投資信託
投資信託の相続方法とは?手続きの流れや注意点について解説
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投資信託の相続手続きはどうすればよい?注意すべきことはある?

新しい資金形成の一種として、近年、投資信託が注目されています。

それに伴い、投資信託の相続案件も増加しているのが現状です。

投資信託の相続については、手続きや税金などに関して多くの注意点があるため、しっかりと理解しておく必要があります。

そこで、この記事では投資信託の相続手続きの流れについて徹底解説。

相続時に注意したいポイントについてもご紹介します。

投資信託の相続をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

亡くなった被相続人の投資信託は、遺産分割の対象になる

亡くなった被相続人の投資信託は、遺産分割の対象になる

投資信託の受益権は口数によって細分化されているため、額面で分けることのできる「可分債権」に当たります。

複数の相続人が存在する場合、被相続人が有した可分債権は、遺産分割を経ることなく法律上当然に分割承継されるのが原則です(最高裁昭和29年4月8日判決)。

しかし投資信託については、例外的に当然分割が行われず、遺産分割の対象となります。

「遺産分割」とは

「遺産分割」とは、相続人間で遺産を分ける手続きを指します。遺言書に従って行う遺産分割と、相続人間の取り決め(協議、調停、審判)に従って行う遺産分割の2通りがあります。

遺言書がある場合は、原則としてその内容のとおりに遺産分割を行います。遺言書の内容を実現するという意味で、「遺言執行」と呼ばれることもあります。

これに対して、遺言書がない場合は、被相続人の遺産は相続人全員の共有となります(民法898条)。

遺言書によって配分が指定されていない遺産があるケースも同様です。

この場合、実際に遺産を相続する人を、相続人間の協議、調停、審判を通じて取り決めることにより、遺産の共有状態を解消します。

遺産分割の4つの方法

遺産分割する方法は4つあります。

種類とそれぞれの概要は以下の通りです。

種類 概要
現物分割 預貯金は長男、有価証券は長女、ご自宅は次男へなど個々の財産を各相続人へ配分する方法です。手続きが簡単で、財産をそのまま残せるメリットがある一方、法定相続分に従って分割することが難しく不公平になりやすいというデメリットがあります。
換価分割 財産を売却して金銭に換え、分割する方法です。公平な分割が可能となるメリットがある一方で、財産の現物が残らなかったり、売却の手間や費用が発生したり、売却益に所得税・住民税がかかることがデメリットです。
代償分割 相続人の一人が、法定相続分を超える価値の財産を取得した場合に、他の相続人へ相続分の差額を現金等で支払う方法です。財産の多くが不動産の場合や、ご自宅に住み続けたい相続人がいる場合等に用いられます。現物の財産をもらった方が他の相続人へ代償金を支払う資力が必要です。
共有分割 財産の一部、あるいは全部を相続人全員が共同で所有する方法です。公平な分割が可能で、財産を売却することなくそのまま残せるメリットがあります。一方で、財産の利用や将来の売却について、相続人全員の合意が必要になるため、自由度が低くなります。

上記の4つの遺産分割方法は相続者が決めることができるため、遺産の状況にあわせて分割方法を話し合いましょう。

投資信託を相続するときの手続きの流れ

投資信託を相続するときの手続きの流れ

ここでは、投資信託を相続する場合の手続きの流れについて解説します。

0,金融機関の特定をする

投資信託の相続手続きをするためには、どの金融機関で取引しているかを特定する必要があります。

運用報告書や取引残高報告書が送付されている場合には、当該報告書が送られてきた金融機関で手続きをすることになります。

オンラインで投資信託を購入している場合、運用報告書や取引残高報告書は送付されない場合がほとんどです。

被相続人が使用していたメールなどが確認できる場合には、その内容から金融機関を特定する必要があります。

メールが確認できない場合には、投資信託の分配金や償還金などが預金に入金されていることも多いので、その預金の履歴から金融機関を特定するという方法もあります。

1,金融機関に連絡し、相続開始日の残高証明書を取得する

相続する投資信託の金融機関が判明したら、街頭の金融機関に連絡を行い、以下の2点を依頼しましょう。

  • 故人の投資信託の口座を凍結
  • 残高証明書の発行

金融機関は相続の連絡を受けると口座をロックしますが、これにより不正に引き出されることがなくなります。

また、相続時の残高証明書も発行してもらえるので、その金額を元に相続手続きを進めることができます。

なお、遺産分割を行うに当たっては、投資信託の残高を把握する必要がありますので、金融機関に残高証明書を発行してもらいましょう。

2,投資信託の分割方法を確定する

金融機関に相続手続きを申請する前に、投資信託の分割方法を確定する必要があります。

遺言書が残されており、その中で投資信託の分割方法が指定されている場合には、原則として遺言書の内容どおりに投資信託を分割します。

ただし、相続人・受遺者全員が合意すれば、遺言書とは異なる方法により投資信託を分割することも可能です。

遺言書がない場合や、遺言書があっても投資信託の分割方法が指定されていない場合には、相続人・包括受遺者が協議を行い、投資信託の分割方法を取り決めます。

協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を通じて解決を図ることになります。

投資信託は、相続手続きが完了すれば比較的短期間で現金化できるのが特徴です。

そのため、生活費や不動産の新規取得、相続税の納税などによって現金を必要としている相続人が、投資信託の相続を希望する傾向にあります。

3,必要書類を金融機関に提出し、相続手続きを申請する

投資信託の遺産分割方法が確定したら、投資信託の保有口座がある金融機関に対して相続手続きを申請しましょう。

金融機関における相続手続きの必要書類は、おおむね以下のとおりです。

①遺言書がある場合

(a)遺言執行者がいる場合
  • 遺言書
  • 法定相続情報一覧図の写し、または被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 遺言執行者の印鑑登録証明書
(b)遺言執行者がいない場合
  • 遺言書
  • 検認調書(公正証書遺言、法務局の遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言については不要)
  • 法定相続情報一覧図の写し、または被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 投資信託を相続する者の印鑑登録証明書

②遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

(a)法定相続情報一覧図の写しを取得している場合
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印が必要)
  • 法定相続情報一覧図の写し
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
(b)法定相続情報一覧図の写しを取得していない場合
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印が必要)
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人と相続人の続柄が確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

③遺言書がなく、遺産分割協議書もない場合

※調停調書・審判書がある場合は、それを添付

(a)法定相続情報一覧図の写しを取得している場合
  • 法定相続情報一覧図の写し
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
(b)法定相続情報一覧図の写しを取得していない場合
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 被相続人と相続人の続柄が確認できる戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

4,相続人口座への移管手続き

相続人口座への移管手続きは、完了まで一定の時間を要します。(証券会社によっては、提出書類の受付日より2ヶ月程度かかるケースもります。)

移管手続きが完了すると、販売会社から相続手続き完了通知が発送されます。

相続手続きの完了後は、相続人口座内で、投資信託の取引をしたり、解約したりすることが可能になります。

5,相続税の申告手続き

投資信託の受益権を含めた相続財産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告手続きが必要です。

また、配偶者控除を適用して相続税が0円になったとしても、相続税の申告手続きは必要となります。

【注意】投資信託は相続税課税対象財産に含まれる

【注意】投資信託は相続税課税対象財産に含まれる

預貯金や不動産と同じく、投資信託も相続税の課税対象財産となります。

投資信託の場合、株式や不動産の運用をプロに任せ、運用益が購入者に分配される仕組みなので、受益権という権利部分に対して相続税がかかります。

相続税は課税財産の総額から計算するため、投資信託も相続税評価額を計算し、課税財産に含めなければなりません。

投資信託にはかなり多くの種類がありますが、相続税評価額を計算するときは、ファンド(基金)のタイプ別に分類し、以下の計算方法で評価額を算定します。

種類別相続税評価委方法

投資信託は課税財産に含めるため、相続が発生したときの評価額を計算します。

解約や買取を請求したらいくらになるかという考え方ですが、計算方法は投資信託の種類によって変わるため、以下のどれに該当するのか確認しましょう。

  • 一般的な投資信託
  • MRF(マネー・リザーブ・ファンド)
  • 外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)
  • 上場投資信託(ETF・REIT)

投資信託の種類は投資信託説明書(交付目論見書)、または証券会社のホームページを確認すれば分かります。

では、種類別の相続税評価計算をみていきましょう。

一般的な投資信託の評価方法

一般投資信託もまずは投資信託の1口当たりの金額に口数を乗じた金額を求めます。

一般的な投資信託は1万口当たりの金額が公表されているのが基本なので、それを元に1口当たりの金額を求めます。

その後、相続が発生した日において、投資信託を換金したと仮定した場合に発生する配当所得又は利子所得につき源泉徴収されるべき所得税額と、解約に必要となる解約手数料や信託財産留保額等を控除した金額が、該当する投資信託の評価額です。

計算式で表すと以下の通りです。

1口当たりの基準額 × 口数 − 相続が発生した日において換金した場合に配当所得又は利子所得につき源泉徴収されるべき所得税額 − 信託財産留保額および解約手数料

MRF(マネー・リザーブ・ファンド)の評価方法

MRFとは、安全性の高い公社債で運用される投資信託のことです。

投資信託がMRFに該当する場合、相続の発生日における以下の金額を求めます。

まず、投資信託の1口当たりの基準価格(基本的には1円)に投資している口数を乗じます。

そこにまだ再投資されていない未収分配金の額を加えます。その後源泉徴収されるべき所得税や解約した際の手数料などを差し引きます。

算出された金額が該当する投資信託の評価額です。

計算式で表すと以下の通りです。

1口当たりの基準価格(基本は1円) ×口数 + 未収分配金 -未収分配金に対して源泉徴収されるべき所得税の額 -信託財産留保額および解約手数料

外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)の評価方法

外貨建MMFとは、信用力の高い短期の債券で運用される比較的安全性が高い投資信託です。

外貨建MMFもMRFと同様の計算式で評価を行います。

ただし外貨建MMFは外国の通貨を扱っている投資信託のため、投資信託の評価額を計算する際は1度日本円に換算して今の評価額を求める必要があります。

日本円に換算する際のレートは、原則として相続が発生した日の最終の電信買相場(TTB)、またはこれに準ずる相場を用います。(相続発生日が祝日などにより為替レートが公表されていない場合は、相続発生日前のもっとも近いレートを適用します。)

計算式で表すと以下の通りです。

1口当たりの基準価格(基本は1円) ×口数 ×相続が発生した日の最終為替レート+ 未収分配金 -未収分配金に対して源泉徴収されるべき所得税の額 -信託財産留保額および解約手数料

上場投資信託(ETF・REIT)の評価方法

上場投資信託とは、金融商品取引所で取引できる投資信託です。

金融商品取引所に上場する投資信託であるため、値動きはリアルタイムで変動し、取引所が開いている時間帯はいつでも取引できます。

上場株式にとても近い投資信託です。

上場投資信託の相続税の評価方法は、相続発生日付近の終値でもっとも低い終値を計算します。

亡くなった日の終値だけでなく、直近3ヶ月間の終値平均も用いて相続税評価額を計算できます。

上場投資信託の終値に口数をかけた金額が、上場投資信託の相続税評価額です。

相続をするときに注意するポイント

相続をするときに注意するポイント

一連の流れを確認する前に、投資信託を相続する際に注意すべき3つのポイントを解説します。

このポイントを理解することで、遺産の分配方法を決めやすくなります。

投資信託の価額変動に注意

投資信託の価値のことを「基準価額」と呼びますが、この基準価額は日々変動します。

ある日の時点で100万円だった投資信託が、1週間後には90万円や110万円になっていることもあります。

投資信託の価値は日々変動するという特徴があり、この点は現金を相続した場合と異なるため注意が必要です。

遺産をどのように分割するかを話し合う「遺産分割協議」では、投資信託の価値である基準価額をどの時点にするかを明確にする必要があります。

その後書類を作成し、決めた内容を明記しておくことで、あとで投資信託の基準価額が変わった場合でもトラブルを避けられます。

相続税以外に生じる3つの費用に注意

遺産を相続する際には相続税が発生しますが、相続税以外にも3つの費用が生じる可能性があります。

相続の分配を考える際は、この3つの費用がかかる可能性も考慮に入れておきましょう。

所得税及び住民税

相続する投資信託に利益が発生していた場合、利益の部分は所得税(復興特別所得税)及び住民税(地方税)の課税対象となります。

課税額は利益の20.315%で、税率の内訳は所得税15.315%と住民税5%です。

例えば、相続する投資信託の基準価額が100万円、故人の購入金額が50万円だったとします。

この場合、利益は50万円となるため、その20.315%である約10万円を所得税および住民税として支払う必要があります。

参照元: 投資信託の税金 – 投資信託協会 (toushin.or.jp)

贈与税

相続の方法によっては、贈与税も追加の費用になり得ます。

例えば、投資信託を解約して得た現金を複数の相続人で分配した場合、贈与税が発生する可能性があります。

これは、投資信託の相続人が、他の相続人にお金を贈与したとみなされるためです。

仮に、贈与額が1人当たり110万円以下であれば基礎控除内に収まるため贈与税はかかりません。

しかし、110万円を超える場合は贈与税の対象になります。

この贈与税は、遺産の分配方法次第では避けられる追加費用ですので、覚えておくと良いでしょう。

違約金

相続する投資信託の種類によっては、違約金が発生する場合もあります。

これは、購入してから一定期間の間、解約できない期間を設けているケースなどがあるためです。

この期間のことをクローズド期間と呼び、相続する投資信託がクローズド期間中であった場合、違約金が発生する可能性があります。

ただし、投資信託の受益者(投資家)本人が死亡した場合などの特殊なケースでは、違約金がかからない場合もあるので注意が必要です。

違約金の支払いを避けるため、相続する投資信託の内容をよく確認しておきましょう。

記事まとめ

記事まとめ

この記事では、投資信託の相続手続きの流れについて徹底解説。

相続時に注意したいポイントについてもご紹介しました。

投資信託の相続については、金融商品としての性質上、他の財産とは異なる注意点が存在します。

投資信託に関する相続手続きをスムーズに終えるためには、ぜひ弁護士や税理士などの専門家にご相談ください。

監修者プロフィール
小林裕
小林裕
一般社団法人証券相続普及協会 代表理事
大学卒業後、東証一部上場の証券会社に入社。
個人向けの資産運用コンサルティングを中心に活動し、新人賞、社長優秀賞などを数多く受賞。
退職後、資産運用だけでは本当の解決ができないという思いから、2020年に一般社団法人証券相続普及協会を設立、代表理事に就任。
終活カウンセラー1級や上級相続診断士の資格も取得し、現在はお客様の大切な資産を「ふやす、まもる、つなぐ」をモットーに活動している。
【代表著書】
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