目論見書の読み方を理解して自分に合った投資信託を始めよう
株式投資をはじめとする資産運用は、これまで会社や一部の個人投資家のものでありました。
しかし、岸田政権により「所得倍増計画」が発表され、2024年には旧制度から更新された新NISAがスタートたことで、株式投資を始めるハードルは格段に低くなりました。
中でも、資産運用商品である投資信託は、少額から始められることに加え、プロに運用を任せられる手軽さから大きな注目を集めています。
本記事では、投資信託のファンド選びの重要な判断基準となる目論見書について、その読み方と概要について詳しく解説します。
投資信託の目論見書には2種類ある
そもそも、投資信託における目論見書とはどういったものでしょうか。
投資信託の目論見書には「交付目論見書」と「請求目論見書」の2種類がありますので、それぞれ説明します。
交付目論見書
交付目論見書とは、投資信託のファンドを購入する上で必要な重要事項が説明された書類のことを指します。
交付目論見書はどのファンドにも必ず作成されているものであり、購入を検討している投資家に対しての交付義務があるため、約款のような役割も果たしています。
金融庁により2024年秋ごろまでに電子交付とする動きがあり、投信を販売する証券会社などのホームページより閲覧することが可能です。
交付目論見書は投資を検討する際の重要な情報源となるため、必ず目を通すようにしましょう。
請求目論見書
前者はファンドの購入を検討している投資家全員に対して交付義務がありました。
一方、請求目論見書では投資家からの請求があった場合にのみ交付が義務付けられている書類です。
請求目論見書の記載事項は、ファンドの沿革や経理状況などであり、交付目論見書よりもさらに詳細な情報が記載されています。
交付目論見書の記載項目とその見方
投資信託の交付目論見書の具体的な記載項目は主に以下の4つがあります。
- ファンドの目的・特色
- 投資リスク
- 運用実績
- 手続き・手数料等
本章では、多くのネット証券(楽天証券・SBI証券など)で取り扱う投資信託商品「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」の交付目論見書を例にして記載項目の説明を行います。
投資信託説明書「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」|三菱UFJ国際投信ファンドの目的・特色
ファンドの目的では、投資の目的(資本の成長、定期的な収入の確保など)と、その目的を達成するための運用戦略が記載されています。
特色では、ファンドがどのような資産(株式、債券、REITなど)に投資するのか、どの地域やセクターに焦点を当て取引がされるのかが説明されます。
「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」において、ファンドの目的や特色は以下のように記載されています。
ファンドの目的 | S&P500指数(配当込み、円換算ベース)の値動きに連動する投資成果をめざします。 |
---|---|
ファンドの特色① | S&P500指数(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざして運用を行います。 |
ファンドの特色② | 主として対象インデックスに採用されている米国の株式に投資を行います。 |
ファンドの特色③ | 原則として、為替ヘッジは行いません。 |
投資リスク
投資リスクでは、投資信託における価格変動リスク、為替変動リスク、金利変動リスクなど、その投資信託商品がどういったリスクを持っているかが記載されています。
目論見書から読み取れる「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」の投資リスクには以下のようなものがあります。
価格変動リスク | 組入株式の価格の下落は、基準価額の下落要因となる可能性がある。 |
---|---|
為替変動リスク | 組入外貨建資産は、原則として為替ヘッジを行なわないため、為替変動の影響を大きく受ける。 |
信用リスク | 組入株式先の経営・財務状況が悪化し、外部評価の信用力が低下した場合、当該組入有価証券等の価格が下落することや、利払い・償還金の支払いが滞ることがある。 |
流動性リスク | 有価証券等を売却あるいは取得しようとする際に、十分な流動性の下での取引を行えない場合、市場実勢から期待される価格より不利な価格での取引となる可能性がある。 |
さらに、投資リスクとして代表的な資産クラス(TOPIX、先進国債など)との騰落率の比較がされた情報を用いて投資リスクが説明されています。
運用実績
運用実績では投資信託の過去の実績情報が記載されており、以下のような情報を確認できます。
- 基準価額・純資産の推移
- 分配の推移
- 主要な資産の状況
- 年間収益率の推移
「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」の目論見書では、設定日である2018年7月3日~から2023年4月28日までの各項目の推移情報を確認できます。
基準価格は2023年4月28日現在で19,670円、純資産は19,593億円であることが目論見書から読み取れます。
主要な資産の状況とは、投資先の株式をはじめとした銘柄のことを指しています。
「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」の株式投資比率TOPはApple社であり、純資産の7%の金額が投資されています。
また、あくまでも過去の実績であり、運用前の投資信託商品の目論見書には運用実績が記載されていません。
手続き・手数料等
手続き・手数料等の項目では投資信託商品の諸経費を確認できます。
具体的な内容は大まかに以下の通りです。
- 投資信託商品の購入単位
- 投資信託商品の売却単位
- 購入時手数料
- 運用管理費用(信託報酬)
- その他の費用・ 手数料
- 税金
- 総経費率
注意しておきたいポイントとして、投資信託の交付目論見書は運用会社が作成しているため、販売会社によって購入・売却単位が異なる場合があります。
したがって、購入・売却時にかかる手数料などは販売会社に確認することが必要です。
「eMAXISSlim米国株式(S&P500)」の目論見書から読み取れる手続き・手数料等は以下の通りです。
投資信託の購入・売却単位 | 販売会社に要問い合わせ |
---|---|
購入時手数料 | なし |
信託財産留保額 | なし |
運用管理費用 (信託報酬) |
日々の純資産総額に対して、年率0.09372%以内をかけた額 |
その他の費用・手数料 | ※以下全てファンドが負担 ・ファンドの監査費用 ・証券会社等に支払う手数料 ・海外の保管機関に支払われる費用 ・その他信託事務の処理にかかる諸費用等 |
税金 | 譲渡益に対して20.315%の額 |
総経費率 | 0.11% |
投資信託の購入・ 売却単位 |
販売会社に要問い合わせ |
---|---|
購入時手数料 | なし |
信託財産留保額 | なし |
運用管理費用 (信託報酬) |
日々の純資産総額に対して、年率0.09372%以内をかけた額 |
その他の費用・ 手数料 |
※以下全てファンドが負担 ・ファンドの監査費用 ・証券会社等に支払う手数料 ・海外の保管機関に支払われる費用 ・その他信託事務の処理にかかる諸費用等 |
税金 | 譲渡益に対して20.315%の額 |
総経費率 | 0.11% |
【一覧】目論見書を必ずチェックしておきたい内容とは
ここまで、投資信託の目論見書における具体的な記載内容について解説しました。
投資信託の目論見書は情報が簡素化され読み方も分かりやすくなりました。
しかしながら、項目や記載項目の種類が多いため、読んでいるうちに重要な部分がなにかわからなくなってしまう方も多いのではないでしょうか。
投資信託の目論見書の見方として、以下の一覧表を参考にチェックしましょう。
ファンドの目的・特色 | ・どんな目的が設定されているか ・投資対象先はどんなものか ・インデックスファンドかアクティブファンドのどちらか |
---|---|
投資リスク | ・基準価額が下落する要因にどんなリスクが挙げられているか |
運用実績 | ・基準価額や純資産はいくらか ・どんな銘柄に投資しているか ・長期的に安定して運用がされているか |
手続き・手数料等 | ・他の投資信託商品より信託報酬が割高ではないか ・購入時手数料や信託財産留保額はかかるか |
ファンドの目的・特色 | ・どんな目的が設定されているか ・投資対象先はどんなものか ・インデックスファンドかアクティブファンドのどちらか |
---|---|
投資リスク | ・基準価額が下落する要因にどんなリスクが挙げられているか |
運用実績 | ・基準価額や純資産はいくらか ・どんな銘柄に投資しているか ・長期的に安定して運用がされているか |
手続き・手数料等 | ・他の投資信託商品より信託報酬が割高ではないか ・購入時手数料や信託財産留保額はかかるか |
投資信託商品の選び方に困ったら「お金のプロ」に相談を
忙しくて投資信託の目論見書をじっくり読む時間が取れない方や、どうしてもどの投資信託商品を選ぶべきが判断に迷ってしまう方も多いかと思います。
そんな時は、「お金のプロ」であるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。
ファイナンシャルプランナーとは、個人のライフプランに即した資産設計をアドバイスする専門家のことです。
株式投資や投資信託などの資産運用だけでなく、保険商品など生活に関わるお金の情報に精通していることが特長です。
R&Cでは全国各地に経験豊富なファイナンシャルプランナーが在籍しており、無料で投資信託や資産運用の相談をすることが可能です。
また、投資信託商品や株式の強引な勧誘等は一切行いませんので、安心して相談することが可能です。
投資信託を始める上で自分でどうしても判断ができなかったり、目論見書の見方が分からない場合は、ぜひR&Cのファイナンシャルプランナーにご相談ください。
記事のまとめ
本記事では、投資信託の目論見書における記載項目やその読み方について解説しました。
投資信託を始めるにあたり、目論見書を確認することは必要不可欠です。
投資信託において目論見書の形式や記載項目は運用会社が違っても大体は同じ内容となっています。
これから投資信託を始めようと思っている方は、気になるファンドの目論見書をチェックし、他商品と比較することをおすすめします。