに進んでしまう可能性が高くなります。
身元保証人に連絡・請求される
病院に入院する際、必ず身元保証人を設定するため、患者本人がお金を払えない場合には保証人に支払いを求めてきます。
患者本人がお金を払えない場合には、保証人になってくれた人に迷惑が掛かってしまうのです。
弁護士・裁判所から連絡が来る
患者本人と保証人の両方に督促しても支払いがない場合、病院は弁護士に依頼しお金を回収しようとします。
まず、弁護士から連絡があり、支払いの催告書が送付されてくる場合が多いです。
それも無視し続けていると民事訴訟を起こされてしまい、裁判所から訴状が送られてきます。
訴訟に発展すると強制執行の対象となり、預金や給与を差し押さえられる場合があります。
入院費用を払えないときの対処法5選
入院費用を払えない時にはいったいどうすればよいのでしょうか?考えられる対処方法として以下の5つが挙げられます。
- 病院に分割払いを相談する
- クレジットカードで支払う
- ローンを利用する
- 公的制度を活用する
それぞれの対処方法について詳しく説明していきます。
病院に分割払いを相談する
まずは病院に分割払いができないか相談してみましょう。病院ではソーシャルワーカーという、治療以外の相談に乗ってくれる人が在籍している場合が多いです。
ソーシャルワーカーはお金の相談にも乗ってくれるので、相談することで入院費用が払えない場合の対処方法についてのアドバイスを受けられます。
相談することで、分割払いに対応してもらえる可能性も高いので、払う意思はあるが手持ちがないと率直に伝えてみるとよいでしょう。
状況に合わせて支払い期間や回数などを柔軟に設定できる可能性があるので、無理のないプランを立てるようにしましょう。
クレジットカードで支払う
病院の中には、入院費用のクレジットカード払いに対応しているところもあります。こういった病院であれば、現金がなくともクレジットカードで入院費用を支払えます。
クレジットカードで支払えば、請求を分割払いにするなどの対応ができ、入院費用を一括で支払えない場合でも、対応しやすいです。
また、クレジットカードで支払った場合でも、医療費控除の対象になるので支払った入院費用は節税に利用できます。
ローンを利用する
医療ローンやフリーローンなどのローンを利用して、入院費用を準備する方法もあります。
医療ローンは医療費専用のローンで、基本的に病院と提携する金融機関から借入します。医療ローンは医療費の支払いのみに利用でき、保険適用外の治療にも使えるメリットがあります。
一方、フリーローンは追加借入ができない、使い道が自由なローンです。入院費用の支払いに必要な金額を一括で借入し、それ以降は返済するのみなので、返済計画を立てやすいのが大きなメリットです。
公的制度を活用する
入院費用を払えない場合は、公的制度を活用して負担を軽減することも検討してみましょう。以下は代表的な制度とその概要です。
制度名 | 概要 |
---|---|
限度額適用認定証 | 医療機関の窓口で支払う費用を自己負担限度額までに抑えられる |
傷病手当金制度 | 病気やケガで会社を休んだ際の収入を補填してもらえる |
生活保護制度 | 生活困窮者に最低限度の生活を保障する制度で、医療費の支払いにも利用できる |
借入やクレジットカードのように利息は発生しないため、金銭的な負担なく入院費用をまかなえます。
一定額以上の治療費は高額療養費制度で還付を受けられる
高額療養費制度は、医療費の負担が大きくなりすぎないように設けられた制度です。
入院費用が一定額以上になった場合、加入している医療保険から支給される仕組みが高額療養費制度です。
ここでは、高額療養費制度について詳しく見ていきましょう。
高額医療費貸付制度で還付までの一時借入も可能
高額医療費制度は一旦自費で医療費を支払い、数か月後に払いすぎた分が還付される制度です。つまり、入院費用がどれだけ高額であっても、一時的には自分で全額支払う必要があります。
しかし、高額医療費貸付制度を使えば、高額療養費の支給見込み額の8割程度を無利子で借入可能です。
当面の支払いができない状態であれば、加入している健康保険組合に相談し、融資を受けられないか相談してみるとよいでしょう。
多数該当に該当すれば自己負担額がさらに引き下がる
多数該当とは、同一世帯で、12か月の間に3回以上高額療養費が支給された場合、4回目以降からはさらに自己負担限度額が引き下がる制度です。
たとえば、標準報酬月額が26万円以下の場合、通常の自己負担限度額は57,600円です。しかし、過去12か月間で3回自己負担限度額を超える医療費がかかった(高額療養費の支給を受けた)場合、4回目以降は44,400円まで下がります。
ただし、多数該当が適用されるためには、同じ健康保険を使う必要があります。会社を辞めて健康保険から国民健康保険に変わった場合などは、高額療養費の回数は引き継がれません。
多数該当は入院費用を抑えられる非常に優れた制度なので、注意点を把握したうえで上手に使いたいところです。
参照:高額な医療費を支払ったとき(高額療養費) 高額の負担がすでに年3月以上ある場合の4月目以降(多数該当高額療養費)|全国健康保険協会
マイナ保険証もしくは限度額適用認定証で支払額を最初から減らせる
高額療養費制度は一旦医療費を自費で支払う必要があるので、手元にお金がないときには、入院費用が払えずに困る場合があります。
しかし、マイナ保険証もしくは限度額適用認定証の用意があれば、はじめから自己負担を抑えられます。
- 限度額適用認定証を病院や薬局の窓口で提示する:協会けんぽに認定証の交付を事前に申請しておき、受け取った認定証を提示する
- マイナ保険証を提示する:健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカードを窓口で提示し、「限度額情報の表示」に同意する
上記のいずれかの方法を使うと、窓口で支払う時点から負担金額を減らせます。
特に、マイナ保険証を提示する方法のほうが手間が少ないのでおすすめです。健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカードを持っている場合は、提示するとよいでしょう。
参照:マイナ保険証または限度額適用認定証をご利用ください|全国健康保険協会
入院時に押さえておきたいその他の制度
高額療養費制度以外にも、入院費用の自己負担額を抑えるのに役立つ制度が存在します。
- 各健康保険組合の付加給付制度
- 確定申告の医療費控除
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
各健康保険組合の付加給付制度
付加給付制度とは、医療費が一定金額以上になった際に、追加給付金が支払われる制度のことです。
付加給付制度が使えると、自己負担を抑えられるので、制度が存在する場合はぜひ利用したいところです。
健康保険組合によって付加給付制度が存在するかどうかが異なるので、加入中の組合に問い合わせてみるとよいでしょう。
確定申告の医療費控除
医療費控除とは、1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が10万円、または所得金額の5%を超えた場合、確定申告で控除を受けられる制度のことです。
以下の計算式で出た金額を医療費控除として、所得金額から差し引き、節税することができます。
医療費控除額 = 年間の医療費合計額 – 保険などで補填された金額 – 10万円
たとえば、1年間で300万円の医療費を支払ったケースを考えてみましょう。このうち270万円が健康保険から支払われたとします。
すると、医療費控除額の計算は、以下のようになります。
医療費控除額 = 300万円 – 270万円 – 10万円 = 20万円
確定申告の際にはこの分を控除できるため、その分納める税金が安くなります。
医療費控除の最高額は200万円なので、医療費が高額な場合でも、節税に活用しやすくなっています。
医療費控除を受けるには、「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付する必要があり、明細書は5年間保存する必要があるため、明細書は捨てずにとっておきましょう。
出産での入院の場合は「出産手当一時金」を使える
出産で入院しており、入院費用を払えない場合には、「出産手当一時金」を使えます。
令和5年4月1日以降に出産する場合、1児につき48.8万円もしくは50万円が支給されます。
妊娠4か月(85日)以上で出産をしていれば、早産や流産、人工中絶の場合にも支給対象になるので、必ず申請したいところです。
出産手当一時金は協会けんぽに、申請書類と必要書類を提出することで受け取れます。提出書類を揃えたうえで手続きするようにしてください。
ほとんどの病院では申請方法や必要書類の説明を受けられるので、説明に従って手続きすれば一時金を受け取れます。
また、入院費用の支払いまでに出産育児一時金を受け取れず、入院費用を支払えない場合は、出産費貸付制度を利用できます。
出産育児一時金が支給されるまでの間、出産育児一時金の8割相当額を限度に無利子で借りられるので、こちらを利用することも可能です。
自治体が独自の医療費助成制度を実施している場合がある
自治体が独自の医療費助成制度を実施しており、入院費用を払えない場合の助けになることがあります。
一例として、以下の都道府県では子ども医療費に対する医療費の助成を行っています。
地方公共団体 | 助成内容 |
---|---|
横浜市 | 0歳~中学3年生の医療費を助成 |
東京都 | 6歳までの乳幼児の各種医療保険の自己負担分を助成 |
大阪市 | 0歳から18歳の子供の医療費を助成 |
名古屋市 | 18歳までの子供の医療費の自己負担額を助成 |
参照:小児医療費助成|横浜市
受け取れる金額は都道府県によって異なりますが、適切に申請することで毎月の治療費の一部分もしくは全額の助成を受けられる可能性があります。
記事まとめ
入院費用の平均は1日約2.1万円、平均入院日数は17.7日なので、一度の入院で約36万円の費用がかかります。
もしも支払いができない場合、病院からの督促や身元保証人への請求、さらには法的措置を取られる可能性もあります。
しかし、あまり不安になる必要はありません。病院に分割払いの相談をしたり、ローンを活用したりすることで支払いに対処する手段はあるからです。
また、高額療養費制度などの公的制度も負担軽減に役立つので、ぜひ確認してみてください。
入院費用は高額になりがちなので、払えずに悩んでしまいがちです。しかし、この記事で解説したようにさまざまな対応方法があるので、上手に活用していきましょう。