投資信託を行うに当たって必ず知っておきたい「基準価額」や投資信託の単位について解説
近年は子供の教育費用やリタイアメント費用が貯蓄だけでは賄えなくなってきました。
そこで効率的に且つ低リスクで資産運用が可能な方法として資産運用が注目を集めています。
しかし、投資初心者の人が投資信託を始めようとするとその専門用語の多さに圧倒されている人も多いと思います。
本記事では投資信託を行うに当たって必ず知っておきたい「基準価額(きじゅんかがく)」や投資信託の単位について解説します。
更にその基準価額が投資信託に与える影響や、基準価額以外に確認すべき購入銘柄の決め方についても詳しく解説しているので、これから投資信託を始めようとしている人の力になれましたら幸いです。
おさらい:投資信託の仕組み
投資信託の基準価額の解説に入る前に、そもそも投資信託がどのような仕組みなのか理解をしましょう。
別名ファンドとも呼ばれている投資信託とは、複数の投資家のお金を一つの投資資金として集め、ファンド運用の専門家が株式や債券などに投信・運用される仕組みです。
ここで得られた利益が分配金として、投資家に還元されたり、再投資に回されることもあります。
投資信託は100円などの低価格でも始めやすく、運用はプロに任せられることから投資初心者の方におすすめの金融商品になっています。
基準価額とは投資信託の価格のこと
投資信託の仕組みについて正しく理解できていましたでしょうか。
本題の基準価額についてですが、よくある間違いで基準価格と覚えている人も多いですが正式には「基準価額(きじゅんかがく)」と言います。
基準価額とは簡潔にいうと投資信託の価格のことを指し、投資信託を行う上では欠かせない専門用語になります。
この基準価額は運用会社のホームページや新聞などで確認できるようになっています。
投資信託の単位は「口」が基準
投資信託の価格である基準価額は、どのように計算されるのでしょうか。
株式の場合は1株当たりの価格が計算されますが、投資信託に基準価額は「1口」当たりの価格を表示します。
基本的には1口=1円で運用を始める投資信託が多く、この場合基準価額は1万口当たりの価額が公表されます。
投資信託の資産の中で、投資家に帰属する額を純資産総額と言います。
1万口当たりの基準価額は、この純資産総額を総口数で割った後に1万口かけることで算出できます
「基準価額 = 純資資産総額 / 総口数 × 1万口」
基準価額は1日1回のみ更新される
投資信託の基準価額は、リアルタイムで変動する株式とは異なり、1日1回更新される仕組みになっています。
これは、投資信託が保有する資産の時価評価をもとに計算され、取引の申込を締め切ったタイミングに計算が始められ、情報更新されます。
この更新は、投資家がファンドの現在の価値を把握し、適切な投資判断を行うために重要です。
「ブラインド方式」で取引申込時の基準価額は不明
投資信託は市場の変動や取引の公平性を保つために、「ブラインド方式」を取り入れています。
このブラインド方式とは、投資信託の取引申込を行う時点では基準価額がわからなくなっている方式のことを指します。
これは投資信託の基準価額が市場が閉まった後、その日に取引された資産の終値を基に計算され更新されるためです。
申込みをした日の市場の動きによって、実際の取引が行われる基準価額は変動するのは、投資信託の特徴の一つと言えます。
そのため、投資家は取引を申し込む時点で正確な購入価格や売却価格を知ることができず、ある程度の不確実性を受け入れる必要があります。
基準価額が変動する要因
基準価額の基礎知識を解説してきましたが、次にその投資信託の価格が上下する要因について、主に3つのポイントに分けて解説します。
市場価格・時価評価の変動
基準価額が変動する要因の一つとして、市場の価格変動や時価評価の変動があります。
時価評価とは、株式や債券、不動産などの資産を取引した際の価格ではなく、現在の価格で評価した金額のことを指します。
金融以外の商品と同じように投資信託の保有する株式や債券などの資産は、市場の需要と供給によって価格が決定されます。
そのため株式市場の好調などによりこれら資産の価格が上昇すれば、投資信託の基準価額も上昇します。
逆に市場の不況や株価の下落により資産の価格が下がると、基準価額も下落するといった影響が出ます。
利子収入と配当収入
投資信託が保有する債券からの利子収入や株式からの配当収入も、基準価額に影響を与えます。
債券は定期的に利子が、株式の場合は配当金が、投資信託の収益の一部となります。
このように投資信託には、資産の保有中に継続的に得られる収益であるインカムゲインが入ってくるため、必然的に基準価額の上昇に寄与します。
配当や利子の支払いは定期的であるため、これらの収入は安定した収益源として投資信託の価値を支える要素です。
政策変更や政治的イベント
更には政策変更や政治的イベントも投資信託の基準価額に影響を及ぼします。
例えば中央銀行の金利政策の変更や税制の改革、選挙結果などは、経済環境に直接的な影響を与え、投資信託が保有する資産の価値に影響を及ぼすことがあります。
金利の引き下げは通常、債券市場に好影響を与え株式市場も刺激することがあります。
逆に政治的不安や予期せぬ政策変更は市場に不安をもたらし、資産価値の減少を引き起こす場合も。
投資信託の運用においては、これらの外部要因に注目し、リスク管理と運用戦略の調整が求められます。
投資信託の銘柄の決め方
投資信託の基準価額が低い銘柄は、これからの伸び代があるから良い商品だと思われがちですが、一概に基準価額が低いから良い銘柄とは言い難いのが事実です。
では、何を基準に投資信託の銘柄を選べば良いのでしょうか。
以下では、投資信託の銘柄を決める際に基準価額以外で確認すべきポイントを解説します。
運用方針
運用方針は、ファンドがどのような資産にどのような戦略で投資するかを定めたものです。
この中には株式や債券、不動産など様々な資産クラスへの投資比率、市場やセクターへの集中度、アクティブ運用かインデックス運用かなどが含まれます。
投資家はこの運用方針が自身の投資目標、リスク許容度、投資期間と合致するかを検討する必要があります。
運用実績
運用実績は、ファンドが過去にどれだけのリターンを生み出したかを示します。
短期・長期のリターン、市場の異なる状況下でのパフォーマンス、他の同様のファンドとの比較などが評価対象です。
運用実績は、ファンドの効率的な資産管理能力を判断する大切な指標となります。
リスクレベル
リスクレベルは、その名の通り投資信託がどれだけの価格変動のリスクを持つかを示します。
ボラティリティ(価格変動の度合い)、最大ドローダウン(価格の最大下落率)、市場の変動に対する感応性などが考慮されます。
投資家は、自身のリスク許容度とファンドのリスクレベルが合っているかを評価することが重要です。
手数料と運用報酬などの必要コスト
手数料と運用報酬は、ファンドの運用にかかる必要なコストを指します。
この中には購入時手数料(フロントエンドロード)、年間運用管理費用(信託報酬)、解約時手数料(バックエンドロード)などが含まれます。
これらのコストは、長期的なリターンに影響を及ぼすため、合理的な範囲内であるかを確認することが必要です。
ファンドの規模と歴史
ファンドの規模は運用資産の総額で示され、大きな規模は一定の信頼性や安定性を示唆します。
また、設立からの歴史が長いファンドは、さまざまな市場環境を経験していることが多く、その実績を評価材料とすることができます。
しかし、規模が大きいことが常に良いとは限らず、運用の柔軟性や特定の戦略の適用においては小規模ファンドが有利な場合もあります。
記事まとめ:基準価額が低い=良い訳ではない
基準価額とは投資信託の価格のことを指し、基本的には1万口がいくらかで表示されていることがほとんどです。
投資信託は、1万口分を購入する資金がなくても1口から購入できるので、少額で始めやすい金融商品の一つとして人気を集めています。
取引申込時点では、基準価額がわからないようになっていることで、すでにその投資信託を保有している投資家(受益者)の公平性を保っています。
また、必ずしも基準価額が低い方が良い銘柄は限らないので注意が必要です。
基準価額以外にも、運用方針・実績やリスク、手数料、ファンド規模と歴史なども確認した上で銘柄選定をすることをおすすめします。