投資信託の買い方について、具体的な流れや損しないためのコツを紹介
投資信託とは、投資家から集めたお金を専門家が運用し、その利益を投資家に還元する金融商品です。1つの投資信託で複数の株式や債券などに分散投資できるため、初心者でも始めやすい特徴があります。
ただし、始めやすいといっても投資信託を購入するときは一定の知識必要です。初心者だと買い方がわからず、何からすればよいかわからない人も多いでしょう。
そこでこの記事では、投資信託の買い方について基本的な流れや準備の方法、銘柄選びの方法などを解説しています。
おすすめの証券会社も紹介しているので、投資信託の買い方で悩んでいる人はぜひ参考にしてください。
投資信託の買い方の流れ
投資信託の購入は、大きく分けて以下の3ステップに分けられます。
- 口座開設
- 銘柄選び
- 発注・購入完了
各ステップの詳しい内容や必要な書類などについて、つずつ解説します。
STEP1.口座開設
まずは、投資信託を購入するための口座を開設します。投資信託を取り扱っている販売会社(証券会社や銀行など)で開設が可能です。
販売会社によって取り扱っている投資信託が異なるため、買いたい銘柄に目星をつけてから開設先を選ぶのもよいでしょう。
口座の種類
投資信託用の口座は、「特定口座」と「一般口座」のどちらかを選びます。
特定口座 | 運用の損益を販売会社に計算してもらえる口座。 |
---|---|
一般口座 | 自分で損益計算する必要がある口座。非上場の未公開株を購入したい場合に利用する。 |
一般口座のメリットは未公開株を購入できることなので、投資信託を購入したい場合は特定口座で問題ありません。
特定口座は、さらに「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の2種類を選びます。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
源泉徴収あり | ・納税を販売会社に任せられる(確定申告が原則不要) ・配偶者控除への影響がない |
・運用の年間所得が20万円以下でも税金を支払うことになる(確定申告しても取り戻せない)。 |
源泉徴収なし | ・運用の年間所得が20万円以下なら税金の支払いがない(確定申告も不要)。 | 所得額によっては、配偶者控除の適用から外れる可能性がある。 |
また、特定口座・一般口座を作ると、一定の投資額が非課税となる「NISA口座」も作れます。特定口座・一般口座とNISA口座は同時開設も可能なので、まとめて申し込むと手間が省けるのでおすすめです。
口座開設の必要書類
投資信託の口座開設には、以下の書類等が必要です。
- 本人確認書類(免許証など)
- 入出金用の口座情報(普段使っている口座でOK)
- マイナンバー確認書類(マイナンバーカードなど)
- 印鑑※オンライン口座の場合は不要なケースもある
投資信託用の口座は直接入出金ができないため、別途口座が必要になります。また、マイナンバーの登録は必須なので、確認書類が手元にない場合は早めに取得しておきましょう。
STEP2.銘柄(ファンド)選び
口座を開設したら、どの投資信託に投資するか選びます。買い方のコツは後述しますが、基本的な情報として次の項目をチェックしましょう。
- 基準価額…その投資信託の1万口あたりの価格。
- 騰落率…基準価額がある期間でどの程度変動したかを指す指標。
- 申込単位・解約単位…最低限の購入・売却単位。
- 手数料など…購入・売却時にかかる買付手数料・解約手数料や、保有時に発生する信託報酬(運用管理費用)。
- パフォーマンス…リターン(年率)や標準偏差(リスクの高さ)などの指標。
上記のほか、運用方針や総資産額なども見て、自分の投資目的に合った投資信託を選びましょう。
STEP3.発注・購入完了
銘柄を決めたら、口数を選択して発注をかけます。投資信託はその日の基準価額で取引されるため、当日の申し込み締め切り時間までに売買すれば、いつ申し込んでも同じ価格です。
発注時の買い方には2種類あり、大きな資金を使ってまとまった口数を買う「一括購入」と、一定の間隔・金額で購入する「積立」があります。
どちらを選ぶかは投資目的次第ですが、資金が豊富でちょうど買い時な銘柄があるなら一括、長期運用でリスクを抑えたいなら積立がおすすめです。
失敗しない買い方のコツ
投資信託はリスクの低い投資商品ですが、それでも損をする可能性はあります。投資信託で失敗しない買い方として、次のコツを押さえておきましょう。
- ファンドの特徴を理解する
- 信託期間をチェックする
- 信託報酬を確認する
それぞれのコツを詳しく解説します。
投資の目的を明確にしておく
投資を始めるときは、投資信託に限らず目的をはっきりさせることが大切です。ゴールをどこに定めるかで、適した投資先や運用方法が変わります。
投資信託の特徴は、1つの銘柄で分散投資ができることや、100円単位でコツコツ積み立てる買い方ができる点です。これらの特徴から、長期で少しずつ利益を積み上げる投資スタイルに向いています。
つまり、投資目的が「老後資金の足しにしたい」「経済リスクに備えて資産を分散したい」といった目的であれば、投資信託はおすすめです。一方、積極的な運用でハイリターンを狙いたい人には、投資信託より個別株や信用取引のほうが向いているでしょう。
このように、最終的な目的を定めて投資に向き合えば、おのずと最適な道筋が見えてきます。
ファンドの特徴を理解する
一口に投資信託といっても、さまざまな種類があります。購入する銘柄の特徴を知り、どのくらいのリターンやリスクがあるのか把握しておきましょう。
以下は、対象資産による分類とそれぞれの特徴です。
株式 | 企業への出資。配当や企業価値の向上が利益になり、高い値上がりが期待できる反面リスクも大きい。 |
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債券 | 国や企業などへの資金の貸出。利息などが利益になり、安定しているがリターンは小さめ。 |
不動産(リート) | 不動産投資法人への出資。株式と同様、値動きが大きい。 |
コモディティ | 金や原油など商品への投資。インフレに強く、株式などとは異なる値動きを示す傾向がある。その分、価格変動の予測が難しい。 |
資産複合(バランス型) | さまざまな資産を組み合わせたファンド。単一資産よりリスクを抑える効果が期待できる。 |
また、日本か海外か、海外なら先進国か新興国かの違いもあります。「国内<海外先進国<新興国」の順に狙えるリターンは大きくなりますが、リスクも比例して高くなるため注意しましょう。
さらに、運用手法による違いも重要です。大きく分けると「インデックスファンド」と「アクティブファンド」があります。
インデックスファンド | 市場の平均指数(日経平均株価やS&P500など)と連動することを目指して運用される投資信託。値動きがわかりやすく低コストだが、指数以上のリターンは期待できない。 |
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アクティブファンド | 利益が市場の平均指数以上になるよう運用する投資信託。大きなリターンを期待できるが、コストが高く運用に失敗するリスクも大きい。 |
上記のような分類をもとに、各ファンドの特徴を理解してリスクやリターンを判断しましょう。
信託期間をチェックする
投資信託には信託期間が定められているものもあり、期限になると自動で償還(損益を確定し清算すること)される場合があります。長期投資を考えるならば、信託期間が無期限の投資信託を選びましょう。
ただし、信託期間が長期・無制限の場合でも、運営会社の判断で早めに償還する場合もあります。口数や純資産額の少ない小規模な投資信託ほど、こうした繰上償還が起きやすいため注意が必要です。
また、運用を継続したほうが投資家の利益につながる場合は、反対に信託期間が延長される場合もあります。
手数料を意識する
先にも少し解説しましたが、投資信託には売買や運用中に手数料がかかります。特に注意が必要なのは信託報酬で、毎日自動で差し引かれるため「支払っている実感」がわきにくいですが、運用成績に大きく影響します。
信託報酬は銘柄ごとに設定されており、0.5%~2.5%程度がおおまかな相場です。アクティブファンドは積極的な売買で手間がかかるため、信託報酬も高くなる傾向にあります。
以下は、毎月3万円の積立で利回り年7%の運用を行った場合、信託報酬が1%と2%でどのように変わるか比較したものです。
信託報酬率 | 10年目 | 20年目 | 30年目 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
支払い信託報酬額 | 運用結果(信託報酬の控除後) | 支払い信託報酬額 | 運用結果(信託報酬の控除後) | 支払い信託報酬額 | 運用結果(信託報酬の控除後) | 支払い信託報酬額 |
1% | 22万円 | 474万円 | 151万円 | 1,324万円 | 554万円 | 2,846万円 |
2% | 47万円 | 452万円 | 285万円 | 1,190万円 | 1,008万円 | 2,391万円 |
シミュレーション参考:運用シミュレーター|楽天投信投資顧問株式会社
運用期間が長くなるほど信託報酬の金額差は大きくなり、30年目時点では500万円近くの違いが生まれます。
長く運用する前提で考えるのであれば、信託報酬の割合もしっかりチェックしましょう。
投資信託が買える販売会社と選び方
投資信託の購入にあたっては、どこで口座を開設するかも選ぶ必要があります。販売会社をおおまかに分けると、以下の3通りです。
- 銀行
- 証券会社
- その他(郵便局や信金、保険会社など)
具体的な買い方としては、「店頭に行く」「電話で発注する」「オンラインで取引する」という方法があります。
近年は証券会社で口座を開設し、インターネットやスマホアプリで手軽に取引する方法が主流となっています。店頭取引や電話取引は、買い方からじっくり丁寧にアドバイスをもらいたい場合におすすめです。
取り扱い銘柄や手数料などは1社ごとに異なるため、自分に合った購入場所を選びましょう。
おすすめの証券会社5選
ここからは、投資信託を購入できる証券会社のうち、特におすすめの5社を紹介します。
いずれも取り扱い銘柄数が多く、オンラインでの買い方も難しくないため、口座開設の際はぜひ検討してみましょう。
SBI証券
投資信託の銘柄総数 | 2,575銘柄 |
---|---|
積立可能銘柄 | 2,388銘柄 |
新NISA(つみたて投資枠)対応銘柄 | 222銘柄 |
新NISA(成長投資枠)対応銘柄 | 1,180銘柄 |
クレジットカード決済 | 可能(三井住友カード) |
アプリ | SBI証券かんたん積立アプリ(App Store、Google Play) |
買付単位 | 100円~ |
買付手数料 | 0円 |
※2024年3月時点
参照:投資信託|SBI証券
SBI証券は個人投資家からの人気が高い証券会社で、証券総合口座数は国内初の1,200万口座に上ります(SBIネオトレード証券、SBIネオモバイル証券、FOLIOを含む)。投資信託の取り扱い銘柄も、楽天証券と並んでトップクラスです。
取引で貯まるポイントを選べるのが特徴で、TポイントやPontaポイントなど普段使いできるポイントが取り揃えてられています。
多くの人から支持されており、初心者からベテラン投資家までおすすめできる証券会社です。
楽天証券
投資信託の銘柄総数 | 2,557銘柄 |
---|---|
積立可能銘柄 | 2,408銘柄 |
新NISA(つみたて投資枠)対応銘柄 | 222銘柄 |
新NISA(成長投資枠)対応銘柄 | 1,138銘柄 |
クレジットカード決済 | 可能(楽天カード) |
アプリ | 投資信託対応はなし |
買付単位 | 100円~ |
買付手数料 | 0円 |
※2024年3月時点
参照:投資信託|楽天証券
楽天証券は、投資信託の銘柄総数が国内トップクラスの証券会社です。楽天グループの企業であり、いわゆる「楽天経済圏」との相性が良くなっています。
取引では楽天ポイントが貯められ、一定の残高達成で得られるボーナスポイントや残高3,000万円以上の大口投資で株式投資の還元率2倍といったサービスも提供しています。
アプリでの投資信託売買はできませんが、専用サイトがあるため、スマホでも手軽にファンド探しや発注、運用状況の確認が可能です。
松井証券
投資信託の銘柄総数 | 1,861銘柄 |
---|---|
積立可能銘柄 | 不明 |
新NISA(つみたて投資枠)対応銘柄 | 224銘柄 |
新NISA(成長投資枠)対応銘柄 | 1,078銘柄 |
クレジットカード決済 | 不可 |
アプリ | 松井証券投信アプリ(App Store、Google Play) |
買付単位 | 100円~ |
買付手数料 | 0円 |
※2024年3月時点
参照:投資信託|松井証券
松井証券株式会社はポイント還元率が1%と業界でも高水準で、PayPayやdポイント、Amazon gift cardと交換可能です。
専用アプリでは希望する資産割合に自動調整してくれる「自動リバランス」や、最適なポートフォリオの提案をしてくれる「ロボアドバイザー」といったツールもあり、運用の手間や悩みを省けます。
また、電話サービスも高く評価されており、手厚いサポートで買い方に迷わず投資信託を始められます。
マネックス証券
投資信託の銘柄総数 | 1,757銘柄 |
---|---|
積立可能銘柄 | 1,697銘柄 |
新NISA(つみたて投資枠)対応銘柄 | 219銘柄 |
新NISA(成長投資枠)対応銘柄 | 1,124銘柄 |
クレジットカード決済 | 可能(マネックスカード) |
アプリ | マネックス証券アプリ(App Store、Google Play) |
買付単位 | 100円~ |
買付手数料 | 0円 |
※2024年3月時点
マネックス証券は、提携ポイントの豊富さや還元率の高さなど、お得なサービスが充実しています。
取引で貯まるマネックスポイントはdポイント・アマゾンポイント・ANAやJALのマイルと交換可能です。また、マネックスカードで決済をした場合、還元率は1.1%と高くなります。
ロボアドバイザーが2種類用意されているのも特徴で、アドバイスのみの「Monex Adviser」と一任型の「ON COMPASS」を投資スタイルに合わせて活用できます。
auカブコム証券
投資信託の銘柄総数 | 1,774銘柄 |
---|---|
積立可能銘柄 | 不明 |
新NISA(つみたて投資枠)対応銘柄 | 252銘柄 |
新NISA(成長投資枠)対応銘柄 | 1,234銘柄 |
クレジットカード決済 | 可能(au PAYカード) |
アプリ | auカブコム証券アプリ(App Store、Google Play) |
買付単位 | 100円~ |
買付手数料 | 0円 |
※2024年3月時点
auカブコム証券は、三菱UFJグループとKDDIグループが株主の証券会社で、KDDIの各種サービスと提携しています。
特徴的なのが「auマネ活プラン」の特典で、クレカ積立をすれば最大3%のPontaポイントが還元されます(12か月間まで)。
普段からauのサービスを利用している人は、日常の買い物や食事で貯まったPontaポイントを使って、お得にポイント投資が可能です。
記事まとめ
投資信託を購入するときは、取引する証券会社選びや開設する口座の種類、銘柄の見方など、さまざまな注意点があります。
それぞれを一緒に考えると大変なので、1つずつ着実にこなしていくことが大切です。一旦始めてしまえば、運用を続けるうちに投資信託の知識がついてきて、自分に合った投資信託の買い方や売り方が身に付きます。
販売会社の相談窓口やAIによるサポートもあるため、うまく活用して堅実な資産形成を目指しましょう。