投資信託の売り時は市場の変化や、投資家それぞれの今の状況や将来の目標によって異なるため、個別に検討が必要
現在、多くの方が資産形成の一環として投資信託を保有しています。
中には売り時に悩まれている方もいるでしょう。
投資信託の売り時は「いつ」とは断言できず、市場の変化や、投資家それぞれの今の状況や将来の目標によって異なるため、個別に検討が必要です。
この記事では、あなたにとって適切な投資信託の売り時について、その判断基準を解説します。
投資信託は人によって異なる目的で運用されるため、自身のライフプランやリスク許容度を考慮した売り時を見極めることが重要です。
投資信託はいつでも売却できる
前提として、投資信託のほとんどはいつでも売却して換金することができます。
運用期間が決められているものもありますが、その途中で投資信託を手放すことも可能です。
なお、投資信託の中には、効率的かつ計画的な運用を促進するための「クローズド期間」が設けられているものもあります。
このクローズド期間が設けられている投資信託の場合、その期間中は解約ができません。
また、投資信託の売却方法には、解約と買取請求の2種類があります。
投資信託の換金方法は「解約」と「買取請求」の2種類
「解約」とは、投資信託の販売会社を通して投資家が運用会社に信託契約の解除を請求することによって換金する方法を言います。
一方「買取請求」は、 投資家が販売会社に、投資信託の受益証券の買取を請求することによって換金する方法です。
いずれも譲渡益に対して、申告分離課税の20.315%(所得税15.315%、 住民税5%)の税金が課されます。
なお税制改正により、解約および買取請求はいずれも、譲渡益が譲渡所得として取扱われることとなり、税制上の違いはなくなっています。
譲渡益は給与以外の譲渡所得となるため、確定申告は原則必要ですが、取引口座が特定口座の源泉徴収ありの場合は確定申告が不要です。
売却(換金)方法 | 内容 | 課税 |
---|---|---|
解約 | 信託契約の一部を解約して信託財産の返還を請求する | 申告分離課税: 譲渡益に対して20.315% (所得税15.315% 住民税5%) |
買取請求 | 販売会社に投資信託の受益権の買取を請求する |
現在はどちらの換金方法を選択しても受取金額の税制上の違いがないため、「解約」のみの受け付けとなっている販売会社もあります。
投資信託の売り時はこのタイミング!
いつでも売却できる投資信託ですが、売り時はいつなのでしょうか?
結論から言うと、投資信託は将来の値動きがわからないもののため、いつ売却したら最大の利益が得られる、ということを断言することはできません。
しかし「買ったはいいけどいつ売ったらいいかわからない」という方や「早めに売却して利益を確定した方がいいのかな?」「損失を出さずに売却したいけどタイミングに困る」とお悩みの方も多くいます。
そんな方に向けて、ここでは、投資信託の売り時の考え方について解説していきます。
一般的には、上記のようなときに、投資信託の売却をお考えになることをおすすめします。
以下でそれぞれ詳しく解説していきます。
お金を使いたいと思っていた時期が到来したとき
結婚や出産、住宅や車の購入、介護など、多くの方はお金を使いたいと思うライフイベントを見据えて資産形成を進めています。
投資信託の購入時には、あらかじめご自身のライフプランに合った売り時を考え、いつまでにどのような目的で資産を形成したいのかを決めておくと良いでしょう。
例えば「10年後、車を購入するまでに」などと決めておけば、その時期が到来したときに迷わず投資信託を売却することができます。
目標金額に達したとき
売り時に迷わないよう、上記の「いつまでに」「どのような目的で」に加えて決めておいた方がいいこととして、目標金額が挙げられます。
10年後、車を購入するまでに「300万円」用意したい、という目標だった場合、投資を始めてから10年経っていなくても、目標金額に達していれば車の購入を考えることができます。
目標金額に達したこのタイミングで投資信託を売却するのもひとつの手です。
さらにこのまま投資信託を保有し続け、車を購入するという目的を実現できるより現実的なタイミングが来たら、そこで売却するという方法も良いと思います。
より利益が見込める投資先を見つけたとき
現在の投資対象よりも利益が見込める投資先を見つけた場合、そこを売り時とする方法もあります。
投資のトレンドや、社会や情勢、企業の経営状況は常に変化していくものです。
「より効果的な投資を望んでいるから、現在の投資信託を売却して、もっとプラスになる投資信託を買いたい」と思ったときを売り時と定めるのもひとつの方法です。
自分のリスク許容度が変化したとき
投資におけるリスクとは収益のブレのことであり、どれくらいまでこの収益のマイナスを受け入れることができるか、という度合いをリスク許容度といいます。
リスク許容度は、以下のような要素で決まるものです。
- 年齢
- 家族構成
- 資産
- 年収
- 性格
- 経験
投資信託は、長い時間をかけて保有したり、コツコツと積立を行ってこそ効果があります。
そのため、生活に影響が出ない範囲の金額で運用できるか、どのくらい時間をかけて積立をできるか、など、ご自身の状況に最適な投資信託を選ぶことが重要です。
例えば「20代、単身世帯、年収400万円」の方が30代になったとき、「年収は上がったけど家族ができたから、投資信託の運用にかかる手数料を支払うと生活に影響が出る」など、ライフステージの変化によってリスク許容度も変わります。
このようなタイミングを投資信託の売り時と捉えて手放す、もしくは見直すという選択も大切です。
売り時で失敗しないためのポイント
「値下がりしているから、今すぐ売った方がいいかも」「早く利益を確定させたい」など、売り時に迷った結果、売却を急ぎ、あとで後悔してしまう人も多くいます。
そのため、投資信託の売却は慎重に判断することが重要です。
売り時での失敗を避けるために、以下のポイントを留意してみましょう。
長期的な視点を持つ、値下がりしてもすぐに売らない
投資信託は基本的に中長期的な運用を前提としています。
市場は変動するものであり、一時的な価格の下落があっても、時間の経過とともに回復する可能性があるのです。
また、投資信託は分散投資を基本としています。
そのため、一つの銘柄が値下がりしても、他の銘柄がプラスになる可能性があります。ポートフォリオ全体のパフォーマンスを考慮することが大切です。
実際に、過度な損切りをして得るはずだった利益を逃し、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。
そのため、短期的な価格変動に振り回されず、冷静になって売り時を検討することが大切です。
一部だけ売却することも検討する
投資信託の一部を売却することで、運用成績が良好だった部分の利益を確定することができます。
それと同時に、ポートフォリオのバランスが変動してしまった場合、売却した資金を使ってポートフォリオをリバランスできます。
これによって、ポートフォリオを現在の市場状況や投資目標に適した形に保つことができます。
また利益を得た場合は、必ずその利益に対して税金が発生します。
そのため利益を確定させる場合、税金の影響も考慮することが重要です。一部だけを売却することで、繰越損失や税金の調整がしやすくなる可能性があります。
記事まとめ
この記事では、投資信託の売り時の考え方や売り時で失敗しないためのポイントを解説しました。
投資信託の売り時は慎重に検討するべきであり、冷静な判断が不可欠です。
ライフプランや目標金額、リスク許容度の変化を考慮し、ご自身にとって適切なタイミングを見極めましょう。