投資信託で得た利益の税金はいくら?損益通算による節税方法や確定申告が楽な特別講座もご紹介
投資信託は少額から始めやすく、初心者にも人気な資産運用方法の一つです。
しかし、他のどのビジネスも同じように、利益がでれば税金を支払わなければなりません。
手元に残る利益を最大限に大きくするためにも、資産をただ増やすだけでなく賢く運用する必要があります。
そこで本記事では、投資信託にかかる税金の種類や確定申告を活用した節税方法、確定申告時の注意点などについてわかりやすく解説します。
また、投資初心者の方のため特別口座についても詳しく解説するので、資産運用を効率的に行うための手助けになれれば幸いです。
投資信託で得られる2つの利益
投資信託で得られる利益は大きく分けて2つ、分配金と譲渡益があります。
投資信託にかかる税金について話す前に、基礎知識として投資信託で得られる利益について知っておきましょう。
分配金は2種類ある
分配金とは、投資信託から得られる利益の一部が、投資家に対して定期的に支払われる金額のことです。
分配金の額は、これらの利益の総額に基づいて投資信託の運用会社によって決定され、その後投資家に対して一定の割合で分配されます。
投資商品や市場環境により、分配金の額や頻度は変わる仕組みになっています。
投資信託で得られる利益は大きく分けて2つと言いましたが、実は分配金の中にも普通分配金と特別分配金(元本払戻金)の2種類存在します。
以下、それぞれ異なる仕組みや税制について解説します。
1. 普通分配金とは
投資信託の普通分配金とは、投資信託が運用する資産から得られる利益を基に計算され、投資家に定期的に支払われる金額のことです。
この分配金は、投資信託の運用成果に直接関連しており、市場の状況や運用方針によって額が変動します。
普通分配金を受け取ることで、投資家は定期的な収入を得ることができますが、分配のために信託資産が減少することもあり得るため、長期的な資産成長を目指す場合は注意が必要です。
普通分配金は運用によって利益とみなされ、投資家の純粋な利益のため税金がかかる対象になるます。
2. 特別分配金(元本払戻金)は税金が課せられない?
特別分配金(元本払戻金)は普通分配金とは異なり、投資家から集められた元本の一部を投資家に返還する形で行われる分配のことです。
この払戻は通常の運用益に基づく分配とは異なり、資産の売却やその他の特別な理由によって行われます。
特別分配金の支払いは、投資信託の運用成績が良くない場合や資産の価値が減少した際に行われることが多く、分配を行うことで投資信託の価値を一定に保つ目的があります。
しかし、元本の一部が返還されるため、投資家は長期的な資産成長の機会を失う可能性があることを理解しておく必要があります。
特別分配金(元本払戻金)は、元々の資産が払い戻されているだけで、そこから利益を得たわけではないので、税金を支払う必要はありません。
譲渡益とは
投資信託の譲渡益とは、投資信託の売却時に購入価格よりも高い価格で売却できた場合に生じる利益のことです。
これは株式や不動産と同様、資産価値の上昇によって得られるキャピタルゲイン(資本利得)に相当します。
投資信託を低価格で購入し市場価格が上昇した後に売却することで、この譲渡益を実現することができます。
この利益は税金の対象となりますが、逆に資産価値が下がっている時に売却(解約)した場合は譲渡損となるため、税金を払う必要はありません。
投資信託にかかる税金は20.315%
投資信託で税金が課せられる利益について理解したところで、今度はその利益に課せられる税金について学びましょう。
1つ注意して欲しいのが、投資信託の購入・売却(解約)にかかった費用についてです。
投資信託を売却(解約)した場合、商品によっては信託財産留保額と呼ばれる解約手数料が発生します。
こうした手数料は純利益から差し引く必要があることを念頭に置いて税率を計算しましょう。
公募株式投資信信託の場合
普通分配金、つまり収益分配金の一部は「配当所得」として課税されます。
また、途中での換金による利益や償還時の利益は「上場株式等の譲渡所得等」として別途課税されます。
これらの所得に対しては、同じ20.315%という税率が適用されます。
公募株式投資信信託の税率
以下、公募株式投資信託の税率を表にまとめました。
年 | 税率 |
---|---|
~ 2012年 | 10% |
2013年 | 10.147% |
2014年 ~ | 20.315% |
2013年までは証券税制の軽減税率が適用されていたため、投資信託の税率は10.147%でした。
しかし、軽減税率の制度は2014年以降廃止され、今は20.315%の税金を払わなければなりません。
20.315%の内訳は以下の通りです。
投資信託の利益にかかる税金:20.315%
=(所得税:15%+復興特別所得税:0.315%)+住民税5%
本来の所得税は15%ですが、2037年までは復興財源確保法によって、0.315%が上乗せされています。
以上のことから、投資信託にかかる税金は普通分配金や譲渡益に20.315%を乗じて計算します。
平成21年(2009年)の税制改正による変更
平成21年(2009年)に行われた税制改正では、主に以下の3つの変更点があります。
- 2009年分以降、上場株式の配当金や公募株式投資信託の収益分配金などの配当所得を申告分離課税として確定申告することで、上場株式や公募株式投資信託などの譲渡損失と損益通算することが可能
- 2010年1月からは特定口座(源泉徴収あり)を利用することで、上記の上場株式や公募株式投資信託の譲渡損失と配当金・分配金の損益通算が確定申告なしでも行える
- 公募株式投資信託を換金する際に得られる利益は、換金の方法に関わらず譲渡所得として扱われるようになり、解約や買取による税制上の違いがなくなった
公募公社債投資信託の場合
こちらも分配金と換金時の収益に対して20%の源泉分離課税が適用されますが、復興特別所得税の影響で税率は20.315%になります
特別口座がおすすめされる理由とは
投資信託で得られる分配金に関しては源泉徴収され、その時点で課税関係が完了するため、確定申告は不要です。
しかし、譲渡益や償還益については、確定申告が義務付けられています。
この確定申告は、利益の計算と納税に手間と時間がかかる作業ですが、これを容易にしてくれるのが特定口座(源泉徴収あり)が有効です。
特定口座(源泉徴収あり)を利用する場合、譲渡損益の計算と税金の徴収が自動的に行われ、確定申告が不要になるといったメリットがあります。
この特別口座では年間の譲渡損益を通算し、必要な税金を源泉徴収してくれます。
さらに、利益が出て税金が徴収された後に損失が発生した場合、徴収された税金から還付を受けることが可能です。
このように特定口座(源泉徴収あり)は、投資信託の税務処理を簡素化し、投資家の負担を軽減する便利な仕組みです。
講座の種類による違い
特別口座には、源泉徴収ありと源泉徴収なしの2種類存在します。
前述の通り、源泉徴収ありの特別口座を利用すると税金が自動的に計算されるので、投資家が個別に税金を計算し、申告する必要がないという大きなメリットがあります。
これは、特に投資経験が少ない方や、税務申告に不慣れな方におすすめされます。
しかし、源泉徴収ありの口座では損益が自動的に通算されるため、税金の最適化を自分で行いたい場合は不向きです。
あなたの投資スタイルや税務知識、時間の都合を考慮して、どちらの特別口座が最適か選択するようにしましょう。
確定申告が必要ない場合もある
投資信託の分配金や譲渡益は、他の所得とは別で税金の計算をする必要があります。
ただし、その中にもある一定の条件を満たしていれば、確定申告が不要になるケースもあるので、その条件をご紹介します。
年間の投資信託からの利益が20万円以下の場合
投資信託からの年間利益が20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。
これは、個人の給与以外の所得が年間20万円以下の場合に適用されるルールになっています。
ただし、他の所得がある場合や総所得が一定額を超える場合は、確定申告が必要になるので気をつけましょう。
また、年収が2,000万円を超える場合や医療費控除などの特別な控除を受ける際は、投資信託の利益に関わらず確定申告が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合
投資信託を特定口座(源泉徴収あり)で運用している場合、得られた利益に対する税金が自動的に計算され、源泉徴収されます。
そのため、投資家は別途確定申告をする必要がなく、税務処理が簡素化されます。
損失が発生し課税対象利益がない場合
投資信託の運用で損失が発生し、その年の課税対象となる利益がゼロまたはマイナスの場合、確定申告を行う必要はありません。
ただし、損失を翌年以降に繰り越すためには確定申告が必要になるので注意が必要です。
損益通算すれば税金を節約できる?
確定申告を提出する必要のない条件について解説してきましたが、確定申告をし損益通算をすることで税金を節約することができます。
というのも、損益通算を利用することで、投資信託で得た利益の税金を節約することが可能だからです。
損益通算とは、投資で生じた損失を同年の他の投資からの利益と相殺することを指します。
例えば、ある投資信託で損失が発生し他の株式投資で利益が出た場合、その損失を利益から差し引くことで課税対象の利益を減少させることができます。
これにより最終的に支払う税金の総額が減るため、税金の節約につながります。
ただし、この損益通算を行うためには確定申告が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)を使用している場合でも、損益通算を行いたい場合は確定申告を行う必要があります。
損益通算は賢く税金を節約し、効率的な資産運用を行うための重要な手段ですが、適切な方法で行う必要があるため、必要に応じて専門家を頼ることもおすすめします。
記事まとめ
投資信託で得た普通分配金と譲渡益は課税対象に入り、20.315%の税金を払う必要があります。
投資信託の利益が20万円を超える場合は、全員確定申告をしなければなりません。
ただし、特定口座(源泉徴収あり)の口座を活用すれば、自動で源泉徴収してくれるため初心者にはおすすめです。
また、確定申告を行う必要がない場合もありますが、損益通算を活用して税金対策を行いたい方は確定申告が必須になるので注意しましょう。