投資信託
投資信託の利回りとは?購入・運用前に知りたい計算方法や商品の選び方
投資信託の利回りとは?購入・運用前に知りたい計算方法や商品の選び方
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投資信託における利回りとは、資産を運用した結果、得られた利益を示す指標

投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家であるファンドマネージャーが株式や債券、不動産などに投資し、運用を代行する商品です。

この投資信託の購入をお考えの方にとって、「利回り」という言葉は馴染みがないかもしれません。

しかし、利回りが投資信託にどのような影響を与えるかを理解することで、より効率的な投資判断を行うことができるようになります。

この記事では、利回りについての理解を深めるため、投資信託における利回りの意味や、混合されやすい用語の解説、計算方法などについて解説していきます。

投資信託の「利回り」とは

投資信託の「利回り」とは

投資信託における利回りとは、資産を運用した結果、得られた利益を示す指標です。

具体的には、投資金額に対する利子も含めた年単位の収益の割合として定義されています。

なお、投資信託で得られる収益の種類として以下3つが挙げられます。

  1. 売却益(キャピタルゲイン)
    投資信託を売却(換金)した際に生じる損益
  2. 分配金(インカムゲイン)
    運用の成果に応じて、投資家に分配・還元される利益
  3. 償還益(しょうかんえき)
    あらかじめ決められている償還日を迎えたときに投資家へ戻す償還金によってと購入価格との差額

通常、利回りは1年間に得られた収益の割合を示すもので、「年利回り(年利)」とも呼ばれます。

投資信託を選ぶ際には、この利回りが重要な判断基準となります。

収益の構成要素を理解し、分配金や売却損益を考慮に入れることで、最適な投資判断をすることができるでしょう。

利回りの計算方法

利回りの計算方法

投資信託の利回りは、一般的に次のような式で計算されます。

利回り(%)=(キャピタルゲイン+インカムゲイン)÷ 運用年数 ÷ 投資金額 × 100

上記は、手数料や税金を除いて簡易的に利回りを計算する方法であり、実際の利回りは手数料や税金も考慮しなければなりません。

ウェブサイトに投資信託ごとの利回りを記載している金融機関もありますので、購入をお考えの方はそちらを確認してみましょう。

平均利回り

投資信託の平均利回りは、年間総収益率や年換算収益率などと呼ばれることもあり、投資金額に対する1年間当たりの収益(キャピタルゲイン+インカムゲイン)の割合を指します。

過去のデータをもとに、将来の成績を予測する上で有用になります。

単利の平均利回りの計算方法は以下の通りです。

なお、単利とは、最初の元金だけを対象にして利息がいくらであるかを計算する方法です。

単利の平均利回りの計算方法

単利の平均利回り(%)=(キャピタルゲイン+インカムゲイン) ÷ 投資元本 × 100

目標利回り

目標利回りとは、投資家が「いつまでに」「いくら」欲しいのか、という自身の目標達成のために、逆算して設定する利回りの目標を指します。

金融庁が公表している資産運用シミュレーションを使用し、「積立期間」と「目標金額」を設定した上で、目標利回りと毎月の積立額を確認することができます。

例えば、上記「現在30才で、30年後の60才までに、老後資金が2000万円ほしい」という目標を立てた場合、毎月の積立金額と目標利回りは下記のようになります。

積立期間は30年間、目標金額が2000万円の場合の3つのプラン

毎月積立金額 目標利回り
プラン1 34,321円 3%
プラン2 28,816円 4%
プラン3 24,031円 5%

参考:資産運用シミュレーション : 金融庁

トータルリターンや利率、騰落率との違い

トータルリターンや利率、騰落率との違い

利回りと混同されがちな用語はいくつかありますが、ここでは、トータルリターン、利率、騰落率(とうらくりつ)の意味と、利回りとの違いを解説していきます。

いずれも投資信託を購入する際に考慮すべき重要なキーワードですので、しっかりと覚えておきましょう。

トータルリターン

トータルリターンとは、投資した人が解約した時に実際に受け取る、配当金や利払いなども含まれた金額を表したものです。

投資を初めた時から解約するまで(現時点まで)の総合利益と考えましょう。

利回りが割合(%)で示されるのに対し、トータルリターンは金額(円)で示されるという違いがあります。

トータルリターンの計算方法は以下の通りです。

トータルリターンの計算方法

トータルリターン=(評価金額+累計受取分配金額(税引後)+累計売付金額)-累計買付金額(税込買付手数料込み)

評価金額 計算基準日の基準価額により算出した計算基準日時点の保有残高の評価金額
累計受取分配金額 新たに取得したときから計算基準日までに受け取った累計の分配金額
累計売付金額 新たに取得したときから計算基準日までの、一部売却した場合における累計の売却金額
累計買付金額 新たに取得したときから計算基準日までの、累計の買付金額

利率

利率はクーポンとも呼ばれ、投資金額(元本)に対する利息(利子)の割合のことです。

投資信託における利回りが、売却益や利息、分配金などを含めた総合的な収益の割合を指すのに対して、利率は利息のみの割合となります。

利率の計算方法は以下の通りです。

利率の計算方法

利率(%)=利息 ÷ 額面金額 × 100

騰落率(とうらくりつ)

騰落率(とうらくりつ)は、基準価額の変動率を示す指標です。

基準価額は投資信託の1口あたりの価格を表しており、この基準価額は資産価格や為替の変動、分配金、運用コストなど様々な要因によって変動します。

騰落率の計算方法は以下の通りです。

なお正の値ならば基準価額の上昇、負の値ならば下落を示します。

騰落率の計算方法

騰落率(%)=(当日の基準価額-前日の基準価額)÷ 前日の基準価額 × 100

利回りだけじゃない!投資信託の選び方のポイント

利回りだけじゃない!投資信託の選び方のポイント

ここまで、投資信託における利回りについて解説してきました。

利回りは「いつまでに」「いくら」欲しいのか、という投資信託の目標達成のために重要な要素です。

ただし、投資信託を購入する際には、利回り以外にも様々なポイントを比較し、自身に合うものを見極めることが重要です。

ここでは、利回り以外にも、投資信託を選ぶ際に確認すべきポイントについて紹介していきます。

コスト

投資信託は、買ったらその購入金額のみで終わりではなく、運用中や売却時に手数料がかかります。

コストの種類 概要
購入時手数料 投資信託の購入時に販売会社に支払う手数料です。購入代金に所定の料率をかけた金額を、購入代金とは別に支払います。
信託報酬 投資信託を保有している間にかかるコストで、運用管理費用とも呼ばれます。保有額に所定の料率をかけた金額を、販売会社・運用会社・受託会社へ支払います。
信託財産留保額 解約代金に所定の料率をかけた金額を、投資信託の解約時に支払います。

コストは、投資信託を購入する前に渡される目論見書に記載されています。またオンライン上で目論見書を確認できる場合もあります。

コストが高いうえに基準価額が購入時よりも下がってしまえば、損が発生してしまいますよね。

そのため、あらかじめ目論見書でコストを確認しおき、できる限り抑えられたものを選ぶことをおすすめします。

運用スタイル

投資信託の運用スタイルはさまざまです。

例えば、特定の指数(ベンチマーク)に連動した投資成果を目指す「インデックス運用」と、積極的に市場予測を立てて超過収益をねらう「アクティブ運用」という2つのスタイルがあります。

インデックス運用は、運用にかかる費用がアクティブ運用よりも低くなることが一般的で、運用期間が長期にわたるとその金額の差が大きくなります。

しかし、アクティブ運用で銘柄の選択がうまくいった場合、インデックス運用よりも高い投資成果がもたらされる場合があります。

なお、どちらにもメリット、デメリットが存在するため、一概にどちらの運用スタイルが良いということは判断できません。

それぞれの運用スタイルについて理解を深め、自分にあった投資信託を選択することが重要です。

基準価格と騰落率

日々変動する基準価格を確認する方法もあります。

基準価額を見れば投資信託の一口あたりの購入価格を知ることができるため、安いものを購入すれば上がっていく可能性がありますが、もちろん下がっていく可能性もあります。

さらに、他と比較して安いのか高いのかを断言することは難しいです。

そのため、購入したいと考えている投資信託の好不調を理解するためには、基準価額の変動の実績を示す指標である、騰落率を確認することが重要になります。

ただし、騰落率が良い投資信託が今後も好調だとは限りません。

「最近上昇し始めたから今後も引き続き上昇するかもしれない」「今は下がっているけどそろそろ回復しそう」などの予想が必要になります。

純資産総額

投資信託における純資産総額とは、わかりやすくいえばファンドの規模です。

投資信託の全ての資産である「総資産額」から、信託報酬などのコストである「総負債額」を引いた差額のことを言います。

純資産総額が大きい方が良いのか、小さい方が良いのかについては断定することができません。

純資産総額が大きければ大きいほど、コストを抑えることは可能です。

しかし運用資産が増えてくると、投資先を厳選することが難しくなります。

その点、純資産総額が小さければ、運用資産も小さくなり、急成長が見込める投資先を厳選して集中投資をすることができます。

結果として、運用成績の向上を狙いやすいケースもあるのです。

上記の通り、純資産総額も投資信託を購入する際の一つの大きな指標となりますが、大小のどちらを選択するかは、ご自身の目標や目的に焦点を当てて考えるのが良いと思います。

記事まとめ

記事まとめ

この記事では、投資信託における利回りの意味や、計算方法について解説しました。

利回りとは、資産を運用した結果、得られた利益を示す指標です。一般的に、利回りは1年間に得られた収益の割合を示します。

これは投資信託を購入する際に確認すべき非常に重要な指標であり、より効果的にリターンを得るためのヒントとなります。

ただし、ハイリターンにはハイリスクが伴います。

単に平均利回りが高い投資信託を選ぶのではなく、コスト、騰落率や純資産総額の指標を組み合わせて判断することが重要です。

監修者プロフィール
小林裕
小林裕
一般社団法人証券相続普及協会 代表理事
大学卒業後、東証一部上場の証券会社に入社。
個人向けの資産運用コンサルティングを中心に活動し、新人賞、社長優秀賞などを数多く受賞。
退職後、資産運用だけでは本当の解決ができないという思いから、2020年に一般社団法人証券相続普及協会を設立、代表理事に就任。
終活カウンセラー1級や上級相続診断士の資格も取得し、現在はお客様の大切な資産を「ふやす、まもる、つなぐ」をモットーに活動している。
【代表著書】
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※2024年9月30日調べ
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