繰上償還とは?用語を理解して自分に合った最適な資産運用をしよう
投資信託は少額から始められ、プロに運用を代行できることから投資初心者にも人気の資産運用の一つです。
一方で、資産運用においては専門用語多く、税金等の手続きが複雑な場合があるため、わからない言葉があればその都度検索をしている方も多いかと存じます。
本記事では、投資信託における「繰上償還(くりあげしょうかん)」と呼ばれる用語の概要と繰上償還が発生する場合の流れやデメリットについて説明します。
加えて投資信託を運用する際に発生し得るリスクや留意点なども解説しますので、投資信託をこれから始める方や初心者の方はぜひ参考にしてください。
投資信託の繰上償還とは
繰上償還を説明する前に、まずは「償還」という用語の意味から説明します。
そもそも「償還」とはどういう意味?
償還とは、運用期間の終了日のことを指します。
この償還日はファンドの目論見書など、販売会社から配布される資料から確認できます。
償還日はそのファンドの運用方針や戦略に沿って設定されます。
必ずしも設定日を定めないといけないものではないため、償還日が設定されていない無期限の商品もあります。
一般的には、アクティブファンドなどテーマが決まっているファンドの場合だと償還日が設定されていることが多いです。
対照的に、インデックス型のファンドでは設定されない場合が多くなっています。
繰上償還は償還日が予定より早まること
繰上償還とは、予定の期日を待たずに早期に該当ファンドの運用が終了することを指します。>
投資信託に限らずあらゆる資産運用において、景気悪化による急激な金融資産価値のの低下が起こることがあります。
投資信託の場合だと、基準価額の下落がそれに当たります。
したがって、投資信託の口数や純資産額が減り、効率的なファンドの運用が難しくなった場合、繰上償還されるケースが多いです。
繰上償還は運用会社が定めた条件を満たした場合に実施されますが、この条項は交付目論見書に記載されています。
交付目論見書はこちらの記事で解説しているので参考にしてください。
繰上償還の具体的な事例
実際の投資信託商品で繰上償還がされた例を見てみましょう。
今回は、野村アセットマネジメント株式会社が運用していた投資信託商品「フューチャートレンド世界株」(以下、本事例)を例に挙げます。
本事例は元々の償還日を2029年11⽉26⽇までと設定されていましたが、2023年12月19日に繰上償還されています。
繰上償還の条件は交付目論見書の「手続き・手数料等」の項目に記載されていることが多いです。
資料から読み取れる本事例の繰上償還の条件は、「受益権⼝数が30億⼝を下回った場合等」 と記載されていました。
繰上償還がされる直前の2023年11月14日に発行された運用報告書によると、総受益権口数は74,299,861口でした。
したがって、本事例において繰上償還をする条件を満たしていたと言えます。
繰上償還がされるとどうなる?
繰上償還の用語について理解はできたでしょうか。
本章では、投資信託において繰上償還が発生する流れやデメリットを見ていきましょう。
繰上償還の流れ
一般的な繰上償還の流れは以下の通りです。
- 運用会社がファンドの運用目標が達成できないと判断
- 販売会社より受益者に対して繰上償還を書面決議の伺いが届く
- 書面決議が可決後、繰上償還日が確定
- 保有口数に応じた償還額の返還
事前に定められた条件を満たした上で、運用会社が継続的な運用目標の達成が困難だと判断した場合、受益者に対して繰上償還の伺いが行われます。
販売会社より繰上償還の実施する旨の書面通知が届きます。
繰上償還は書面決議の形を取ることが多いです。
書面決議では、受益者の議決権口数の2/3以上の賛成をもって可決されます。
否決された場合は、これまで通り運用が続けられます。
繰上償還日の予定日は書面で通知され、可決されたら償還日が確定します。
繰上償還日を迎えると、保有口数に応じた償還額が返還されます。
返還日は販売会社が定める規定によって異なりますが、目安として5営業日以内に返還されることが多いです。
また、条件を満たしたら自動的に繰上償還が確定する投資信託商品もあります。
それらの投資信託商品において異議申し立てはできないので事前に目論見書をチェックしておきましょう。
繰上償還日まではこれまで通り運用が続きますが、繰上償還の決議が可決後も償還日を待たずして投信商品を解約することは可能です。
懸念されるデメリット
投資信託の繰上償還により発生するデメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 元本割れのリスク
- 運用効率の悪化
元本割れのリスク
投資信託において繰上償還がされると元本割れのまま運用期間が終了するリスクが生じます。
基準価額が上昇の見込みがあった場合でも、償還日を迎えてしまうと運用は終了してしまうためです。
したがって、潜在的に運用効果の機会損失が起きる可能性があると言えます。
運用効率の悪化
投資信託の繰上償還が起こるということは、予定より早く運用が終了するということです。
すなわち、運用が一時的中断されてしまうため、運用効率が悪化してしまう可能性が生じます。
投資信託の運用中のリスクと注意事項
投資信託を運用する上で、あらゆる情報を収集することはリスクを回避する効果的な方法だと言えます。
運用時に発生するリスクは、購入する投資信託商品によって様々です。
したがって、運用中のリスクと目論見書の確認は必ず行いましょう。
効果的な運用のためにはリスクを知ることが大事
投資信託は元本保証のない金融商品です。
つまり、投資信託ではいかなる商品においても必ず元本割れのリスクは付きまといます。
また、資産運用においては、年代やライフスタイルにより投資の目的は人それぞれです。
上述したように、繰上償還が起こりやすい投資信託は一般的にアクティブファンドと呼ばれるものが多いです。
長期的に効率よく資産形成を行いたい場合は、比較的リスクが少ないインデックスファンドを選ぶと良いでしょう。
投信商品の目論見書は必ず確認しよう
投資信託を購入する上で、目論見書などの資料は重要な判断材料となります。
中でもチェックしておきたいのが純資産額です。
投資信託における純資産とは、運用資産のようなものです。
この純資産額が少ないと、投資できる銘柄が限られてしまいます。
つまり、投資信託の最大のメリットである分散投資による効果が最大限に発揮できません。
純資産額の目安としては、100億円以上のファンドを選ぶと良いでしょう。
記事のまとめ
本記事では、投資信託における「繰上償還」という用語について解説しました。
投資信託では聞きなれない用語を耳にすることも多いです。
どうしても用語の理解が難しい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談することも一つの手だと言えます。
無料相談を行なっているファイナンシャルプランナーも多く、用語の説明だけでなくファンド選びや保険のことなどお金にまつわるあらゆることの相談が可能です。
保有する投資信託商品が繰り上げ償還される場合にどうするべきかもアドバイスがもらえますので、積極的に利用しましょう。
また、当メディアでは投資信託や資産運用にまつわる用語の解説や、運用に関わるノウハウを伝授する記事を数多く掲載していますので、ぜひチェックしてください。
最後に、本記事がファンド選びや疑問解消の参考になれば幸いです。