投資信託の購入における「約定日」「申込日」「受渡日」の違いと、それぞれの関係性について解説
投資信託の注文日と約定日は異なる場合があります。そのため、タイムラグが原因で価格が変動し、思わぬ価格で約定する場合があります。
また、分配金の受け取りや税金の発生にも影響を与えるため、投資信託で損をしないためにも理解しておくことが重要です。
この記事では、投資信託の購入における3つの重要な日、「約定日」「申込日」「受渡日」の違いと、それぞれの関係性について解説します。
さらに、基準価額と約定日の関係についても詳しく説明し、投資信託を購入する前に知っておくべき注意点についてもまとめています。
ぜひ最後までご覧ください。
投資信託の「約定日」とは
投資信託の約定日とは、投資信託の購入や売却の取引が成立する日です。
約定日が来るタイミングは投資信託によって異なり、注文当日が約定日になる商品と、注文の翌日以降が約定日となる投資信託の2種類があります。
具体的な約定日は、証券会社の投資信託の詳細ページに記載されています。
基準価額とは?約定日との関係性
基準価額とは、投資信託の1口あたりの価格を示す指標で、購入時の価格基準となります。
たとえば、ある投資信託の基準価額が10,000円だとすると、一口を購入するのに10,000円かかります。
ただし、最低購入口数が一口以上である必要はなく、1,000円分などの小額からの投資も可能な場合があります。
基準価額の更新は1日1回
基準価額は運用会社によって1日1回、通常は20:00までに更新されます。
証券会社や銀行などの金融機関は、この更新された基準価額に基づいて自社のシステムを更新します。情報の更新時間はその金融機関によって異なります。
株式や為替の相場はリアルタイムで常に更新され、チャートで値動きを確認できますが、基準価額は特定の時間にのみ更新されます。
具体的な基準価額は証券会社のWebページなどで、該当の投資信託の情報を見れば確認できます。
基準価額は約定日に決まる
購入または売却注文が成立する日を約定日といいます。投資家が投資信託を購入する際、約定日の基準価額で注文が成立します。
たとえば注文した日の基準価額が1口11,000円でこの金額で購入したつもりでも、約定日の基準価額が15,000円だった場合、1口あたり15,000円でその投資信託を購入することになります。
投資信託の種類によって注文当日が約定日になる場合と、注文の翌営業日以降が約定日になる場合があります。
申込日や受渡日とは何が違う?
申込日と受渡日にはいったいどのような違いがあるのでしょうか?ここではそれぞれの違いを解説していきます。
申込日とは?
投資信託の申込日とは、売買注文を出した日のことです。
投資信託にはそれぞれの商品に申し込みの締め切り時間が設定されています。締め切り日よりも前に申し込んだ場合はその日が申込日に、締め切り後に申し込んだ場合は翌日が申込日になります。
一般的に、申し込む投資信託が国内の商品の時には、申込日と約定日が同じになります。一方、投資対象が海外の商品の場合は、申込日の翌日が約定日となります。
そのため、申込日と約定日は異なる可能性があるため、投資対象の商品詳細を確認しておきましょう。
受渡日とは?
受渡日とは、投資した投資信託の決済が行われ、商品や資金の受渡が行われる日です。
投資信託では、商品によって受渡日があらかじめ決められています。申込日の2日~5日後が受渡日になるのがほとんどですが、実際の受渡日は投資信託により異なります。
投資信託の売買が成立するまでの流れ
投資信託の売買が成立するまでの流れは以下の7ステップです。
- 投資信託(ファンド)を選択する
- 投資信託説明書(交付目論見書)を閲覧する
- 資金を入金する
- 申し込み処理を行う
- 約定する
- 受渡し
- 取引結果を確認する
それぞれについて簡単に解説します。
投資信託(ファンド)を選択する
まずどの投資信託を購入するか選択します。
投資信託を選択する際、投資する地域や対象、管理方法、配当金等など、様々な要素を確認しどのファンドを選ぶか選択しましょう。
目論見書、月報、製品説明書などにしっかり目を通し、投資目標やリスク・リターンを考慮して、投資対象を決めていきます。
投資信託説明書(交付目論見書)を閲覧する
次に投資信託説明書(交付目論見書)を確認し、投資信託の詳細を熟読します。
大切な資金を投入するので、構成銘柄・運用実績・手数料・信託報酬などを確認し、投資対象としてふさわしいかを確認しましょう。
資金を入金する
投資信託の購入に使用する予算を入金します。手数料や信託報酬などのコストも含んだ資金を入れましょう。
申し込み処理を行う
入金が完了したら申し込みをします。以下内容を選択し注文しましょう。
- 買付方法(分配金受け取り・分配金再投資・積み立て)
- 買付単位(口数・金額)
- NISA講座の選択の有無
これらを指定したうえで、申し込みの処理を行います。その際には、約定日・受渡日などを確認し問題ないか確認したうえで注文しましょう。
約定
注文が完了したあと、約定のタイミングを迎えると投資信託の注文が確定します。その際の基準価額によって約定金額や手数料が決まります。
受渡し
受渡日が来たら商品と資金の受け渡しが行われます。受渡日は投資信託によって異なり、事前に決められたスケジュールに受渡しされるのが一般的です。
取引結果を確認する
最後に取引が正常に完了したかを確認しましょう。証券会社であれば、マイページにログインし注文状況を見れば、無事注文が成立したかどうかを確認できます。
投資信託は注文のタイミングに注意
投資信託は注文のタイミングによっては、注文と約定のタイムラグが大きくなり、価格変動の影響を受けやすくなる場合があります。
そこで、注文を避けるべきタイミングを3つお伝えするので、この機会に知っておきましょう。
大型連休はなるべく避けよう
ゴールデンウィークやお盆などの大型連休には、投資信託の注文はなるべく避けたほうが無難です。
大型連休は市場が閉まっているため注文が処理されず、約定日までのタイムラグが非常に長くなる可能性があります。
連休明けには注文が殺到し価格が大きく動き、予想外の価格で取引することになります。
こういったリスクがあるので、大型連休中の注文はやめることをオススメします。連休明けに投資信託の基準価額を確認してから注文するといいでしょう。
休業日に申し込むと反映が遅い可能性が
投資信託を休業日に注文すると処理が翌営業日になり、それまで注文が保留されたままになります。
その結果、約定のタイミングが遅くなり、価格変動により注文時よりも高い金額で約定してしまう恐れがあります。
また、営業日に注文した場合も、それが休業日前日の遅い時間だと処理が週明けになり、約定するときには価格が変動している可能性があります。
これらのリスクを避けるためには、できるだけ休業日を避け営業日に注文したほうがよいでしょう。
海外資産を対象とする投資信託は時差を確認
海外資産から構成される投資信託を購入する場合には、時差を確認し購入タイミングを決めるのがおすすめです。
海外の市場に投資する場合、時差の影響により注文の処理時間が異なり、購入価格に影響を与える可能性があるからです。
たとえば、ニューヨーク市場は日本時間の夜に開いています。そのため、日中に注文すると現地時間では注文がすぐに処理されず、約定までにはタイムラグが発生する可能性が高くなります。
その結果、予想外の価格で取引することになるリスクがあります。
注文タイミングが原因で不利にならないよう、日本と投資先の時差を考慮しいつ注文するか考えるようにしましょう。
申込日・約定日・受渡日の注意点
ここでは、申込日・約定日・受渡日の注意点をお伝えします。
課税対象になるのは受渡日
投資信託の購入により利益が出た場合、受渡日に移動した金額に基づき、税金が発生します。
個人投資家の場合、毎年1月1日から12月31日までの期間に発生した利益に対して、税金が計算されます。
そのため、年をまたぐタイミングで受渡日を迎える場合、その利益に対してかかる税金は翌年分として計算する必要があります。
たとえ、申込日や約定が年末であったとしても、受渡日が翌年の年始であれば確定申告はそのさらに翌年になります。
このように受渡日は税金に関係してくるので、投資信託で資産運用する際には知っておく必要があります。
NISA口座で年末に投資信託を購入する際の受渡日に注意
NISA口座で投資信託を購入している場合、年末に投資信託を購入する際には注意が必要です。
年末にNISA口座で投資信託を購入した場合、受渡日が翌年になると当年ではなく翌年分の非課税枠を使うことになるからです。
仮に申込日や約定日が年内であったとしても、受渡日が翌年の場合は翌年の非課税枠を消費するので、資産運用の計画が狂う恐れがあるでしょう。
今年分のNISA口座の非課税枠を有効活用したい場合、申込日や約定日ではなく、受渡日を基準に考える必要があります。
特に海外資産が投資対象の場合には、申込日から受渡日までにタイムラグが生じる場合が多く、年末ぎりぎりの購入だと受渡日が年明けになる可能性が高くなります。
海外資産を対象にNISA口座で投資している方は特に、受渡日がいつなるかを確認してから購入するとよいでしょう。
分配金を受け取るには約定日を基準に考える
投資信託の分配金を受け取る資格を得るには、その日の前営業日までに投資信託の購入が成立している必要があります。
つまり分配金を受け取るには、分配金の受渡日の前日までに、約定日を迎えなければいけないということです。
そのため、仮に前営業日に注文が完了しても、約定が分配金の受渡の当日以降になると分配金を受け取れなくなってしまいます。
たとえば分配金が支払われる日が30日に設定されている場合、前営業日である29日までに約定が成立していなければいけません。
また、29日に注文した場合でも時間帯が遅いと約定日が30日になってしまい、分配金を受け取れなくなる恐れがあります。
そのため、分配金を受け取りたい場合には、前日までに約定日が来るように早めに注文を済ませるようにしましょう。
よくある質問
ここでは投資信託の約定日について、よくある質問とその回答をお伝えしていきます。
売買手数料はどの時点で発生する?
売買手数料は約定日に決まるのが一般的です。投資信託を購入する金額は約定日に決まるので、その際に手数料の金額も決まります。
信託報酬はいつ支払う?
信託報酬は売買の際に差し引かれるわけではありません。
日割り計算で預けている資産から毎日差し引かれ、販売会社・運用会社・受託銀行のそれぞれが業務の報酬として受け取ります。
約定日の情報はどこで確認できる?
約定日の情報は、証券会社の取引画面やマイページなどの、「約定履歴」の画面で確認できるのが一般的です。
ここを見ても確認できない場合、確認方法を証券会社に問い合わせるといいでしょう。
注文をキャンセルできるのはいつまで?
投資信託の注文をキャンセルできるのは、多くの場合申し込みした日の締め切り時間までです。
たとえば締め切り時間が15:00までであれば、15:00までにキャンセル操作すれば注文の取り消しが可能です。
記事まとめ
投資信託で資産運用する上では、申込日・約定日・受渡日の3つの意味を理解し、注文後に投資信託が手元に来るまでの流れを理解する必要があります。
これらの日程にタイムラグによって、分配金の受け取りや税金の発生に影響が出ることがあるので、正確に理解したうえで購入するのが重要です。
この記事でお伝えした約定日の仕組みや注意点などをしっかりと押さえ、賢く投資信託での資産運用を行えるようにしましょう。
約定日や運用で困ったら「お金のプロ」に相談することがおすすめ
約定日が想定しているよりも遅かったり、保有中のファンドの運用成績が悪い場合は、IFAなどの専門家に相談することもおすすめです。
IFAとは、独立系ファイナンシャルアドバイザーと呼ばれる、投資に精通した専門家のことで、特定の証券会社等に所属しておらず、中立性を保って相談できる点が特長です。
本記事の運営会社であるR&Cでも経験豊富な多数のIFAが所属しています。
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